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【第24話】全部同じ深さでしょ|ITパスポート 令和4年度 問36

~ツンデレ女子大生と東大パソコンオタクの、ちょっと不器用な勉強会~

第24話|第1部 場所:大学の講義棟・学食

登場人物

美咲

美咲(みさき)

女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。

拓也

拓也(たくや)

美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。

大学の講義棟・学食

今日の問題

今日の問題

プロジェクトで作成するWBSに関する記述のうち、適切なものはどれか。

  • WBSではプロジェクトで実施すべき作業内容と成果物を定義するので、作業工数を見積もるときの根拠として使用できる。
  • WBSには、プロジェクトのスコープ外の作業も検討して含める。
  • 全てのプロジェクトにおいて、WBSは成果物と作業内容を同じ階層まで詳細にする。
  • プロジェクトの担当者がスコープ内の類似作業を実施する場合、WBSにはそれらの作業を記載しなくてよい。

第1幕:学食のテーブルで

空きコマの学食、隅のテーブル。美咲が来月の引っ越し準備のメモをスマホに打ち込みながら、ため息をついている。

美咲

美咲

はあ……引っ越しの準備、何から手をつけていいかわからないのよね。荷造りも、業者の手配も、手続きも、全部いっぺんに考えるとパンクしそう

拓也

拓也

あ、それ、今日の問題の考え方が使えるかも

美咲

美咲

え、引っ越しに?

拓也

拓也

うん。『WBS』っていう、大きな仕事を小さく分解する考え方についての問題

美咲

美咲

へえ、じゃあ実生活にも役立ちそうね

第2幕:全部同じ深さまで分けるんでしょ?

美咲

美咲

じゃあ答えるわね。これでしょ。『全てのプロジェクトにおいて、成果物と作業内容を同じ階層まで詳細にする』

拓也

拓也

お、なんでそう思った?

美咲

美咲

だって、分解するなら、どのプロジェクトでも同じくらい細かく分けたほうが、統一感あって良さそうじゃない

拓也

拓也

発想はわかるんだけど、実は"どこまで細かく分けるか"は、プロジェクトごとに違っていいんだ

美咲

美咲

え、統一しなくていいの?

拓也

拓也

うん。規模が大きいプロジェクトと小さいプロジェクトで、同じ細かさにする必要はない。むしろ、そのプロジェクトに合った、ちょうどいい粒度で分解するのが正しいんだ

美咲

美咲

あ……"全部同じルールで統一する"んじゃなくて、"案件に応じて調整する"のね

第3幕:引っ越しを分解する

拓也

拓也

正解は。まず、WBSがどういうものか、さっきの引っ越しの話で説明するね

美咲

美咲

うん

拓也

拓也

『引っ越し』って、そのままだと大きすぎて、何から手をつけていいかわからないでしょ。だから、まず"荷造り" "業者手配" "電気ガス水道の手続き"みたいに、大きな塊を分解する

美咲

美咲

あ、さっき私が悩んでたやつだ

拓也

拓也

そう。さらに、"荷造り"をもっと細かく分解すると、"衣類" "本" "食器"みたいに分かれていく。こうやって、大きな仕事を、実際に手を動かせるレベルの小さい作業まで、階層的に分解したもの、これがWBS(Work Breakdown Structure)

美咲

美咲

なるほど……。"作業分解構成図"みたいな感じね

拓也

拓也

そのとおり。で、ここまで細かく分解できると、"衣類の梱包に2時間"とか、"食器の梱包に3時間"みたいに、それぞれの作業にかかる時間(工数)を見積もりやすくなるんだ

美咲

美咲

あ……あー! そういうことか! 細かく分解すればするほど、"この作業にどれくらい時間がかかるか"が具体的にわかるようになるから、それを積み上げて全体の工数も見積もれるってことね

拓也

拓也

完璧。だから選択肢アの『作業工数を見積もるときの根拠として使用できる』が正しいんだ

美咲

美咲

なるほどね……。じゃあ、細かく分解するのがそもそもの目的、ってわけじゃないのね

拓也

拓也

そう。"見積もりやすくするための手段"であって、"細かく分けること自体"がゴールじゃない。だから、必要以上に細かくする必要はないんだ

第4幕:拓也、勝手にルールを決める

拓也

拓也

あ、そうだ。この学食のこの席、勉強会にちょうどいいから、次からいつもここにしよう

美咲

美咲

……え、勝手に決めるの?

