登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
テレワークを推進しているある会社では、サテライトオフィスを構築している。サテライトオフィスで使用するネットワーク機器やPCを対象に、落雷による過電流を防止するための対策を検討した。有効な対策として、最も適切なものはどれか。
- アグリーン IT に対応した機器の設置
- イサージ防護に対応した機器の設置
- ウ無線 LAN ルータの設置
- エ無停電電源装置の設置
第1幕:いつものファミレス、久しぶりに
久しぶりに訪れたファミレス。窓の外は梅雨らしい曇り空で、遠くでかすかに雷鳴が聞こえる。
美咲
あ、雷。最近多いわね、この時期
拓也
梅雨だからね。……あ、そういえば今日の問題、まさに落雷がらみの話だ
美咲
へえ、タイミングいいじゃない
拓也
テレワーク用のサテライトオフィスで、落雷から機器を守る対策の問題
美咲
サテライトオフィスって、いいわよね。自由に働けそうで。私も、就活決まったらそういう働き方できるところがいいなあ
拓也
まあ、美咲もちゃんと就活決まれば、そういう会社で働けるようになるんじゃない?
美咲
……ちゃんと決まれば、って何よ。まだ決まってないみたいな言い方しないでくれる?
拓也
あ、いや、そういう意味じゃなくて……
美咲
まだ何も応募すらしてないだけで、決まらないなんて誰も言ってないでしょ
拓也
ご、ごめん、言い方が悪かった
第2幕:電源トラブルなら、無停電電源装置でしょ?
美咲
……とりあえず、問題やるわよ。じゃあ答えるわね。これエでしょ。『無停電電源装置』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、落雷って電気のトラブルでしょ。電源関連のトラブル対策って言ったら、無停電電源装置が一番それっぽいじゃない
拓也
発想はすごく近いんだけど、実は"守ってる現象"が真逆なんだ
美咲
真逆?
拓也
うん。無停電電源装置(UPS)は、"停電"、つまり電気が"来なくなる"事態への対策。一方、落雷による過電流は、一瞬だけ異常に大きな電気が"流れ込んでくる"現象。"電気がゼロになる"のと"電気が急増する"のは、真逆の話なんだ
美咲
あ……"電源トラブル"って一括りにしてたけど、"来なくなる"のと"来すぎる"のは、全然別の対策が必要ってことね
第3幕:水道管の安全弁と、断水時の予備タンク
拓也
たとえ話するね。水道管をイメージして
美咲
水道管?
拓也
落雷による過電流、通称"サージ"は、水道管に一瞬だけ、ものすごい水圧がかかるようなもの。放っておくと、水道管そのものが破裂しちゃう
美咲
うわ、こわ
拓也
サージ防護は、その一瞬の異常な水圧を、"安全弁"みたいに外に逃がしてあげる装置。急な圧力上昇から、機器を守ってくれるんだ
美咲
じゃあ、無停電電源装置は?
拓也
無停電電源装置は、"断水したときのための、予備の給水タンク"。水道が完全に止まっても、しばらくはタンクに溜めてある水で持ちこたえられる。"電気がゼロになる"事態に備える装置なんだ
美咲
……あー! そういうことか! サージ防護は"急に来すぎる水圧"から守る安全弁、UPSは"水が止まったとき"のための予備タンク。同じ"電気のトラブル対策"でも、対応してる現象が正反対だったのね
拓也
完璧。だから今回みたいに、"落雷による過電流を防ぐ"って聞かれたら、サージ防護が正解になるんだ
美咲
なるほどね……。てっきり"電源系のトラブル=UPS"って覚えてたけど、そこまで単純じゃなかったのね
第4幕:拓也、無自覚に見下してしまう
美咲
……ところで、さっきの話だけど
拓也
さっきの話?
美咲
『ちゃんと就活決まれば』ってやつ。あれ、地味に引っかかってるんだけど
拓也
あ……ごめん。励ますつもりだったんだけど、なんか、上から目線みたいになってた
美咲
そうよ。『美咲もちゃんと決まれば』って、なんか"あんたはまだ決まってない側の人間"みたいに言われてる気がして、素直に喜べなかったわ
拓也
言われてみれば、たしかにそういう言い方だった。悪気はなかったんだけど……
美咲
悪気がなくても、無意識に見下すような言い方になること、あんたたまにあるわよね。応援したいなら、素直に『決まるといいね』でよかったのに
拓也
……そうだね。次から気をつける
美咲
ん、それでいいのよ。……別に、根に持ってるわけじゃないから
第5幕:残りの選択肢を片付ける
拓也
気を取り直して、残りのアとウね
美咲
アは『グリーンIT』……これ、なんとなく環境に優しいイメージだけど
拓也
そのとおり。グリーンITは、省電力化とか、環境負荷を減らすことを目的にしたIT機器や取り組みのこと。落雷対策とはまったく関係ない分野の言葉
美咲
じゃあウの『無線LANルータ』は?
