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【第33話】採れた分だけ使うJIT方式|ITパスポート 令和6年度 問15

~ツンデレ女子大生と東大パソコンオタクの、ちょっと不器用な勉強会~

第33話|第2部 場所:祖父母の家・田舎

登場人物

美咲

美咲(みさき)

女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。

拓也

拓也(たくや)

美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。

祖父母の家・田舎

今日の問題

今日の問題

必要な時期に必要な量の原材料や部品を調達することによって、工程間の在庫をできるだけもたないようにする生産方式はどれか。

  • BPO
  • CIM
  • JIT
  • OEM

第1幕:なんで来たのよ

在来線を三本乗り継いで、さらにバスに揺られて一時間。拓也がたどり着いたのは、見渡す限り田んぼが広がる、小さな集落だった。友人から聞いた住所を頼りに歩き、ようやく古い日本家屋の前に立つ。

縁側に、美咲がいた。膝を抱えて、ぼんやりと庭を眺めている。

美咲

美咲

……は?

拓也の姿を見た瞬間、美咲の顔から表情が消えた。

美咲

美咲

なんで、ここがわかったのよ

拓也

拓也

……共通の友達から。心配だったから

美咲

美咲

余計なお世話よ。なんで来たのよ

美咲は立ち上がり、拓也に背を向けようとする。けれど、家の中に逃げ込むでもなく、縁側の端に座り直しただけだった。

拓也

拓也

帰れって言われても、今日は帰らない

美咲

美咲

……ふん、勝手にすれば

そう言いながらも、美咲は追い払おうとはしなかった。縁側の隅に、拓也が腰を下ろすのを、黙って許した。奥の台所から、祖母らしき人が麦茶を運んできて、何も聞かずに置いていく。蝉の声が、まだ夏の終わりを惜しむように鳴いていた。

第2幕:とりあえず、問題出しなさいよ

しばらく、二人とも何も話さなかった。庭先の風鈴が、時々思い出したように鳴る。

美咲

美咲

……で。いつまでそこにいるつもり

拓也

拓也

美咲が話す気になるまで

美咲

美咲

話すことなんて、ないんだけど

また、沈黙が落ちる。耐えられなくなったのは、先に美咲のほうだった。

美咲

美咲

……ちょっと。何か、しゃべりなさいよ、気まずいから

拓也

拓也

うん

美咲

美咲

あんた、今日のぶんの問題、持ってきてるんでしょ

拓也は、少し驚いた顔をする。

美咲

美咲

別に、あんたのために聞いてあげるわけじゃないから。ただ、こうやって黙って座ってるほうが、変な感じがするだけ

拓也

拓也

……うん、持ってきた

拓也はリュックからノートを取り出す。二人の間に、ようやくいつもの空気が少しだけ戻ってきた。

美咲

美咲

JITってやつね。これでしょ、CIM

拓也

拓也

お、なんでそう思った?

美咲

美咲

コンピュータで生産工程を全部管理すれば、無駄な在庫も自然と減りそうじゃない。だから、"コンピュータで一元管理する仕組み"のCIMが正解なのかなって

第3幕:ばあちゃんの畑と同じ

拓也は、庭の隅にある小さな畑に目をやった。

拓也

拓也

あそこの畑、おばあちゃんが育ててるやつ?

美咲

美咲

そうよ。採れた分だけ、その都度台所に持っていくの。作りだめなんて、しないから

拓也

拓也

それ、まさに今日の答えのヒントになるよ

美咲

美咲

……え、どういうこと

拓也

拓也

CIMは、"コンピュータで生産工程を一元管理する"っていう、もっと広い概念の言葉なんだ。それに対して、今日の問題が聞いてるのは、"必要な時期に、必要な量だけ調達して、在庫を持たないようにする"っていう、もっと具体的な生産方式の話

美咲

美咲

あ……それ、おばあちゃんの畑と同じ考え方ってこと?

拓也

拓也

そのとおり。おばあちゃんが、野菜を採れた分だけその都度使うのは、余らせて腐らせないため。それと同じように、工場でも必要になる直前に、必要な分だけ部品を届けてもらうことで、在庫を抱えるコストや無駄を減らす。これがJIT(ジャストインタイム)

美咲

美咲

……あー!  そういうことか。作りだめしないのがポイントなのね

拓也

拓也

正解はウのJIT。CIMは"コンピュータでの一元管理"っていう手段の話、JITは"必要なときに必要な分だけ"っていう在庫管理の考え方の話。似てるようで、指してるものが違うんだ

第4幕:私、バカだから

説明が終わって、また静かになる。美咲は、麦茶のグラスを両手で包みながら、庭を見つめていた。

美咲

美咲

……こんな簡単な問題も、ちゃんと考えないと間違えるのよ、私

拓也

拓也

……

美咲

美咲

615点も取れたのに、300点にすら届かない分野があるなんて。頭がいいわけじゃないのよ、私。あんたと違って

拓也

拓也

美咲

美咲

美咲

バカだから、後回しにしちゃうの。興味ないことは、ちゃんと考えないの。ずっとそう。昔からそう

美咲

美咲

……ここに来たのだって、結局、逃げてるだけ。恥ずかしくて、誰にも会いたくなくて

美咲の声が、少しずつ震え始める。

美咲

美咲

私、バカだから……

拓也

拓也

バカなんかじゃない!

