登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
インターネットを介して個人や企業が保有する住宅などの遊休資産の貸出しを仲介するサービスや仕組みを表す用語として、最も適切なものはどれか。
- アシェアードサービス
- イシェアウェア
- ウシェアリングエコノミー
- エワークシェアリング
第1幕:ストラテジ系、続いてるわね
窓際の席、カフェらしい落ち着いたBGMが流れている。美咲がノートを開くなり、小さくため息をつく。
美咲
はあ……最近、ストラテジ系ばっかりね。正直、テクノロジ系のほうが好きなんだけど
拓也
あー、たしかに、この数週間はビジネス用語多めだったね
美咲
なんていうか、こっちの分野、覚えても実感湧かないのよね。パソコンの仕組みとかは『へえ』ってなるけど、経済用語は右から左って感じで
拓也
まあ、気持ちはわかるけど……今日の問題も、その手の用語だよ
美咲
うっ。じゃあ早めに片付けましょ
第2幕:それ、社内版のあれでしょ?
美咲
じゃあ答えるわね。これアでしょ。『シェアードサービス』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"シェア"って単語が入ってるし、なんとなく聞いたことある響きだったから
拓也
実はそれ、似た名前だけど、まったく別のジャンルの言葉なんだ
美咲
え、そうなの?
拓也
うん。シェアードサービスは、大きな企業グループの中で、経理とか人事とか総務みたいな間接部門の仕事を、一つの部署にまとめて、グループ各社に提供する仕組み。企業グループ内での効率化の話なんだ
美咲
あ……"個人が持ってるもの"じゃなくて、"会社の中の仕組み"の話だったのね
拓也
そう。今回の問題文、よく見て。"個人や企業が保有する住宅などの遊休資産"って書いてあるでしょ。シェアードサービスは会社の中の話だから、これとは全然違うんだ
第3幕:使ってない部屋や車を、ネット経由で
拓也
正解はウ シェアリングエコノミー。たとえば、旅行に行ってる間、自分の家を誰かに貸し出せるサービス、知ってる?
美咲
あ、民泊みたいなやつ?
拓也
そうそう。あと、車を持ってるけど普段はあまり乗らない人が、使わない時間だけ他の人に貸すカーシェアもそう
美咲
……なるほど。"自分が使ってないもの"を、ネットで探した知らない人に貸すってこと?
拓也
まさにそれ。今まで"貸し借りの対象になってなかったもの"、たとえば個人の家とか車とか、時にはスキルや空き時間まで、インターネットのマッチングを通じて、個人同士で貸し借りできるようにした経済の仕組み、これがシェアリングエコノミー
美咲
あー! そういうことか! "会社の中で業務を共有する"んじゃなくて、"個人が持ってる遊んでる資産を、他の個人と共有する"のがシェアリングエコノミーだったのね
拓也
完璧。同じ"シェア"でも、"誰と誰の間で、何を共有してるか"が全然違うんだ
美咲
なんか、フリマアプリとかもこの仲間な気がしてきた
拓也
そのとおり。使わなくなった服とか本を、必要としてる人に譲るのも、広い意味ではシェアリングエコノミーの一種って言われることがあるよ
第4幕:拓也、場違いな豆知識を挟む
美咲
へえ、じゃあ最近よく聞くサブスクとかも、似たような話なのかしら
拓也
あ、それはちょっと違って、サブスクは定額で使い放題のサービスのことだから――あ、そういえば、シェアリングエコノミーの語源って、実は経済学者のレイチェル・ボッツマンが提唱した『コラボ消費』って概念が――
美咲
拓也、ちょっと
拓也
あ、あと、日本だと2016年頃から内閣官房が『シェアリングエコノミー検討会議』ってのを開いてて――
美咲
拓也!
拓也
はい
美咲
今、サブスクの話してたのに、急にどうでもいい豆知識に脱線してるでしょ
拓也
あ……
美咲
あんた、たまに今の話と関係ない小ネタ、変なタイミングで挟んでくるわよね。今それ、別に聞きたいことじゃないから
拓也
すみません……。話が繋がってる気がして、つい
美咲
繋がってても、今この瞬間に言うことじゃないの。空気読みなさいよね
拓也
以後、気をつけます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
拓也
気を取り直して、残りのイとエね
美咲
イは『シェアウェア』……これも"シェア"がついてるけど
拓也
シェアウェアは、"試用期間中は無料で使えて、気に入ったら料金を払って継続利用する"ソフトウェアの配布形式のこと。これはソフトのライセンス形態の話で、遊休資産の貸出しとは全然関係ない
美咲
じゃあエの『ワークシェアリング』は?
