登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
顧客との個々のつながりを意識して情報を頻繁に更新する SNS などのシステムとは異なり、会計システムのように高い信頼性と安定稼働が要求される社内情報を扱うシステムの概念を示す用語として、最も適切なものはどれか。
- アIoT(Internet of Things)
- イPoC(Proof of Concept)
- ウSoE(Systems of Engagement)
- エSoR(Systems of Record)
第1幕:ATMコーナーの待合で
銀行のATMコーナー、記帳待ちの列。美咲が通帳の残高を見ながら、小さくため息をつく。
美咲
はあ……今日の問題、ストラテジ系なのよね。正直、今回で第1部のストラテジ系、最後らしいから、ちょっとほっとしてるところあるわ
拓也
あ、そうなんだ。まあ、この分野、たしかに実感湧きにくいもんね
美咲
そうなのよ。数字とか制度の話ばっかりで、パソコンの仕組みみたいに『へえ』ってならないのよね
拓也
じゃあ、今日は最後の一花、頑張って片付けよう。ちょうど銀行にいるし、いい教材があるよ
美咲
へえ、この通帳とか?
拓也
まさにそれ
第2幕:SNSっぽい話だから、こっちでしょ?
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『SoE』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、問題文に『SNSなどのシステム』って言葉出てくるじゃない。SNSっぽい話をしてる選択肢を選べばいいのかなって
拓也
発想はわかるんだけど、実は問題文、"SNSなどのシステムとは異なり"って書いてあるんだ
美咲
あ……"SNSと同じ"じゃなくて、"SNSとは違う"ほうを聞かれてたの?
拓也
そういうこと。今回聞かれてるのは、"SNSとは異なる、会計システムみたいな安定重視のシステム"のほうなんだ
美咲
くっ……問題文、ちゃんと最後まで読まなきゃダメね
第3幕:通帳とタイムライン
拓也
正解はエ SoR。この通帳で説明するね
美咲
通帳?
拓也
うん。銀行の通帳に記帳された残高って、絶対に間違ってちゃいけないでしょ。1円でもズレたら大問題
美咲
たしかに、それは困るわね
拓也
正確性と安定稼働が最優先の、こういうシステムをSoR(Systems of Record)="記録のためのシステム"って呼ぶんだ。会計システムとか、まさにこれ
美咲
あ、"記録"を大事にするシステムってこと?
拓也
そう。一方で、SNSのタイムラインは、どんどん新しい投稿が流れていって、"いいね"とかコメントで繋がりを深めていくでしょ。こっちはSoE(Systems of Engagement)="繋がりのためのシステム"
美咲
……あー! そういうことか! 通帳は"正確に記録し続ける"のが命、タイムラインは"繋がりを頻繁に更新する"のが命。大事にしてるものが真逆なのね
拓也
完璧。だから、問題文の『SNSなどのシステムとは異なり』っていうのは、"SoEとは違う、SoRのほうを答えてね"っていうヒントだったんだ
美咲
なるほどね……。通帳とタイムライン、たしかに全然性格が違うシステムだわ
第4幕:拓也、話を広げすぎる
拓也
ちなみにSoRとSoEって考え方は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略でもよく使われてて、両方をどう連携させるかが今の企業の課題だったりするんだよね。あと最近だと、SoRとSoEの間を繋ぐSoI(Systems of Insight)っていう第三の概念も出てきてて――
美咲
ちょっと、拓也
拓也
あ、はい
美咲
それ、試験に出る範囲なの?
拓也
……多分、出ない
美咲
じゃあ、今はいいから。範囲外の話まで広げすぎなのよ、あんた
拓也
すみません……。つい、関連する話をどんどん広げたくなる癖があって
美咲
気持ちはわかるけど、今日はもう最後のストラテジ系なんだから、範囲内のことだけ、ちゃんと確実に片付けましょ
拓也
たしかに、そうだね。次から気をつける
美咲
ん、それでいいのよ
第5幕:残りの選択肢を片付ける
拓也
じゃあ、残りのアとイも片付けよう。これは範囲内だから安心して
美咲
アは『IoT』……これは聞いたことある。モノがインターネットに繋がるやつよね
拓也
そう、Internet of Things。家電とかセンサーとか、いろんなモノがネットに繋がる仕組み全般を指す言葉。今回の"記録重視か繋がり重視か"の話とは、そもそも次元が違うんだ
美咲
あ、IoTは"モノの話"で、SoR/SoEは"システムの性格の話"だから、比較する軸が違うのね
拓也
そのとおり。じゃあイの『PoC』は?
