← 一覧に戻る

【第42話】どこかの大きいPCでしょ|ITパスポート 令和3年度 問5

~ツンデレ女子大生と東大パソコンオタクの、ちょっと不器用な勉強会~

第42話|第2部 場所:カフェ

登場人物

美咲

美咲(みさき)

女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。

拓也

拓也(たくや)

美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。

カフェ

今日の問題

今日の問題

クラウドコンピューティングの説明として、最も適切なものはどれか。

  • システム全体を管理する大型汎用機などのコンピュータに、データを一極集中させて処理すること
  • 情報システム部門以外の人が自らコンピュータを操作し、自分や自部門の業務に役立てること
  • ソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること
  • ネットワークを介して、複数台のコンピュータに処理を分散させ、処理結果を共有すること

第1幕:電源とWi-Fiを間借りして

いつものカフェ。電源のある席を確保して、二人はノートパソコンを開いていた。

美咲

美咲

このお店、電源もWi-Fiも自由に使わせてくれるから、ほんと助かるわよね

拓也

拓也

うん。自前で用意しなくても、来れば使える環境がある、っていうのがありがたいよね

美咲

美咲

それ、今日の記事の話に繋がりそう?

拓也

拓也

するどいね。今日の問題、まさにそれに近い話

第2幕:どこかの大きいPCに集めてるんでしょ

美咲

美咲

じゃあ答えるわね。これでしょ。『大型汎用機にデータを一極集中させて処理する』

拓也

拓也

お、なんでそう思った?

美咲

美咲

だって、"クラウド"って、なんかどこか遠くの大きいコンピュータに、みんなのデータを全部集めて処理してる、みたいなイメージだったから

拓也

拓也

その発想、すごくよくある勘違いなんだ。でも実は"どこか一箇所にデータを集中させる"のと、クラウドコンピューティングは、考え方が違うんだよ

美咲

美咲

え、違うの?

拓也

拓也

うん。アの説明は、大型汎用機(メインフレーム)に処理を集中させる、昔ながらの集中処理のこと。クラウドコンピューティングは、それとは"リソースの借り方"の発想が根本的に違うんだ

第3幕:必要なときに、必要な分だけ

拓也は、テーブルの上のコンセントを指さした。

拓也

拓也

たとえば、このお店の電源。俺たち、この電源を自分の持ち物として買ったわけじゃないよね。"必要なときに、必要な分だけ"間借りしてるだけ

美咲

美咲

うん、そうね

拓也

拓也

クラウドコンピューティングも、まさにこの考え方なんだ。サーバーとかソフトウェアを自分で買って用意するんじゃなくて、インターネット経由で、必要なときに必要な分だけ、オンデマンドで利用する

美咲

美咲

あ……!  "どこかに集める"んじゃなくて、"必要なときだけ借りる"って発想なのね

拓也

拓也

そのとおり"ソフトウェアやハードウェアなどのリソースを、ネットワーク経由でオンデマンドにスケーラブルに利用すること"が、クラウドコンピューティングの定義正解はウ

美咲

美咲

スケーラブルって?

拓也

拓也

"必要に応じて、利用する規模を柔軟に増減できる"って意味。アクセスが増えたら多めに借りて、落ち着いたら減らす、みたいなことが簡単にできるんだ

美咲

美咲

なるほどね……。私、"クラウド"って響きだけで、なんとなく"空のどこかにある大きい倉庫"みたいなイメージ持ってたけど、全然違ったわ

第4幕:他人の会話に横から口を挟む

隣の席で、スーツ姿の会社員二人が、なにやら議論をしていた。一人が「うちも、そろそろオンプレミスからクラウド移行、検討したほうがいいんじゃないですか」と言うと、もう一人が「そうなんだよね、でもコスト面がちょっと……」と困った顔をする。

拓也

拓也

あ、それなら、初期費用を抑えられるのがクラウドの利点なので、むしろ長期的には……

突然会話に割り込まれ、隣の会社員二人が、驚いた顔で拓也を見る。

美咲

美咲

……ちょっと、あんた、何してるのよ!