拓也にしては、珍しく大きな声だった。今まで、こんな声を聞いたことは一度もなかった。美咲が、驚いた顔で拓也を見る。

拓也

拓也

バカなんかじゃない。美咲は、ちゃんと考えられる。ちゃんとわかる。今日だって、ヒント一つで、ちゃんと自分で気づいた

拓也

拓也

615点取ったのは、美咲がちゃんと頑張った結果だ。285点だったのだって、興味を持てなかっただけで、頭が悪いからじゃない

拓也

拓也

……俺は、美咲が受かるまで付き合うって決めてるから。それだけ

短い言葉だった。でも、拓也がそれだけ言うのに、精一杯だった。

美咲は、しばらく何も言わずに、顔を伏せていた。肩が、小さく震えている。声を出さずに、涙だけが膝の上に落ちていた。長くは続かなかった。ひとしきり泣いたあと、美咲は袖で乱暴に顔をぬぐった。

第5幕:残りの選択肢を片付ける

しばらくして、美咲が小さく洟をすすりながら、ノートを覗き込んだ。

美咲

美咲

……気を取り直して。残りの、アとエは?

拓也

拓也

アのBPOは、自社の業務プロセスを、まるごと外部の会社に委託すること。経理とか人事とか、専門の会社にお願いする、っていう仕組み。在庫管理の話とは、そもそも土台が違う

美咲

美咲

エは?

拓也

拓也

エのOEMは、他社ブランドの製品を、自社で製造すること。委託されたメーカーが、依頼元のブランド名で製品を作る仕組み。これも、"在庫をどう管理するか"の話じゃなくて、"誰が、誰のブランドで作るか"の話なんだ

美咲

美咲

……BPOは業務委託、CIMはコンピュータでの一元管理、OEMは他社ブランドでの製造。JITだけが、"在庫を持たない"考え方の話なのね

拓也

拓也

そのとおり。似たようなアルファベット3文字が並ぶと混乱しがちだけど、それぞれ何を指してるかを、一つずつ整理すればちゃんと見分けられるよ

問題文(再掲)

必要な時期に必要な量の原材料や部品を調達することによって、工程間の在庫をできるだけもたないようにする生産方式はどれか。

  • BPO
  • CIM
  • JIT
  • OEM

まとめ:選択肢ごとの答え合わせ

選択肢内容正誤
BPO(業務プロセスの外部委託)不正解
CIM(コンピュータによる生産工程の一元管理)不正解
JIT(必要な時期に必要な量だけ調達し、在庫を持たない)正解
OEM(他社ブランドでの受託製造)不正解

答えウ JIT(ジャストインタイム)

覚え方のコツ

採れた分だけ、その都度使う。作りだめしない、それがJIT。

エピローグ

日が傾き始めた頃、拓也は帰りのバスの時間を確認した。

拓也

拓也

そろそろ、行くよ

美咲

美咲

……うん

拓也

拓也

無理に東京に戻ってこいとは言わない。ちゃんと戻ってこられそうになったら、それでいいから

美咲

美咲

……あんたは、勝手に来て、勝手に説教して、勝手に帰るのね

拓也

拓也

説教したつもりはないんだけどな

美咲

美咲

……ふん

それでも、美咲は玄関先まで見送りに出てきた。バス停までの道を、二人で並んで歩く。田んぼを渡る風が、少しだけ涼しかった。

バス停のベンチで、拓也はしばらく黙って座っていた。バスが来るのが見えたところで、隣から小さな声がした。

美咲

美咲

……ありがと

それだけだった。振り向くと、美咲は少し赤くなった目のまま、そっぽを向いていた。拓也は、何も言わずに、小さくうなずいた。

バスに乗り込み、窓越しに見えた美咲は、まだそこに立ったまま、小さく手を振っていた。

今日のポイントおさらい

  1. JIT(ジャストインタイム)=必要な時期に必要な量だけ調達し、工程間の在庫を持たない生産方式
  2. CIMはコンピュータによる生産工程の一元管理で、JITとは指しているものが違う
  3. BPOは業務プロセスの外部委託、OEMは他社ブランドでの受託製造で、どちらも在庫管理の話ではない
  4. 似たアルファベット略語ほど、それぞれが「何のための仕組みか」を分けて整理する
  5. 紛らわしい選択肢は、キーワードのイメージだけで判断せず、定義そのものに立ち返ると迷いにくい

この記事はITパスポート試験 令和6年度 問15(ストラテジ系/産業と業種)の解説です。

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