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【第31話】訪日客が生む経済効果|ITパスポート 令和5年度 問3

~ツンデレ女子大生と東大パソコンオタクの、ちょっと不器用な勉強会~

第31話|第2部 場所:カフェ

登場人物

美咲

美咲(みさき)

女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。

拓也

拓也(たくや)

美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。

カフェ

今日の問題

今日の問題

観光などで訪日した外国人が国内にもたらす経済効果を示す言葉として、最も適切なものはどれか。

  • アウトソーシング
  • アウトバウンド需要
  • インキュベーター
  • インバウンド需要

第1幕:癖で、二杯

駅前のカフェ。以前、二人で何度か勉強したことのある店だった。窓際のカウンター席、電源のあるいつもの位置に、拓也は一人で座っていた。

あれから、十日が経っていた。

注文カウンターで、拓也は考え事をしながら口を開く。

拓也

拓也

アイスコーヒーを一つ……あ

言いかけて、止まる。気づいたときには、店員はすでに「かしこまりました」と、二つ目のカップを準備台に置いていた。美咲がいつも頼む、キャラメルの甘いラテ。長く続いた習慣が、勝手に指と口を動かしてしまったらしい。

拓也

拓也心の声

……やっちゃった

断るタイミングを逃し、拓也は二つのドリンクを受け取って、いつもの席に戻った。向かいの椅子には、誰も座っていない。

店内には、旅行かばんを引いた外国人観光客のグループが数組いた。片言の英語で店員とやり取りしながら、楽しそうにメニューを指差している。

第2幕:「アウト」だから海外でしょ、たぶん

ノートパソコンを開き、今日の問題を表示する。訪日外国人が日本国内にもたらす経済効果についての問題だった。

向かいの空いた椅子を見ながら、拓也はまた、聞き慣れた声を思い出す。

美咲

美咲

これでしょ。『アウトバウンド需要』。だって『アウト』だから、外国から入ってくるお金、ってイメージじゃない?

想像の中の彼女は、自信満々にそう言ってのける。拓也は、キャラメルラテのカップを見つめながら、小さく笑ってしまった。

拓也

拓也

……それ、俺が最初に教えたときも、同じところで引っかかってたよね

拓也

拓也

『アウト』って単語だけ見ると、なんとなく"外国"を連想しちゃうんだけど、実は逆なんだ。この場合の"アウト/イン"は、"お金がどっちに向かって動くか"の話

第3幕:お金が入ってくるか、出ていくか

拓也は、店内を見回す外国人観光客のグループに目をやりながら説明を続ける。

拓也

拓也

あの人たちが、このカフェでコーヒーを買う。これは、海外のお金が日本国内に"入ってくる"取引だよね

拓也

拓也

これがインバウンド需要。『インバウンド』は"外から中へ入ってくる"って意味で、訪日外国人が国内で使うお金による経済効果のことなんだ

美咲

美咲

じゃあ、アウトバウンドは?

想像の中の彼女が、今度は素直に聞き返してくる。

拓也

拓也

アウトバウンドは、その逆。日本人が海外旅行に行って、向こうでお金を使うこと。日本から外国へ"出ていく"お金の流れ

拓也

拓也

今回の問題は"訪日外国人が国内にもたらす経済効果"だから、方向としては海外→国内。エのインバウンド需要が正解なんだ

美咲

美咲

なるほど……"外国人"だから海外って思っちゃったけど、大事なのは"お金がどっちに動くか"のほうだったのね

想像の中の彼女は、いつもどおり、理解した瞬間だけは素直だった。

第4幕:三枚の写真

説明を書き終えて、拓也はキャラメルラテを一口飲む。甘すぎて、自分にはやっぱり合わないと思う。

なんとなく、スマホのカメラロールを開いた。この十日間で、もう何度も見た三枚の写真が出てくる。図書館で二人並んで撮った一枚。公園でピクニックをしたときの一枚。試験当日、駅前のベンチで撮った、最後の一枚。

