登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
自社が保有していない技術やノウハウを、他社から短期間で補完するための手段として、適切なものはどれか。
- アBPR
- イアライアンス
- ウインキュベーション
- エベンチマーキング
第1幕:商店街のコラボ企画
夕方の商店街。アーケードに「カレー店×パン店 コラボ企画! カレーパン祭り」というのぼりが立っている。美咲がそれを見て足を止める。
美咲
あ、これ気になってたのよね。別々のお店同士が組んでイベントやるの、面白いなって
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい例かも。ちょっと見せて
美咲
え、このイベントが?
拓也
うん。『自社が持ってない技術やノウハウを、他社から短期間で補う手段』についての問題
第2幕:他社のいいとこ真似すればいいんでしょ?
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『ベンチマーキング』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"他社から補う"んだから、他社のいいところを見て、真似すればいいってことでしょ。それがベンチマーキングかなって
拓也
発想は近いんだけど、実は"真似するだけ"と"手を組む"は、全然レベルが違うんだ
美咲
レベルが違う?
拓也
うん。ベンチマーキングは、他社の優れたやり方を分析して、自社なりに取り入れる手法。あくまで"参考にする"だけで、相手企業と直接手を組むわけじゃないんだ
美咲
あ……"見て学ぶ"のと、"一緒にやる"のは違うってことね
拓也
そういうこと。じゃあ、正解を見てみようか
第3幕:カレー屋とパン屋が手を組む
拓也
正解はイ アライアンス。このカレーパン祭り、まさにそれなんだ
美咲
え、どういうこと?
拓也
カレー屋さんは、美味しいカレーの作り方(ノウハウ)は持ってるけど、パンを焼く技術は持ってない。パン屋さんは逆に、パンを焼く技術は持ってるけど、本格的なカレーのレシピは持ってない
美咲
あ、それぞれ得意なものが違うのね
拓也
そう。このままだと、どっちも単独じゃ"本格カレーパン専門店"は作れない。でも、2つのお店が手を組めば、お互いの強みを持ち寄って、単独じゃ実現できなかったものが、短期間で形にできる
美咲
……あー! そういうことか! "自分で真似て作る"んじゃなくて、"相手の力をそのまま借りる"のがアライアンスなのね
拓也
完璧。企業同士が業務提携を結んで、技術・ノウハウ・販路なんかをお互いに補い合うこと、これがアライアンス。ゼロから自社で開発するより、圧倒的に短期間で実現できるのが最大のメリットなんだ
美咲
なるほど……。真似するだけじゃ、カレーの本格的な味までは再現できないもんね。本物と組んじゃったほうが早い、と
拓也
そのとおり。"学んで自分でやる"のか"相手の力をそのまま借りる"のか、ここが今回の分かれ目
第4幕:拓也、謝りすぎる
美咲
ねえ、このコラボカレーパン、買ってみない?
拓也
あ、いいね。……あ、でも今、財布に小銭しかないかも
美咲
別にいいわよ、私が出すから
拓也
いや、そんなの悪いよ。今度ちゃんと――
美咲
別に気にしてないんだけど
拓也
ほんとにごめん、事前にちゃんと準備しとくべきだった。俺の確認不足で、美咲に払わせることになって、申し訳ない。次はちゃんと――
美咲
ちょっと、待って
拓也
はい
美咲
たかがカレーパン1個分の話でしょ。なんでそんな深々と謝ってるのよ
拓也
あ……
美咲
あんた、たまに小さいことに対して、やたら謝りすぎるわよね。逆にこっちが気まずくなるから、そこまでしなくていいから
拓也
たしかに、ちょっと大げさだったかも……
美咲
ん、それでいいのよ。次から『ありがとう』くらいでいいから
拓也
……ありがとう、美咲
美咲
よろしい
第5幕:残りの選択肢を片付ける
カレーパンを頬張りながら、二人がベンチに座る。
拓也
じゃあ、残りのアとウも片付けておこうか
美咲
アは『BPR』……これ、なんの略?
