登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
クラウドコンピューティングの説明として、最も適切なものはどれか。
- アシステム全体を管理する大型汎用機などのコンピュータに、データを一極集中させて処理すること
- イ情報システム部門以外の人が自らコンピュータを操作し、自分や自部門の業務に役立てること
- ウソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること
- エネットワークを介して、複数台のコンピュータに処理を分散させ、処理結果を共有すること
第1幕:電源とWi-Fiを間借りして
いつものカフェ。電源のある席を確保して、二人はノートパソコンを開いていた。
美咲
このお店、電源もWi-Fiも自由に使わせてくれるから、ほんと助かるわよね
拓也
うん。自前で用意しなくても、来れば使える環境がある、っていうのがありがたいよね
美咲
それ、今日の記事の話に繋がりそう?
拓也
するどいね。今日の問題、まさにそれに近い話
第2幕:どこかの大きいPCに集めてるんでしょ
美咲
じゃあ答えるわね。これアでしょ。『大型汎用機にデータを一極集中させて処理する』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"クラウド"って、なんかどこか遠くの大きいコンピュータに、みんなのデータを全部集めて処理してる、みたいなイメージだったから
拓也
その発想、すごくよくある勘違いなんだ。でも実は"どこか一箇所にデータを集中させる"のと、クラウドコンピューティングは、考え方が違うんだよ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。アの説明は、大型汎用機(メインフレーム)に処理を集中させる、昔ながらの集中処理のこと。クラウドコンピューティングは、それとは"リソースの借り方"の発想が根本的に違うんだ
第3幕:必要なときに、必要な分だけ
拓也は、テーブルの上のコンセントを指さした。
拓也
たとえば、このお店の電源。俺たち、この電源を自分の持ち物として買ったわけじゃないよね。"必要なときに、必要な分だけ"間借りしてるだけ
美咲
うん、そうね
拓也
クラウドコンピューティングも、まさにこの考え方なんだ。サーバーとかソフトウェアを自分で買って用意するんじゃなくて、インターネット経由で、必要なときに必要な分だけ、オンデマンドで利用する
美咲
あ……! "どこかに集める"んじゃなくて、"必要なときだけ借りる"って発想なのね
拓也
そのとおり。"ソフトウェアやハードウェアなどのリソースを、ネットワーク経由でオンデマンドにスケーラブルに利用すること"が、クラウドコンピューティングの定義。正解はウ
美咲
スケーラブルって?
拓也
"必要に応じて、利用する規模を柔軟に増減できる"って意味。アクセスが増えたら多めに借りて、落ち着いたら減らす、みたいなことが簡単にできるんだ
美咲
なるほどね……。私、"クラウド"って響きだけで、なんとなく"空のどこかにある大きい倉庫"みたいなイメージ持ってたけど、全然違ったわ
第4幕:他人の会話に横から口を挟む
隣の席で、スーツ姿の会社員二人が、なにやら議論をしていた。一人が「うちも、そろそろオンプレミスからクラウド移行、検討したほうがいいんじゃないですか」と言うと、もう一人が「そうなんだよね、でもコスト面がちょっと……」と困った顔をする。
拓也
あ、それなら、初期費用を抑えられるのがクラウドの利点なので、むしろ長期的には……
突然会話に割り込まれ、隣の会社員二人が、驚いた顔で拓也を見る。
美咲
……ちょっと、あんた、何してるのよ!
拓也
あ……すみません、つい
美咲
すみません、うちの連れが失礼しました
隣の会社員たちに頭を下げ、美咲は拓也の袖を引っ張った。
美咲
知らない人の会話に、勝手に入っていかないでよ! 恥ずかしいったらないわ
拓也
詳しい話だったから、つい反応しちゃって……
美咲
詳しくても、割り込んでいい理由にはならないの。次からは、黙って聞いてなさい
拓也
……はい、以後気をつけます
しばらく、美咲は拓也の顔を見ようとしなかった。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気まずい空気のまま、それでも美咲は気を取り直してノートを開いた。
美咲
……気を取り直して。残りのイとエも教えて
拓也
イは、エンドユーザーコンピューティング(EUC)の説明。情報システム部門以外の一般社員が、自分でパソコンを操作して業務に活用すること。クラウドとは別の概念なんだ
美咲
エは?
拓也
エは、分散処理の説明。複数台のコンピュータに処理を分けて、結果を共有する仕組み。クラウドの裏側で分散処理の技術が使われることもあるけど、"分散処理そのもの"とクラウドコンピューティングの定義は、イコールじゃないんだ
美咲
一極集中処理、現場でのPC活用、オンデマンド利用、分散処理。……全部、コンピュータの使い方や仕組みの話だけど、指してる範囲が違うのね
拓也
そのとおり。"クラウド"って言葉が独り歩きしがちだけど、定義に立ち返ると、"オンデマンドでスケーラブルに利用する"のがポイントなんだ
問題文(再掲)
クラウドコンピューティングの説明として、最も適切なものはどれか。
- アシステム全体を管理する大型汎用機などのコンピュータに、データを一極集中させて処理すること
- イ情報システム部門以外の人が自らコンピュータを操作し、自分や自部門の業務に役立てること
- ウソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること
- エネットワークを介して、複数台のコンピュータに処理を分散させ、処理結果を共有すること
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 大型汎用機にデータを一極集中させて処理する | 不正解(集中処理) |
| イ | 情報システム部門以外の人が自らPCを活用する | 不正解(EUC) |
| ウ | リソースをネットワーク経由でオンデマンド・スケーラブルに利用する | 正解 |
| エ | 複数台のコンピュータに処理を分散させる | 不正解(分散処理) |
答えウ ソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること
覚え方のコツ
クラウドは、"集める"んじゃなくて"必要な分だけ借りる"。
- クラウドコンピューティング=リソースをネットワーク経由でオンデマンド・スケーラブルに利用すること
- 大型汎用機への一極集中は「集中処理」、複数台への分担は「分散処理」で、どちらもクラウドの定義そのものではない
- EUC(エンドユーザーコンピューティング)は、一般社員が自らPCを業務活用することで、また別の概念
エピローグ
会計を済ませて店を出たところで、拓也が改めて頭を下げた。
拓也
さっきは、ほんとにごめん。恥ずかしい思いさせた
美咲
……もういいわよ。反省してるならいい
美咲
でも、あんたのそういう"つい喋っちゃう"癖、直したほうがいいと思うわよ、これからのためにも
拓也
肝に銘じます
美咲
まあ、詳しいのは知ってるけどね。……その詳しさ、私にだけ、必要なときに、必要な分だけ貸してくれれば十分だから
拓也
それ、なんか今日の問題の答えみたいな言い方だね
美咲
そうよ、狙って言ったの
美咲が、少しいたずらっぽく笑う。
拓也(……オンデマンドで、必要なだけ。悪くない関係だな)
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない
夕方のカフェ通りを、二人は並んで歩いていった。
今日のポイントおさらい
- クラウドコンピューティング=リソースをネットワーク経由でオンデマンド・スケーラブルに利用すること
- 大型汎用機への一極集中は「集中処理」で、クラウドの定義とは異なる
- 複数台のコンピュータへの処理分担は「分散処理」で、これも別の概念
- EUC(エンドユーザーコンピューティング)は、一般社員が自らPCを業務活用すること
- "クラウド"という言葉のイメージに頼らず、定義そのもの(オンデマンド・スケーラブル)に立ち返って判断する
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問5(ストラテジ系/システム戦略)の解説です。