登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
実用新案に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア今までにない製造方法は、実用新案の対象となる。
- イ自然法則を利用した技術的思想の創作で高度なものだが、実用新案の対象となる。
- ウ新規性の審査に合格したものだけが実用新案として登録される。
- エ複数の物品を組み合わせて考案した新たな製品は、実用新案の対象となる。
第1幕:結果待ちの、そわそわした数日
3月末、試験の結果発表を待つ数日間。落ち着かない美咲が、気晴らしにと拓也を誘って母校の高校を訪れていた。渡り廊下の掲示板に、文化部の展示が名残惜しげにまだ貼られている。
美咲
これ、定規とペンケースをくっつけただけの発明品? 後輩、なに作ってるのよ
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
母校に来てまで繋げるの、もう病気ね
拓也
今回は本当に、その発明品がそのままヒントなんだって
第2幕:特許の定義でしょ、これ
掲示板の前のベンチに座り、美咲がスマホでノートアプリを開く。
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『自然法則を利用した技術的思想の創作で高度なもの』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、なんか一番"それっぽい"難しい言い回しだったから
拓也
発想はわかるんだけど、実はその文章、"高度なもの"っていう部分が、特許の定義そのものなんだ。今日聞かれてる実用新案とは、微妙に条件が違うんだよ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。実用新案の"考案"は、特許の"発明"と違って、"高度である"ことまでは求められないんだ
第3幕:組み合わせただけでも、対象になる
拓也は、掲示板の発明品をもう一度指さした。
拓也
この後輩の発明品、定規とペンケース、それぞれは別に新しいものじゃないよね
美咲
うん、どっちも普通にあるものよね
拓也
そのとおり。でも、それを組み合わせて新しい形にしたものは、実用新案の対象になる。一から新しいものを発明しなくても、既存の物品の組合せだけで十分なんだ
美咲
あ……! 特許みたいに"すごい発明"じゃなくても、組み合わせるだけでいいってことね
拓也
そのとおり。正解はエ。複数の物品を組み合わせて考案した新たな製品は、実用新案の対象となる。この発明品も、立派な実用新案の候補になるってわけだ
美咲
なるほどね……。後輩、意外とやるじゃない
第4幕:……幼なじみなだけです
そこへ、当時の担任だった教師が通りかかった。
恩師「あら、二人とも。今日はどうしたの? ……あら、やっぱり付き合ってるの?」
拓也
いや、幼なじみなだけです
食い気味の即答だった。
美咲
……
拓也
あ
美咲
なによ、そんな即答しなくてもいいでしょ
拓也
いや、その、急に聞かれて動揺しただけで……
美咲
動揺した結果がそれなの? もうちょっと言い方あるでしょ
拓也
面目ない……。次はもう少し考えてから喋ります
恩師は「あらあら」と笑いながら、二人を残して去っていった。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気まずさを振り払うように、拓也がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとウも教えて
拓也
アの『製造方法が実用新案の対象』は誤り。実用新案の対象は、あくまで物品の形状・構造・組合せに関するもの。"作り方"そのものは対象に含まれないんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『新規性の審査に合格したものだけが登録される』も誤り。実用新案は、書類の形式が整っているかを確認する程度の審査で登録される、いわば"無審査に近い"制度なんだ。特許のような詳しい審査とは違う
美咲
実用新案は高度じゃなくてもよくて、組合せでもよくて、審査も緩め。特許よりハードルが低い分、身近な工夫でも対象になるのね
拓也
完璧な整理。この後輩の発明品みたいな、ちょっとしたアイデアでも権利になりうるって考えると、面白いよね
問題文(再掲)
実用新案に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア今までにない製造方法は、実用新案の対象となる。
- イ自然法則を利用した技術的思想の創作で高度なものだが、実用新案の対象となる。
- ウ新規性の審査に合格したものだけが実用新案として登録される。
- エ複数の物品を組み合わせて考案した新たな製品は、実用新案の対象となる。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 製造方法が対象(実際は物品の形状・構造・組合せが対象) | 不正解 |
| イ | 高度な技術的思想の創作(これは特許の定義) | 不正解 |
| ウ | 新規性の審査に合格したものだけ登録される(実際は無審査に近い) | 不正解 |
| エ | 複数の物品を組み合わせて考案した新たな製品 | 正解 |
答えエ 複数の物品を組み合わせて考案した新たな製品は、実用新案の対象となる
覚え方のコツ
一から発明しなくていい。組み合わせるだけでも、実用新案。
- 実用新案の対象=物品の形状・構造・組合せに関する考案(製造方法は対象外)
- 特許の「発明」と違い、実用新案の「考案」は"高度である"ことまでは求められない
- 実用新案は、実体審査を伴わない、いわば無審査に近い登録制度
エピローグ
夕暮れの校門を出ながら、美咲がぽつりと呟いた。
美咲
……結果、まだかな
拓也
あと数日だろ。気持ち、わかるけど
美咲
そわそわして、勉強にも手がつかないのよね
拓也
今更ジタバタしても変わらないんだから、少しは休んだほうがいいって
美咲
わかってるけど、無理なものは無理なの
拓也
……まあ、それだけ頑張ってきたってことだろ
美咲
あんたも、そわそわしてるくせに
拓也
え、そう?
美咲
さっきの即答っぷり、それだけ余裕なかった証拠でしょ
拓也
……否定できない
拓也心の声
……美咲が受かるの、俺が受かる以上に願ってる。それがどういう感情なのか、そろそろちゃんと考えないといけない気がするけど
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……結果、一緒に見ような
美咲
うん
夕焼けに染まった通学路を、二人はゆっくりと歩いていった。
今日のポイントおさらい
- 実用新案の対象=物品の形状・構造・組合せに関する考案(製造方法は対象外)
- 実用新案の「考案」は、特許の「発明」と違い"高度である"ことまでは求められない
- 実用新案は、詳細な実体審査を伴わない、無審査に近い登録制度
- 複数の既存物品を組み合わせただけの新しい形も、実用新案の対象になりうる
- 特許・実用新案は、「高度さ」と「審査の厳しさ」で区別すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問35(ストラテジ系/法務)の解説です。