登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
合意したサービス提供時間帯のうち、実際に顧客が IT サービスを利用できた時間の割合で表されるものはどれか。
- ア可用性
- イ機能性
- ウ効率性
- エ使用性
第1幕:就活前の健康診断
就活で必要になる健康診断書をもらうため、美咲は近所の病院を訪れていた。付き添いという名目で、拓也も一緒に待合室にいる。
美咲
一人で来れるって言ったのに
拓也
暇だったから。それに、待ってる間、今日の記事のネタ出しできるし
美咲
効率厨ね、相変わらず
受付の電光掲示板には「本日の診療時間 9:00〜17:00」の表示。ちょうど、待合室のモニターが不具合で一時的に映らなくなり、看護師が慌てて対応しているのが見えた。
美咲
あれ、なんか調子悪そうね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいいかも
第2幕:使えるかどうかの話でしょ
拓也
今日の問題、これなんだけど
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『使用性』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"実際に利用できた時間の割合"って、要は"ちゃんと使えるかどうか"の話じゃない。だから、"使用性"かなって
拓也
その発想、すごく自然なんだけど、実は"使用性"は、また別の意味の言葉なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。"使用性(ユーザビリティ)"は、"使いやすいかどうか"を表す言葉。操作が直感的とか、迷わず使えるとか、そっちの意味なんだ
第3幕:開いてる時間と、実際に動いてる時間
拓也は、さっきの電光掲示板に目をやった。
拓也
たとえば、この病院。診療時間は9時から17時、って決まってるよね
美咲
うん
拓也
でも、さっきみたいにシステムが不具合を起こして、その間、受付とか会計の処理ができなかったとする。そしたら、"診療時間は9時から17時"って決まってても、実際にちゃんとサービスを受けられた時間は、それより短くなるよね
美咲
あ……! "開いてる時間"と、"ちゃんと動いてた時間"は、別ってことね
拓也
そのとおり。"合意した提供時間のうち、実際にサービスを利用できた時間の割合"を表す言葉が、可用性(アベイラビリティ)。正解はア
美咲
可用性……。使用性と字面も読み方も似てるから、余計にややこしいわね
拓也
うん、この2つはIT系の問題で本当によく混同される。"使えるかどうか(動いてるかどうか)"が可用性、"使いやすいかどうか"が使用性、って覚えると区別しやすいよ
第4幕:身長、見た目より
説明が終わったところで、看護師が美咲の名前を呼んだ。健康診断の一環で、身長測定の順番が回ってくる。
拓也
あ、俺、荷物持ってるから、先行ってきなよ
美咲が測定を終えて戻ってくると、拓也が何気なく画面に映った記録を覗き込んでいた。
拓也
へえ、身長、見た目より低いんだね
美咲の表情が、一瞬で固まった。
美咲
……は? どういう意味、それ
拓也
あ、いや、悪い意味じゃなくて、なんとなく想像してたより数字が……
美咲
それ、地雷なんだけど。高校の頃からずっと言われ続けてきたことなの、わかってて言ってる?
拓也
……ごめん。ほんとに、そんなつもりじゃなかった
美咲
別に、気にしてないフリしてるだけで、本当は結構気にしてるのよ、こういうの
拓也
配慮が足りなかった。悪気があったわけじゃないのは、信じてほしいけど……ごめん
美咲は、しばらく黙って拓也を睨んでいたが、やがて小さくため息をついた。
美咲
……もういいわ。次から、見た目とか数字とか、うかつに言わないでよね
拓也
肝に銘じます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気まずい空気のまま、それでも美咲は気を取り直してノートを開いた。
美咲
……気を取り直して。残りのイとウも教えて
拓也
イの『機能性』は、システムが必要な機能をちゃんと備えているかを表す言葉。今日の問題みたいな"稼働時間の割合"の話とは、また別の観点なんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『効率性』は、限られた資源(時間やコストなど)に対して、どれだけの成果を出せるかを表す言葉。処理速度が速いとか、無駄なく動くとか、そっちの意味
美咲
可用性は"動いてる時間の割合"、機能性は"機能の充実度"、効率性は"資源に対する成果"、使用性は"使いやすさ"。……4つとも、似たような場面で使われそうなのに、指してるものが全然違うのね
拓也
そのとおり。ITサービスの品質を測る観点は、いくつも種類があるから、"何を測ってるか"を一つずつ整理することが大事なんだ
問題文(再掲)
合意したサービス提供時間帯のうち、実際に顧客が IT サービスを利用できた時間の割合で表されるものはどれか。
- ア可用性
- イ機能性
- ウ効率性
- エ使用性
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 可用性(合意した時間のうち、実際に利用できた時間の割合) | 正解 |
| イ | 機能性(必要な機能を備えているか) | 不正解 |
| ウ | 効率性(資源に対する成果) | 不正解 |
| エ | 使用性(使いやすさ) | 不正解 |
答えア 可用性
覚え方のコツ
「動いてるか」は可用性、「使いやすいか」は使用性。
- 可用性=合意したサービス提供時間のうち、実際に利用できた時間の割合
- 使用性は"使いやすさ"の話で、可用性とは意味が違う(字面が似ていて混同しやすい)
- 機能性は"機能の充実度"、効率性は"資源に対する成果"。それぞれ測っている観点が異なる
エピローグ
会計を終えて、病院を出たところで、美咲がぽつりと言った。
美咲
……さっきは、まあ、許してあげる
拓也
ありがとう。ほんとに、気をつける
美咲
あんた、変なところで無神経よね。……でも
拓也
でも?
美咲
呼べば、ちゃんと来てくれるし。付き添いも、面倒くさがらずについてきてくれるし。……あんた、可用性だけは100%ね
拓也
それ、褒めてる?
美咲
さあ、どうかしら
そう言って、美咲は少し口角を上げた。
拓也(……可用性100%、か。悪くない褒め言葉だ)
美咲
なによ、にやにやして。気持ち悪い
拓也
いや、なんでもない
夏の午後の日差しの中、二人は並んで駅のほうへ歩き出した。
今日のポイントおさらい
- 可用性=合意したサービス提供時間のうち、実際に利用できた時間の割合
- 使用性は「使いやすさ」を表す言葉で、可用性とは意味が異なる(字面が似ていて混同注意)
- 機能性は「機能の充実度」、効率性は「資源に対する成果」を表す
- ITサービスの品質は、複数の観点で測られており、"何を測っているか"を区別することが大事
- 似た読み方・字面の用語ほど、定義そのものに立ち返って確認すると混同を防げる
この記事はITパスポート試験 令和7年度 問36(マネジメント系/サービスマネジメント)の解説です。