登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
自動運転の水準は、一般的に「レベル1」から「レベル5」に分けられている。「条件付運転自動化」と呼ばれる「レベル3」が示す自動運転の水準に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア運転の主体はシステムであり、人間が運転する必要はないが、システムによる自動運転の継続が難しい場合は、人間が運転しなければならない。
- イ運転の主体はシステムであり、人間が運転する必要がないので、ハンドルやペダルなどの運転装置は不要だが、自動運転できる地域は限られる。
- ウ運転の主体は人間であり、高速道路で車線を維持しながら前の自動車に付いて走る機能のように、ハンドルと加減速の操作をシステムが支援する。
- エ運転の主体は人間であり、自動ブレーキや急発進防止システムのように、前方又は後方の状況によって、システムが運転の一部を支援する。
第1幕:深夜のコンビニで
深夜のコンビニ、イートインコーナー。美咲がレポート課題の合間の休憩中で、拓也が差し入れの肉まんを持って現れる。
拓也
はい、これ。小腹すいてるかなと思って
美咲
ありがと。……ねえ、ちょっと聞きたいんだけど、この前ニュースで『レベル3の自動運転車が公道走行』とかやってたじゃない。あれ、もう運転手いらないってことなのよね?
拓也
あ、それ、ちょうど今日の問題にドンピシャなやつだ
美咲
え、ほんとに?
拓也
うん。自動運転にはレベル1から5まで段階があって、今日の問題はまさに『レベル3って何ができるの?』って話
美咲
じゃあ、暇だし考えてみるわ
第2幕:レベル3なら、もう人間いらないでしょ
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『人間が運転する必要がないので、運転装置は不要』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、レベル3くらいまで来たら、もう十分自動化されてるイメージじゃない。3って数字、5段階のうちの真ん中より上でしょ
拓也
気持ちはわかるけど、実はイは"レベル4"に近い説明で、レベル3とはまだ一段差があるんだ
美咲
え、そうなの?
拓也
うん。レベル3は、正式には『条件付運転自動化』って呼ばれてる。この"条件付き"がすごく重要なキーワードなんだ
第3幕:新人バイトの独り立ち段階
拓也
たとえ話するね。このコンビニで、新人バイトが独り立ちしていく過程をイメージして
美咲
新人バイト?
拓也
うん。レベル1は、先輩が横についてて、レジ打ちのボタンとか袋詰めとか、一部の作業だけをちょっと手伝ってもらう段階。主体はあくまで新人自身
美咲
あー、まだ見習いって感じね
拓也
レベル2は、レジ打ちも品出しも、複数の作業をまとめて手伝ってもらえるようになった段階。それでも、判断の主体はまだ新人本人
美咲
うん、うん
拓也
レベル3がポイントで、基本的には新人に店番を"全部"任せられるようになる。だけど、クレーム対応とか、レジの現金が合わないとか、想定外のトラブルが起きたときだけは、店長を呼んで代わってもらう
美咲
あ……普段は任せてるけど、いざという時だけ、店長に"バトンタッチ"するってこと?
拓也
まさにそれ。レベル3は、"主体はシステム(新人)"だけど、"難しい場面では人間(店長)に運転を戻す"っていう水準。今日の問題文のアが、まさにこの説明
美咲
じゃあ、私が選んだイは……?
拓也
イは、"どんな状況でも店長を呼ばなくていい、新人だけで完全に店を回せる"段階。これはレベル4、地域や条件が完全に外れたレベル5に近い話。"いざという時に人間へ交代する"という条件が付くかどうかが、レベル3と4の決定的な違いなんだ
美咲
……あー! そういうことか! "人間が完全に不要"なんじゃなくて、"普段は不要だけど、いざという時のために待機してる"のがレベル3なのね
拓也
完璧。だから、レベル3の車って、運転席には人が座ってないといけないし、いつでもハンドルを握れる状態でいる必要があるんだ
美咲
なるほどね……。ニュースだけ見てると、"もう運転手いらない"みたいに聞こえるけど、実際はまだ"補欠で待機してる"状態なのね
第4幕:拓也、ズレた差し入れを渡してくる
拓也
あ、そうだ。せっかくだから、これも
拓也がコンビニの棚から取ってきた紙パックのいちごオレを、得意げに差し出す。
拓也
高校のとき、これ好きだったよね? 部活終わりによく買ってたの覚えてて
美咲
……え、それ、私じゃなくて、隣のクラスの子じゃない?
拓也
え
美咲
私、いちごオレ、そんな得意じゃないのよ。甘すぎて。よく買ってたのは、たしかコーヒー牛乳のほうだったと思うけど
拓也
……ご、ごめん。誰かと記憶が混ざったかも
美咲
気持ちは嬉しいけど、勝手に『これ好きでしょ』って決めつけて持ってくるの、たまにズレてるのよね。もう一回ちゃんと私の好み、確認しなさいよ
拓也
たしかに……。今度からちゃんと聞くようにする
美咲
ん、それでいいのよ。……まあ、気持ちだけは受け取っとくけど
拓也
じゃあ、コーヒー牛乳、買い直してくる
美咲
べ、別に今すぐじゃなくてもいいのに……。あ、やだ、そんな急がなくても
拓也がすでに冷蔵棚に向かって歩き出している背中を見ながら、美咲が小さくため息をつく。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
コーヒー牛乳を手に戻ってきた拓也が、席に座り直す。
拓也
じゃあ、残りのウとエも片付けよう
美咲
ウは『車線を維持しながら前の車に付いて走る、ハンドルと加減速をシステムが支援』……これは?