拓也

拓也

美咲

美咲

別にこの席が嫌ってわけじゃないけど、なんで確認もなしに『次からここ』って決まってるのよ

拓也

拓也

ごめん、いい感じだったから、つい……

美咲

美咲

あんた、たまに『これでいこう』って、こっちの意見聞かずにルール化しようとするわよね。学習計画表のときも似たようなことあったし

拓也

拓也

たしかに……。次からちゃんと『どう思う?』って聞くようにする

美咲

美咲

ん、それでいいのよ。……まあ、この席自体は、悪くないと思うけど

拓也

拓也

そう言ってもらえると、ちょっと安心する

美咲

美咲

でも、決めるのは私も一緒に、よ

拓也

拓也

うん、肝に銘じます

第5幕:残りの選択肢を片付ける

拓也

拓也

気を取り直して、残りの

美咲

美咲

イは『スコープ外の作業も検討して含める』……これ、なんとなく丁寧そうに見えるけど

拓也

拓也

一見丁寧そうに見えるけど、実は逆効果なんだ。WBSは、そのプロジェクトの"スコープ(範囲)内"の作業を分解するもの。スコープ外のもの、つまり"そもそもこのプロジェクトではやらないこと"まで含めると、逆に何をすべきかが曖昧になっちゃう

美咲

美咲

あ、引っ越しの例えで言うと、『引っ越しと関係ない、来月の旅行の準備』まで混ぜて書いちゃう、みたいな感じ?

拓也

拓也

まさにそれ。関係ないことまで混ざると、肝心の引っ越し作業がぼやける。じゃあの『類似作業は記載しなくてよい』は?

美咲

美咲

これも、なんとなく『同じような作業なら省略していいのかな』って思っちゃいそうだけど

拓也

拓也

そう思うのが自然なんだけど、スコープ内の作業である以上、類似していても、ちゃんと記載する必要があるんだ。省略すると、その作業にかかる時間や担当が、計画から抜け落ちちゃうから

美咲

美咲

なるほど……。イは"余計なものを混ぜすぎ"、エは"必要なものを省略しすぎ"。どっちも極端だったのね

拓也

拓也

そのとおりスコープ内のことは漏れなく、スコープ外のことは含めない。このバランスが大事なんだ

問題文(再掲)

プロジェクトで作成するWBSに関する記述のうち、適切なものはどれか。

  • WBSではプロジェクトで実施すべき作業内容と成果物を定義するので、作業工数を見積もるときの根拠として使用できる。
  • WBSには、プロジェクトのスコープ外の作業も検討して含める。
  • 全てのプロジェクトにおいて、WBSは成果物と作業内容を同じ階層まで詳細にする。
  • プロジェクトの担当者がスコープ内の類似作業を実施する場合、WBSにはそれらの作業を記載しなくてよい。

まとめ:選択肢ごとの答え合わせ

選択肢内容正誤
作業内容と成果物を定義し、工数見積もりの根拠に使える正解
スコープ外の作業も検討して含める不正解(スコープ外は含めない)
全プロジェクトで同じ階層まで詳細にする不正解(粒度は案件ごとに調整)
類似作業は記載しなくてよい不正解(スコープ内なら漏れなく記載)

答えア WBSではプロジェクトで実施すべき作業内容と成果物を定義するので、作業工数を見積もるときの根拠として使用できる。

覚え方のコツ

引っ越しを、荷造り→衣類・本・食器、と分解する。

拓也

拓也

WBSに関する問題は、"何のために分解するのか"を思い出すと迷わないよ。見積もりの根拠にするためのものだから、"細かければ細かいほどいい"わけでも、"雑でいい"わけでもないんだ

美咲

美咲

ちょうどいい細かさ、を意識すればいいのね

おまけ:WBSと工数見積もりの関係

拓也

拓也

実務だと、WBSで分解した各作業に、担当者と見積もり時間を割り当てて、プロジェクト全体のスケジュールや必要な人員を計算するんだ。第3部でやる学園祭編でも、また詳しく触れると思う

美咲

美咲

へえ、先の話まで繋がってるのね

エピローグ

学食のざわめきの中、美咲がノートに書いた引っ越し準備リストを見せる。

美咲

美咲

ねえ、これで見ると、私たちの勉強会も、WBSの一部みたいなものよね

拓也

拓也

え、どういうこと?

美咲

美咲

"合格する"が最終的な成果物だとしたら、今この勉強会は、その中の小さな作業の一つ、ってことでしょ

拓也

拓也

たしかに、そう言われるとそうかも

美咲

美咲

じゃあ、合格した後のタスクって、まだこのWBSに入ってないってことよね

拓也

拓也

……それ、どういう意味?

美咲

美咲

さあ、どうかしら。……まだ先の話だから、今は考えなくていいんじゃない

拓也

拓也心の声

……合格した後も、ちゃんとこの"プロジェクト"、続けたいな

美咲

美咲

なによ、黙り込んで

拓也

拓也

いや、なんでもない。……とりあえず、今のタスクに集中しようか

美咲

美咲

そうね。次は何をやるの?

今日のポイントおさらい

  1. WBS=大きな仕事を、手を動かせる小さな作業まで階層的に分解したもの
  2. 分解する目的は作業工数を見積もりやすくするため。細かくすること自体が目的ではない
  3. WBSはスコープ内の作業を漏れなく含め、スコープ外の作業は含めない
  4. 分解の詳細さ(階層の深さ)は、プロジェクトごとに適切なレベルを調整してよい
  5. 類似した作業でも、スコープ内であれば省略せずきちんと記載する

次回もお楽しみに。

この記事はITパスポート試験 令和4年度 問36(マネジメント系/プロジェクトマネジメント)の解説です。

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