LINEのトーク画面は、まだ動いていない。既読のまま、あの日の自分の言葉が最後に残っている。

拓也(急かさない、って決めたから。……でも、正直、ちょっとだけ、寂しい)

一口だけ飲んだラテを見て、拓也は苦笑する。今日のぶんは、たぶん自分で二つとも飲むしかない。

拓也(……次、会えたときは、ちゃんと"インバウンド"の話、笑ってくれるといいな)

第5幕:残りの選択肢を片付ける

気を取り直して、拓也はノートに残りの選択肢もまとめる。

拓也

拓也

ウの『インキュベーター』は、新しく事業を始める人を支援する施設や仕組みのこと。オフィスや資金、経営ノウハウを提供して、起業を"孵化"させる、っていう意味の言葉なんだ

美咲

美咲

アの『アウトソーシング』は?

想像の中の彼女に、拓也は答える。

拓也

拓也

アウトソーシングは、自社の業務を外部の会社に委託すること。人件費の削減とか、専門性の活用が目的で使われる言葉。今回の"訪日外国人による経済効果"とは、そもそも話の土台が違うんだ

拓也

拓也

アウトソーシング、インキュベーター、どっちも観光やお金の流れの話じゃない。紛らわしいのは、あくまでイとエの"アウト/イン"の向き

問題文(再掲)

観光などで訪日した外国人が国内にもたらす経済効果を示す言葉として、最も適切なものはどれか。

  • アウトソーシング
  • アウトバウンド需要
  • インキュベーター
  • インバウンド需要

まとめ:選択肢ごとの答え合わせ

選択肢内容正誤
アウトソーシング(業務の外部委託)不正解
アウトバウンド需要(日本人が海外で使うお金)不正解(方向が逆)
インキュベーター(起業支援施設)不正解
インバウンド需要(訪日外国人が国内で使うお金)正解

答えエ 訪日外国人が国内にもたらす経済効果=インバウンド需要

覚え方のコツ

「イン」は中に入ってくるお金、「アウト」は外に出ていくお金。

おまけ:インバウンドという言葉、他の場面でも使われる

拓也

拓也

実は『インバウンド』って言葉、観光以外でも使われるんだ。たとえばコールセンターで、お客さんからかかってくる電話は『インバウンド』、こちらから発信する電話は『アウトバウンド』って呼ばれる

拓也は、想像の中の美咲がいつも言いそうなことを、そのまま自分で言ってみる。

拓也

拓也

……"内側に向かってくるか、外側に向かっていくか"。結局、いろんな場面で同じ考え方が使えるんだよね

答える人がいない静かな店内で、その声だけが少し寂しく響いた。

エピローグ

閉店にはまだ早い時間だったが、拓也はノートパソコンを閉じた。飲みきれなかったキャラメルラテのカップが、テーブルの上に残っている。

拓也(この味、次はちゃんと美咲の前で残さず捨てて、変な顔されたいな)

我ながらおかしなことを考えて、拓也は一人で苦笑する。二つ分の会計を済ませて店を出ると、夕方の空に入道雲が高く伸びていた。

ポケットの中でスマホが震える。反射的に取り出したが、通知は別のアプリからのものだった。トーク画面は、今日も動かない。

拓也(……焦らない。ちゃんと、続けとくから)

拓也は、来た道をゆっくりと歩いて帰った。カフェの窓際の席には、また明日も、一人分ではなく二人分のつもりで座るような気がしていた。

今日のポイントおさらい

  1. インバウンド需要=訪日外国人が国内で使うお金による経済効果
  2. アウトバウンド需要=日本人が海外で使うお金。「アウト/イン」は"お金の向き"を表す
  3. アウトソーシングは業務の外部委託、インキュベーターは起業支援施設で、どちらも別の概念
  4. 「インバウンド」「アウトバウンド」は観光以外にも、コールセンターの入電・発信などにも使われる
  5. 紛らわしい言葉は、単語のイメージではなく"何が、どちらに動くか"で考えると迷いにくい

この記事はITパスポート試験 令和5年度 問3(ストラテジ系/経営戦略マネジメント)の解説です。

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