拓也

拓也

あ……すみません、つい

美咲

美咲

すみません、うちの連れが失礼しました

隣の会社員たちに頭を下げ、美咲は拓也の袖を引っ張った。

美咲

美咲

知らない人の会話に、勝手に入っていかないでよ!  恥ずかしいったらないわ

拓也

拓也

詳しい話だったから、つい反応しちゃって……

美咲

美咲

詳しくても、割り込んでいい理由にはならないの。次からは、黙って聞いてなさい

拓也

拓也

……はい、以後気をつけます

しばらく、美咲は拓也の顔を見ようとしなかった。

第5幕:残りの選択肢を片付ける

気まずい空気のまま、それでも美咲は気を取り直してノートを開いた。

美咲

美咲

……気を取り直して。残りのも教えて

拓也

拓也

イは、エンドユーザーコンピューティング(EUC)の説明。情報システム部門以外の一般社員が、自分でパソコンを操作して業務に活用すること。クラウドとは別の概念なんだ

美咲

美咲

エは?

拓也

拓也

エは、分散処理の説明。複数台のコンピュータに処理を分けて、結果を共有する仕組み。クラウドの裏側で分散処理の技術が使われることもあるけど、"分散処理そのもの"とクラウドコンピューティングの定義は、イコールじゃないんだ

美咲

美咲

一極集中処理、現場でのPC活用、オンデマンド利用、分散処理。……全部、コンピュータの使い方や仕組みの話だけど、指してる範囲が違うのね

拓也

拓也

そのとおり。"クラウド"って言葉が独り歩きしがちだけど、定義に立ち返ると、"オンデマンドでスケーラブルに利用する"のがポイントなんだ

問題文(再掲)

クラウドコンピューティングの説明として、最も適切なものはどれか。

  • システム全体を管理する大型汎用機などのコンピュータに、データを一極集中させて処理すること
  • 情報システム部門以外の人が自らコンピュータを操作し、自分や自部門の業務に役立てること
  • ソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること
  • ネットワークを介して、複数台のコンピュータに処理を分散させ、処理結果を共有すること

まとめ:選択肢ごとの答え合わせ

選択肢内容正誤
大型汎用機にデータを一極集中させて処理する不正解(集中処理)
情報システム部門以外の人が自らPCを活用する不正解(EUC)
リソースをネットワーク経由でオンデマンド・スケーラブルに利用する正解
複数台のコンピュータに処理を分散させる不正解(分散処理)

答えウ ソフトウェアやハードウェアなどの各種リソースを、インターネットなどのネットワークを経由して、オンデマンドでスケーラブルに利用すること

覚え方のコツ

クラウドは、"集める"んじゃなくて"必要な分だけ借りる"。

エピローグ

会計を済ませて店を出たところで、拓也が改めて頭を下げた。

拓也

拓也

さっきは、ほんとにごめん。恥ずかしい思いさせた

美咲

美咲

……もういいわよ。反省してるならいい

美咲

美咲

でも、あんたのそういう"つい喋っちゃう"癖、直したほうがいいと思うわよ、これからのためにも

拓也

拓也

肝に銘じます

美咲

美咲

まあ、詳しいのは知ってるけどね。……その詳しさ、私にだけ、必要なときに、必要な分だけ貸してくれれば十分だから

拓也

拓也

それ、なんか今日の問題の答えみたいな言い方だね

美咲

美咲

そうよ、狙って言ったの

美咲が、少しいたずらっぽく笑う。

拓也(……オンデマンドで、必要なだけ。悪くない関係だな)

美咲

美咲

なに黙ってるのよ

拓也

拓也

いや、なんでもない

夕方のカフェ通りを、二人は並んで歩いていった。

今日のポイントおさらい

  1. クラウドコンピューティング=リソースをネットワーク経由でオンデマンド・スケーラブルに利用すること
  2. 大型汎用機への一極集中は「集中処理」で、クラウドの定義とは異なる
  3. 複数台のコンピュータへの処理分担は「分散処理」で、これも別の概念
  4. EUC(エンドユーザーコンピューティング)は、一般社員が自らPCを業務活用すること
  5. "クラウド"という言葉のイメージに頼らず、定義そのもの(オンデマンド・スケーラブル)に立ち返って判断する

この記事はITパスポート試験 令和3年度 問5(ストラテジ系/システム戦略)の解説です。

← 一覧に戻る