拓也
これはレベル2に近い説明。ハンドル操作と加減速、2つの操作をまとめてシステムが支援してくれるけど、あくまで主体は人間。さっきのバイトの例で言うと、複数の作業をまとめて手伝ってもらえる段階だね
美咲
じゃあエの『自動ブレーキや急発進防止システム』は?
拓也
これはレベル1。前方か後方、どちらか一つの状況に応じて、単一の機能だけがサポートしてくれる段階。バイトで言うなら、レジ打ちだけちょっと手伝ってもらう、みたいなイメージ
美咲
なるほど……。レベル1が"一部だけ手伝い"、レベル2が"複数まとめて手伝い"、レベル3が"基本は任せるけどいざという時は交代"、そしてイは実質レベル4以上ってことね
拓也
そのとおり。数字が大きくなるほど、人間が関わる範囲がどんどん小さくなっていく、って流れで覚えておくと整理しやすいよ
美咲
今日、なんか自動運転より先に、新人バイトの育て方に詳しくなった気がするわ
問題文(再掲)
自動運転の水準は、一般的に「レベル1」から「レベル5」に分けられている。「条件付運転自動化」と呼ばれる「レベル3」が示す自動運転の水準に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア運転の主体はシステムであり、人間が運転する必要はないが、システムによる自動運転の継続が難しい場合は、人間が運転しなければならない。
- イ運転の主体はシステムであり、人間が運転する必要がないので、ハンドルやペダルなどの運転装置は不要だが、自動運転できる地域は限られる。
- ウ運転の主体は人間であり、高速道路で車線を維持しながら前の自動車に付いて走る機能のように、ハンドルと加減速の操作をシステムが支援する。
- エ運転の主体は人間であり、自動ブレーキや急発進防止システムのように、前方又は後方の状況によって、システムが運転の一部を支援する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 対応する水準 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | 主体はシステム。継続困難な場合のみ人間が運転 | レベル3(条件付運転自動化) | 正解 |
| イ | 主体はシステム。運転装置も不要。地域は限定 | レベル4相当(高度運転自動化) | 不正解 |
| ウ | 主体は人間。ハンドルと加減速をシステムが支援 | レベル2相当(部分運転自動化) | 不正解 |
| エ | 主体は人間。前後どちらかを単一機能で支援 | レベル1相当(運転支援) | 不正解 |
答えア 運転の主体はシステムであり、人間が運転する必要はないが、システムによる自動運転の継続が難しい場合は、人間が運転しなければならない。
覚え方のコツ
レベル3は「基本お任せ、いざという時は交代」。
- レベル3の主役はシステムだが、"難しい場面だけ人間に戻す"という条件付き
- 数字が上がるほど、人間が関わる範囲が狭くなっていく
- 「人間が完全に不要」=レベル4以上。レベル3はまだ運転席に人が必要
拓也
レベル3を"ほぼ完全自動"だと勘違いする人、実はすごく多いんだ。ニュースの見出しだけ見ると、そう錯覚しやすいんだよね。"条件付き"という言葉が付いてるかどうかを、必ずチェックする癖をつけるといいよ
美咲
見出しだけ見て、中身を確認しないと危ないってことね
おまけ:レベル0〜5、ざっくり早見表
| レベル | 主体 | イメージ |
|---|---|---|
| レベル0 | 人間 | 自動化なし。完全に人間が運転 |
| レベル1 | 人間 | 単一機能の支援(自動ブレーキなど) |
| レベル2 | 人間 | 複数機能の支援(車線維持+追従など) |
| レベル3 | システム | 条件付き自動化。緊急時は人間に交代 |
| レベル4 | システム | 特定条件・地域内で完全自動化 |
| レベル5 | システム | あらゆる場所・条件で完全自動化 |
拓也
レベル3を境に、主体が"人間"から"システム"に入れ替わるのが最大のポイント。ここを押さえておけば、選択肢のひっかけにも惑わされにくくなるよ
エピローグ
イートインコーナーの窓の外、深夜の駐車場を車が一台、静かに通り過ぎていく。
美咲
ねえ、さっきの話でいうと、あんたって私に対して何レベルなわけ?
拓也
え、急にどういう話?
美咲
いちごオレとコーヒー牛乳、間違えるくらいだから、まだレベル1くらいじゃない? 一部の作業しか手伝えてない、みたいな
拓也
うっ……それは、否定できない
美咲
まあ、今日のでレベル2くらいには進級したと思っておいてあげる。次はちゃんと、いざという時に任せられるレベル3くらいまで、上げてきなさいよね
拓也
レベル3って、"難しい時は人間と交代"する段階だけど、それでいいの?
美咲
いいのよ。"普段は任せて、肝心なところだけ頼れる"の、案外悪くないと思うから
拓也心の声
……それ、なんか、ものすごく嬉しい言われ方なんだけど
美咲
なによ、黙り込んで
拓也
いや、なんでもない。……次はちゃんと、コーヒー牛乳で合ってたか確認するとこから始めるよ
美咲
ん、それでいいのよ
今日のポイントおさらい
- 自動運転レベル3=「条件付運転自動化」。主体はシステムだが、継続困難な場合は人間に運転を戻す
- レベル1は単一機能の支援、レベル2は複数機能の支援。どちらも主体は人間
- レベル4・5は人間が完全に不要になる段階で、レベル3とは明確な差がある
- 「人間が運転する必要がない」という文言だけで判断せず、"条件付きかどうか"を必ず確認する
- 数字が大きくなるほど、運転における人間の関与範囲が狭くなっていく
次回もお楽しみに。
この記事はITパスポート試験 令和7年度 問33(ストラテジ系/産業と業種)の解説です。