登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
経営戦略に基づいて策定される情報システム戦略の責任者として、最も適切なものはどれか。
- アCIO
- イ基幹システムの利用部門の部門長
- ウシステム開発プロジェクトマネージャ
- エシステム企画担当者
第1幕:合格後、初めてのカフェ
4月、合格発表から数日。美咲は面接対策で読んでいた企業研究の本を、いつものカフェのテーブルに広げていた。
美咲
これ、"CIO"って肩書、面接資料によく出てくるんだけど。社長とは違うの?
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
就活の資料からまで繋げるの、もう職業病を通り越してるわ
拓也
今回は本当に、そのCIOがそのまま答えなんだって
第2幕:現場のことは部門長でしょ
美咲はノートを開き、答えを口にする。
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『基幹システムの利用部門の部門長』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、実際にシステムを使ってる現場の人が、一番わかってるはずでしょ
拓也
発想はわかるんだけど、実は"現場をよくわかってる"ことと、"経営戦略に基づく情報システム戦略の責任者"であることは、また別の話なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。問題文にある"経営戦略に基づいて"って部分がポイント。これは、経営全体を見渡せる立場の人じゃないと務まらない役割なんだよ
第3幕:お店全体を見る人、現場を回す人
拓也は、カフェの店内をぐるっと見渡した。
拓也
このカフェ、新メニューの方向性を決めるのって誰だと思う?
美咲
そりゃ、オーナーとか経営してる人でしょ
拓也
そのとおり。オーナーは、お店全体の経営方針を見て、次にどんなメニューを出すか決める。一方で、実際に接客したり仕込みを回したりするのは、各店舗のスタッフだよね
美咲
あ……! 情報システム戦略も、経営全体を見て方向性を決める人と、現場でシステムを実際に使う人は、役割が違うってことね
拓也
そのとおり。正解はア。CIO(最高情報責任者)は、経営戦略に基づいて情報システム戦略を決める、経営陣クラスの責任者。現場の部門長とは、見ている範囲がそもそも違うんだ
美咲
なるほどね……。CIOって、そんな重い肩書だったのね
第4幕:……つい、熱くなった
技術の話が一段落すると、拓也は面接対策の話に食いついてきた。
拓也
面接、いつだっけ。よし、模擬面接やろう。じゃあまず、志望動機は? 次に強みは? 弱みは? 5年後のキャリアプランは?
美咲
ちょっと、待って
拓也
あと逆質問も用意しといたほうがいいぞ。それと——
美咲
ちょっと、質問攻めやめてよ!
拓也
あ……
美咲
一個ずつ聞いてよ、息もつけないじゃない
拓也
面目ない……。つい、熱くなった
美咲
気持ちはありがたいけど、ペース考えてくれる?
拓也
うん……以後、気をつけます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
ペースを落として、拓也が気を取り直して続ける。
美咲
……気を取り直して。残りのウとエも教えて
拓也
ウの『システム開発プロジェクトマネージャ』は、個別のプロジェクトの進行を管理する役割。経営戦略全体を決める立場じゃないんだ
美咲
エは?
拓也
エの『システム企画担当者』も、CIOが決めた方針に沿って、具体的な企画を作る実務担当。方針そのものを決める立場ではないんだよ
美咲
CIOが経営戦略に基づいて方向性を決めて、企画担当者やプロジェクトマネージャや部門長は、それぞれの立場でそれを実行していく。役割の階層がはっきりしてるのね
拓也
完璧な整理。"誰が方針を決めて、誰がそれを実行するか"、この構図はどの組織でも共通してるよ
問題文(再掲)
経営戦略に基づいて策定される情報システム戦略の責任者として、最も適切なものはどれか。
- アCIO
- イ基幹システムの利用部門の部門長
- ウシステム開発プロジェクトマネージャ
- エシステム企画担当者
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | CIO(経営戦略に基づく情報システム戦略の責任者) | 正解 |
| イ | 基幹システムの利用部門の部門長(現場側) | 不正解 |
| ウ | システム開発プロジェクトマネージャ(個別プロジェクト管理) | 不正解 |
| エ | システム企画担当者(方針に沿った実務担当) | 不正解 |
答えア CIO
覚え方のコツ
方向性を決めるのはオーナー、現場を回すのはスタッフ。CIOも同じ立ち位置。
- 経営戦略に基づく情報システム戦略の責任者=CIO(最高情報責任者)
- 部門長・プロジェクトマネージャ・企画担当者は、いずれも方針を実行する側の役割
- 「誰が方針を決めるか」と「誰がそれを実行するか」を分けて考えると整理しやすい
エピローグ
企業研究の本を閉じ、美咲がぐっと伸びをした。
美咲
はぁ……。就活、思ったより大変ね
拓也
まあ、応援するよ。俺にできることがあれば
美咲
うん、頼りにしてる。……あ、でも
拓也
ん?
美咲
ITパスポートはもう受かったから、次に一緒に勉強することって、そんなにないのかもね
さらりと言われたその一言に、拓也の中で何かが小さく引っかかった。
拓也心の声
……そうか。もう、"教える理由"はなくなったんだな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……でも、また何かあったら、いつでも呼んでよ
美咲
うん、そのときは頼りにする
美咲は屈託なく笑ってそう言ったが、拓也の心の中には、小さな不安の種が静かに残っていた。
今日のポイントおさらい
- CIO(最高情報責任者)=経営戦略に基づく情報システム戦略の責任者
- 基幹システムの利用部門の部門長は、現場側の実行者であり、戦略の責任者ではない
- プロジェクトマネージャ・企画担当者も、CIOの決めた方針を実行する立場
- 「方針を決める人」と「それを実行する人」を分けて考えると整理しやすい
- 経営戦略と現場実務の間には、役割の階層構造が存在する
この記事はITパスポート試験 令和5年度 問7(ストラテジ系/システム戦略)の解説です。