拓也
Business Process Re-engineering。既存の業務プロセスを根本から見直して、再設計すること。自社の中でのやり方を変える話であって、他社と組む話じゃないんだ
美咲
あ、これも"自社完結"の話ね。他社は関係ない
拓也
そう。じゃあウの『インキュベーション』は?
美咲
なんとなく、卵を温める話かなって思ったけど
拓也
いい勘してる。インキュベーションは、まさに"卵を孵化させる"イメージから来てる言葉で、新しい事業やスタートアップを育成・支援すること。技術を"補完する"話じゃなくて、新しい事業の"種"を育てる話なんだ
美咲
なるほど……。BPRは"自社の中の改革"、インキュベーションは"新事業を育てる"、ベンチマーキングは"他社を見て学ぶ"。全部、今回の"他社から直接補う"とは違う話だったのね
拓也
そのとおり。アライアンスだけが、"他社の力をそのまま借りる"っていう、今回の問題文にぴったりの意味を持ってるんだ
問題文(再掲)
自社が保有していない技術やノウハウを、他社から短期間で補完するための手段として、適切なものはどれか。
- アBPR
- イアライアンス
- ウインキュベーション
- エベンチマーキング
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 用語 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | BPR | 自社の業務プロセスを根本から再設計する | 不正解 |
| イ | アライアンス | 他社と提携し、技術やノウハウを補い合う | 正解 |
| ウ | インキュベーション | 新規事業・スタートアップを育成・支援する | 不正解 |
| エ | ベンチマーキング | 他社の優れた手法を分析し、自社に取り入れる | 不正解 |
答えイ アライアンス
覚え方のコツ
カレー屋とパン屋が手を組めば、カレーパンはすぐできる。
- アライアンス=他社と提携し、お互いの強みを持ち寄って補い合うこと
- ベンチマーキングは"見て学ぶ"だけで、相手と直接手を組むわけではない
- BPRは自社内の改革、インキュベーションは新事業の育成で、どちらも他社連携の話ではない
拓也
『他社から補う』って言葉が出てきたら、"見て学ぶだけ"なのか"実際に手を組む"のかを確認するといいよ。手を組む話なら、ほぼアライアンス
美咲
見るだけか、一緒にやるか。この違いね
おまけ:アライアンスの種類
拓也
アライアンスにもいろいろあって、たとえば業務提携(お互いの技術やノウハウを提供し合う)、資本提携(お互いの株式を持ち合う)なんかが代表的だよ
美咲
へえ、手の組み方にも種類があるのね
拓也
うん。どこまで踏み込んで協力するかによって、形が変わってくるんだ
エピローグ
食べ終えたカレーパンの包み紙を、美咲がゴミ箱に捨てる。
美咲
ねえ、私たちの勉強会も、ある意味アライアンスよね
拓也
え、どういうこと?
美咲
あんたの知識と、私の"合格したい"って気持ちを持ち寄ってる、みたいな。お互いの得意分野、出し合ってる感じ
拓也
……それ、いい表現だね
美咲
でしょ。……まあ、単独じゃ絶対受からなかったと思うし
拓也心の声
……このアライアンス、できれば期間限定にしたくないな
美咲
なによ、黙り込んで
拓也
いや、なんでもない。……このコラボ、けっこう長く続けたいなって思って
美咲
……そう。まあ、悪くないんじゃない
今日のポイントおさらい
- アライアンス=他社と提携し、技術やノウハウをお互いに補い合う手段
- ベンチマーキングは他社の手法を分析して学ぶだけで、直接手を組むわけではない
- BPRは自社内の業務プロセス改革、インキュベーションは新規事業の育成支援
- 「他社から補う」がテーマなら、"見て学ぶ"か"手を組む"かを確認する
- アライアンスには業務提携・資本提携など、協力の踏み込み方によって種類がある
次回もお楽しみに。
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問26(ストラテジ系/経営戦略マネジメント)の解説です。