拓也
これは単純で、無線LANルータはネットワークを繋ぐための機器そのもの。落雷対策の"手段"じゃなくて、むしろ落雷から守られる側の機器なんだ
美咲
あ、それ、対策どころか"守られる対象"じゃない
拓也
そのとおり。アは"分野違い"、ウは"守る側と守られる側が逆"。それぞれ違う理由で不正解になるんだ
美咲
今日は、"何を"守るための対策なのかを、ちゃんと切り分けることが大事な回だったのね
問題文(再掲)
テレワークを推進しているある会社では、サテライトオフィスを構築している。サテライトオフィスで使用するネットワーク機器やPCを対象に、落雷による過電流を防止するための対策を検討した。有効な対策として、最も適切なものはどれか。
- アグリーン IT に対応した機器の設置
- イサージ防護に対応した機器の設置
- ウ無線 LAN ルータの設置
- エ無停電電源装置の設置
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 対応する現象 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | グリーンIT対応機器 | 省電力・環境負荷低減(落雷対策とは無関係) | 不正解 |
| イ | サージ防護対応機器 | 落雷などによる一瞬の過電流 | 正解 |
| ウ | 無線LANルータ | ネットワーク機器そのもの(守られる側) | 不正解 |
| エ | 無停電電源装置 | 停電(電力がゼロになる事態) | 不正解 |
答えイ サージ防護に対応した機器の設置
覚え方のコツ
来すぎるのがサージ、来なくなるのが停電。
- サージ防護=落雷などによる一瞬の異常な過電流から機器を守る
- 無停電電源装置(UPS)=停電(電力ゼロ)の間、一時的に電力を供給する
- 同じ「電源トラブル対策」でも、"来すぎる"のか"来なくなる"のかで対策がまったく違う
拓也
『電源トラブル』って聞いたら、まず"電気が多すぎる話か、少なすぎる話か"を確認するといいよ。サージは"多すぎる"側、停電は"少なすぎる(ゼロ)"側
美咲
水道の安全弁と、断水用のタンク。この2つを思い出せば忘れないわ
おまけ:サージ防護とUPS、両方必要なことも
拓也
実務だと、サージ防護とUPSは併用されることが多いんだ。落雷で機器が壊れるのを防ぎつつ、停電時にもしばらく稼働を続けられるようにする、って感じで
美咲
じゃあ、どっちか一方じゃなくて、両方の備えが必要な場面もあるのね
拓也
そう。何を防ぎたいかによって、必要な対策を組み合わせるのが基本的な考え方なんだ
エピローグ
窓の外の雷鳴が少し遠のき、代わりに雨音が強くなる。
美咲
ねえ、あんたも、たまに私の"サージ"、うまく防護してよね
拓也
え、それどういう意味?
美咲
急に不機嫌になったり、突然機嫌が変わったりするとき、あるでしょ。ああいうの、うまく受け流してほしいってこと
拓也
……それ、俺が対策する側なんだ
美咲
当然でしょ。あんたのせいで発生すること、多いんだから
拓也
返す言葉もございません
美咲
……ふん、わかればいいのよ。次からは、余計な一言、気をつけなさいよね
拓也心の声
……サージも停電も、俺がちゃんと備えとかないとな
美咲
なによ、また黙り込んで
拓也
いや、なんでもない。……今日もごめんね、変な言い方して
美咲
……もういいわよ。次から気をつければ
今日のポイントおさらい
- サージ防護=落雷などによる一瞬の異常な過電流から機器を守る対策
- 無停電電源装置(UPS)=停電(電力がゼロになる事態)に備える対策
- 「電源トラブル」は"来すぎる"のか"来なくなる"のかで対策がまったく異なる
- グリーンITは省電力・環境負荷低減の話で、落雷対策とは無関係
- 実務ではサージ防護とUPSが併用されることも多い
次回もお楽しみに。
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問41(マネジメント系/サービスマネジメント)の解説です。