登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
ハッカソンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア定められたルールの下、ある主題について、肯定派と否定派といった異なる立場に分かれて議論する。
- イ情報セキュリティ分野で活躍したいという志志をもった若者が、合宿形式で情報セキュリティに関する実践的な知識を学ぶ。
- ウプログラマーやデザイナーなどから成る複数の参加チームが、与えられたテーマに関するプロトタイプを短期間で作成し、その成果を発表して競い合う。
- エ問題解決や利用者獲得などゲーム的な要素のない分野に、デジタル技術を活用したゲームの要素を取り入れることによって、利用者の参加を動機づける。
第1幕:久しぶりの、散らかった部屋
東京に戻ってから最初の週末。美咲は、久しぶりに拓也の家を訪れていた。相変わらず、自作PCのパーツやケーブルが床に散らばっている。
美咲
相変わらず、足の踏み場もないわね
拓也
ごめん、今片付けるから
棚の隅に、見慣れない盾のようなトロフィーが置いてあるのに、美咲が気づく。
美咲
……何、これ
拓也
あ、それ、大学のときに出たコンテストの賞。見せたことなかったっけ
美咲
初めて見たわよ。何のコンテスト?
拓也
今日の問題、ちょうどそれに関係あるやつなんだ
第2幕:ハッカーの合宿でしょ、それ
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『情報セキュリティ分野を学ぶ合宿』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"ハッカソン"って、"ハッカー"って単語入ってるじゃない。セキュリティを破る人、みたいなイメージだったから、セキュリティ系の合宿かと思ったのよね
拓也
その発想、すごくよくある勘違いなんだ。でも実は"ハッカソン"の"ハッカ"は、不正アクセスする"ハッカー"の意味じゃないんだよ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。もともとは、プログラムをいじって何かを作ることに熱中する"hack"という言葉と、"marathon(マラソン)"を組み合わせた造語なんだ
第3幕:短期集中の、耐久レース
拓也は、棚のトロフィーを手に取った。
拓也
これ、大学1年のときに出たハッカソンの賞なんだ。土日の2日間、チームでこもりっきりになって、アプリのプロトタイプを一つ作り上げる、っていうイベント
美咲
2日間で、アプリを1個? そんなに早くできるものなの?
拓也
完成品じゃなくて、あくまで"プロトタイプ"でいいんだ。プログラマーやデザイナーが集まって、与えられたテーマに沿ったプロトタイプを短期間で作って、最後に発表して競い合う。これがハッカソンの正体
美咲
あ……! だから"マラソン"なのね。長時間、集中して作り続けるから
拓也
そのとおり。正解はウ。"ハッカソン=短距離走じゃなくて、短期集中の耐久レース"って覚えるとわかりやすいよ
美咲
セキュリティの話だと思ってたけど、全然違う世界だったのね
第4幕:保証します、とか言うな
拓也
にしても、美咲がまたこうやって普通に勉強しに来てくれて、俺、正直すごいほっとしてる
美咲
……そう?
拓也
うん。この調子なら、次は絶対大丈夫だと思う。同じ分野を2回連続で落とす人って、統計的にはほとんどいないらしいから
美咲の表情が、すっと固まった。
美咲
……は? その"ほとんどいない"の中に、私が入ったらどうすんのよ
拓也
あ……いや、そういう意味じゃなくて
美咲
今、私にプレッシャーかけてるって自覚ある? "統計的に大丈夫"とか言われても、何も安心できないんだけど
拓也
……ごめん。励ましてるつもりだったんだけど、逆効果だったな
美咲
そうよ。数字とか確率の話じゃなくて、ただ、そばで見ててくれるだけでいいのよ、こういうときは
拓也
……うん、わかった。次から気をつける
美咲は、まだ少し頬を膨らませていたが、それ以上は追及しなかった。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
美咲
……気を取り直して。残りのアとエも教えてよ
拓也
アは、ディベートの説明。賛成派と反対派に分かれて、ルールに沿って議論を戦わせる形式。プロトタイプを作る話じゃなくて、"議論"がテーマなんだ
美咲
エは?
拓也
エは、ゲーミフィケーション。本来ゲーム的な要素がない分野に、ポイント制とかランキングみたいなゲームの要素を取り入れて、参加者のやる気を引き出す手法のこと。勉強にスタンプカードをつけるようなイメージかな
美咲
じゃあ、私たちの勉強会にも、ゲーミフィケーション取り入れる?
拓也
……それ、いいかもしれない。問題正解したらポイントためるとか
美咲
今のなし。あんたが変に張り切りそうだから
問題文(再掲)
ハッカソンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア定められたルールの下、ある主題について、肯定派と否定派といった異なる立場に分かれて議論する。
- イ情報セキュリティ分野で活躍したいという志志をもった若者が、合宿形式で情報セキュリティに関する実践的な知識を学ぶ。
- ウプログラマーやデザイナーなどから成る複数の参加チームが、与えられたテーマに関するプロトタイプを短期間で作成し、その成果を発表して競い合う。
- エ問題解決や利用者獲得などゲーム的な要素のない分野に、デジタル技術を活用したゲームの要素を取り入れることによって、利用者の参加を動機づける。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 対応する用語 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | 賛成派・反対派に分かれて議論する | ディベート | 不正解 |
| イ | 合宿形式でセキュリティを学ぶ | セキュリティ研修・合宿 | 不正解 |
| ウ | 短期間でプロトタイプを作り、発表して競う | ハッカソン | 正解 |
| エ | ゲームの要素で参加者の意欲を高める | ゲーミフィケーション | 不正解 |
答えウ プログラマーやデザイナーなどから成る複数の参加チームが、与えられたテーマに関するプロトタイプを短期間で作成し、その成果を発表して競い合う
覚え方のコツ
ハッカソンは、短距離走じゃなくて短期集中の耐久レース。
- ハッカソン="hack"(作ることに熱中する)+"marathon"の造語で、セキュリティの"ハッカー"とは無関係
- 短期間でプロトタイプを作り、発表して競うイベント
- ディベートは議論、ゲーミフィケーションはゲーム要素での動機づけ。どちらもハッカソンとは別物
エピローグ
散らかった部屋の片付けを手伝いながら、美咲がぽつりと言う。
美咲
さっきは、ちょっと言い過ぎたかも
拓也
いや、俺が変なこと言ったのが悪い
美咲
……でも、心配してくれてたのはわかるから。それだけは、ちゃんと伝わってる
拓也
うん
美咲
今度から、励ますときは、変な数字とか出さないでよね
拓也
肝に銘じます
美咲は、トロフィーを棚に戻しながら、ふと笑った。
美咲
今度、私にもハッカソンってやつ、見せてよ。どんな感じで作るのか、見てみたい
拓也
今度チーム組むとき、誘おうか?
美咲
……本気にしないでよ。ただの興味本位だから
そう言いながらも、美咲は少し楽しそうに、トロフィーを眺めていた。
今日のポイントおさらい
- ハッカソン="hack"+"marathon"の造語で、短期間でプロトタイプを作り発表して競うイベント
- セキュリティの"ハッカー"とは無関係。混同しやすいが別の概念
- ディベートは賛成・反対に分かれて議論する形式
- ゲーミフィケーションは、ゲーム的要素のない分野にゲームの要素を取り入れて動機づける手法
- 名前が似ている用語ほど、"何が本質か"を一言で説明できるようにすると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和7年度 問9(ストラテジ系/技術戦略マネジメント)の解説です。