美咲
これは初めて聞くかも
拓也
PoCはProof of Concept="概念実証"。新しいアイデアが実際にうまくいきそうか、小さく試してみる段階のこと。これも、システムの分類の話とは全然違う
美咲
なるほど……。今日の4択、実は"SNSっぽい単語"だけじゃなくて、"そもそも話してるレイヤーが違う言葉"も混ざってたのね
拓也
そのとおり。IoTは"モノ"の話、PoCは"検証段階"の話、SoEは"繋がり重視のシステム"、SoRだけが今回の"記録重視のシステム"にぴったり合う
美咲
今日で、ストラテジ系、ちゃんと有終の美を飾れた気がするわ
問題文(再掲)
顧客との個々のつながりを意識して情報を頻繁に更新する SNS などのシステムとは異なり、会計システムのように高い信頼性と安定稼働が要求される社内情報を扱うシステムの概念を示す用語として、最も適切なものはどれか。
- アIoT(Internet of Things)
- イPoC(Proof of Concept)
- ウSoE(Systems of Engagement)
- エSoR(Systems of Record)
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 用語 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | IoT | モノがインターネットに繋がる仕組み全般 | 不正解 |
| イ | PoC | 新しいアイデアを小さく検証する段階 | 不正解 |
| ウ | SoE | 顧客との繋がりを重視し、頻繁に更新されるシステム | 不正解 |
| エ | SoR | 正確な記録と安定稼働を重視するシステム | 正解 |
答えエ SoR(Systems of Record)
覚え方のコツ
通帳は正確さ命のSoR、タイムラインは繋がり命のSoE。
- SoR=記録の正確性・安定稼働を重視するシステム(会計システムなど)
- SoE=顧客との繋がりを重視し、頻繁に更新されるシステム(SNSなど)
- 問題文の「〜とは異なり」に注目すれば、聞かれているのが"その逆"だとわかる
拓也
『〜とは異なり』『〜ではなく』みたいな否定の言葉が問題文にあったら、そこに続く説明が正解の"逆"になってることが多いから、要チェックだよ
美咲
否定の言葉を見逃さないようにするわ
おまけ:SoRとSoEは対立しない
拓也
実際の企業では、SoRとSoEは両方必要で、どっちが優れてるって話じゃないんだ。正確な記録(SoR)があるからこそ、それを活かした顧客対応(SoE)ができる、みたいな関係
美咲
安定した土台があってこそ、活発な繋がりも活きるってことね
エピローグ
記帳を終えた通帳を、美咲が大事そうにバッグにしまう。
美咲
ねえ、こう考えると、あんたって私にとってのSoRみたいなものね
拓也
え、それどういう意味?
美咲
安定してて、いつも同じところにいてくれる、正確に頼れる存在、みたいな
拓也
……それ、褒めてる?
美咲
褒めてるわよ、たぶん。タイムラインみたいに、コロコロ変わられても困るし
拓也心の声
……ずっとSoRでいるから、たまにはSoEみたいに、ちゃんと気持ちも更新して伝えたいけど
美咲
なによ、黙り込んで
拓也
いや、なんでもない。……これからも、ちゃんと安定して隣にいるよ
美咲
……ん、それでいいのよ
今日のポイントおさらい
- SoR(Systems of Record)=記録の正確性・安定稼働を重視するシステム(会計システムなど)
- SoE(Systems of Engagement)=顧客との繋がりを重視し、頻繁に更新されるシステム(SNSなど)
- IoT・PoCは、それぞれ「モノの接続」「概念検証」の話で、SoR/SoEとは軸が異なる
- 問題文の「〜とは異なり」「〜ではなく」に注目すると、正解の方向性が見えやすい
- 実務ではSoRとSoEは対立せず、両方をうまく組み合わせることが重要
次回もお楽しみに。
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問31(ストラテジ系/システム企画)の解説です。