拓也
ワークシェアリングは、一つの仕事を複数人で分担して、労働時間を短縮したり雇用を維持したりする働き方のこと。これも"モノを共有する"んじゃなくて、"仕事を分担する"話だから、今回とは違う
美咲
なるほど……。全部"シェア"とか"共有"っぽい響きだけど、シェアードサービスは"会社内の業務"、シェアウェアは"ソフトのライセンス"、ワークシェアリングは"仕事の分担"。"何を共有してるか"が全部バラバラだったのね
拓也
そのとおり。"シェア"の一言だけで判断しないで、"誰が""何を""どう共有してるか"まで見ないと、簡単にひっかかっちゃう問題だね
美咲
今日でよくわかったわ。ストラテジ系、こういう似た単語のひっかけが多いから、余計に苦手意識あるのよね……
問題文(再掲)
インターネットを介して個人や企業が保有する住宅などの遊休資産の貸出しを仲介するサービスや仕組みを表す用語として、最も適切なものはどれか。
- アシェアードサービス
- イシェアウェア
- ウシェアリングエコノミー
- エワークシェアリング
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 用語 | 共有する対象 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | シェアードサービス | 企業グループ内の間接部門業務 | 不正解 |
| イ | シェアウェア | ソフトウェアの配布・ライセンス形態 | 不正解 |
| ウ | シェアリングエコノミー | 個人・企業が持つ遊休資産(住宅・車など) | 正解 |
| エ | ワークシェアリング | 仕事・労働時間の分担 | 不正解 |
答えウ シェアリングエコノミー
覚え方のコツ
"シェア"は同じでも、共有するものが全部違う。
- シェアリングエコノミー=個人の遊休資産(住宅・車など)をネットで貸し借りする経済の仕組み
- シェアードサービスは企業内の業務集約、シェアウェアはソフトのライセンス形態、ワークシェアリングは仕事の分担
- 「誰が」「何を」共有しているかを一つずつ確認すれば、ひっかけに惑わされない
拓也
カタカナ語が並んでるときは、"シェア"みたいな共通の単語に引っ張られすぎないことが大事。それぞれの言葉が"何の話をしてるか"、主語を意識するといいよ
美咲
主語を見失わなければいいのね。覚えとくわ
おまけ:身近なシェアリングエコノミーの例
拓也
民泊やカーシェアのほかにも、空きスペースを時間貸しするサービスとか、個人のスキルを売り買いするクラウドソーシングなんかも、広い意味でシェアリングエコノミーに含まれることがあるよ
美咲
へえ、意外と身近なところにいっぱいあるのね
拓也
そう。"持ってるけど使ってないもの"を、必要な人に届けるっていう発想自体は、これからもっと広がっていくと思う
エピローグ
コーヒーのお代わりを頼みに、美咲が一瞬席を立つ。戻ってきたところで、ふと思いついたように言う。
美咲
ねえ、こう考えると、私の空いてる時間も、シェアリングエコノミー的なものよね
拓也
え、それどういう意味?
美咲
暇な時間、あんたに貸し出してあげてる、みたいな。遊休資産ってやつ
拓也
……それ、俺以外にも貸し出す予定あるの?
美咲
……な、なによ急に。……別に、今のところは、あんた専用ってだけ
拓也心の声
……専用、か。それ、なんか、すごくいい響きだな
美咲
なによ、黙り込んで
拓也
いや、なんでもない。……ありがたく使わせてもらいます
美咲
ん、それでいいのよ。……で、次のストラテジ系、いつやる?
拓也
あれ、さっきまで苦手だって言ってなかった?
美咲
べ、別に、克服してみせるって決めただけ。舐められたままじゃ終わらせないから
今日のポイントおさらい
- シェアリングエコノミー=個人や企業の遊休資産を、インターネットで貸し借りする経済の仕組み(民泊・カーシェアなど)
- シェアードサービスは企業グループ内の業務集約、シェアウェアはソフトのライセンス形態を指す
- ワークシェアリングは「モノの共有」ではなく「仕事・労働時間の分担」を意味する
- 似た"シェア"系の言葉が並んだら、「誰が」「何を」共有しているかで見分ける
- シェアリングエコノミーは、空きスペースやスキルの共有など、身近な場面にも広がっている
次回もお楽しみに。
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問22(ストラテジ系/システム戦略)の解説です。