登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
GPSの電波を捕捉しにくいビルの谷間や狭い路地などでも位置を計測することができるように、特定の地域の上空に比較的長く留まる軌道をとり、GPSと併用することによって、より高い測位精度を実現するものはどれか。
- アアシスト GPS
- イジャイロセンサー
- ウ準天頂衛星
- エプローブカー
第1幕:圏外の山道で
日帰りで登れる近郊の低山。9月の空気は、麓よりだいぶ涼しい。中腹を過ぎたあたりで、美咲がスマホの画面を見て声を上げた。
美咲
あ、圏外になってる
拓也
このあたり、電波塔から離れてるから、たまにこうなるんだよね
美咲
電話もLINEも使えないの、なんか久しぶりで新鮮ね
拓也
でも、地図アプリのほうは、ちゃんと現在地表示できてるでしょ
美咲
あ、ほんとだ。圏外なのに、なんで位置だけわかるの?
拓也
それ、今日の記事にちょうどいい話題だ
第2幕:GPSを補助するやつでしょ
道端の岩に腰掛けて、拓也はノートパソコンを開いた。
美咲
じゃあ答えるわね。これアでしょ。『アシストGPS』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"GPSと併用して精度を上げる"っていうくらいだから、名前からして"GPSを補助する"って意味の"アシストGPS"が一番それっぽいじゃない
拓也
発想はすごく自然なんだけど、実は"アシストGPS"は、また別の仕組みなんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。アシストGPSは、携帯電話回線などのネットワークを使って、GPSが位置を割り出すまでの時間を短くする技術。今日の問題が聞いてるのは、"ビルの谷間や狭い路地でも測位できるようにする"仕組みの話なんだ
第3幕:ビルの谷間にも差し込む、特別な軌道
拓也は、周りを囲む木々の隙間から見える空を指さした。
拓也
たとえば、太陽の光。ビルの谷間だと、真上近くまで太陽が昇った時間帯しか、光が差し込んでこないよね
美咲
うん、都会のビル街とか、そうよね
拓也
今日の問題の答えも、それと似た発想なんだ。"特定の地域の上空に、比較的長く留まる軌道"をとる衛星を使えば、ビルの谷間みたいに電波が届きにくい場所でも、真上近くから電波を届けやすくなる
美咲
あ……! 太陽が真上に来る時間だけ谷間にも光が届くのと同じで、衛星が真上あたりに長くいてくれれば、電波も届きやすくなるってことね
拓也
そのとおり。この"準天頂"の軌道をとる衛星のことを、準天頂衛星って呼ぶんだ。正解はウ。日本上空に長く留まるように設計されていて、GPSと併用することで、通常のGPSだけより高い測位精度を実現できる
美咲
なるほどね……。この山の中で圏外でも位置がわかったのは、電話の電波じゃなくて、衛星からの電波で位置を測ってたからなのね
第4幕:景色に気を取られて
説明の途中、拓也はふと視線を上げ、木々の間から見える谷の景色に目を奪われた。
拓也
うわ、この景色、すごいな。ちょっと写真撮らせて
拓也はスマホを構え、夢中でシャッターを切り始める。
美咲
……ちょっと、あんた、道
拓也
あ、うん、ちょっと待って、あと1枚
美咲
そうじゃなくて、分岐点、通り過ぎてるわよ。さっきの案内板、右方向だったでしょ
拓也が我に返って周りを見ると、いつの間にか分かれ道を直進しかけていた。
拓也
……あ、ほんとだ。ごめん、気づかなかった
美咲
景色に夢中になるのはいいけど、山で道間違えるの、洒落にならないんだから。ちゃんと前見て歩きなさいよね
拓也
面目ない。以後、気をつける
美咲
まったく……。案内役のつもりで、道迷わせないでよ
二人は、正しい分岐まで少し戻り、改めて歩き出した。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
休憩がてら、美咲がノートを開き直す。
美咲
……気を取り直して。残りのイとエも教えて
拓也
イのジャイロセンサーは、機器の傾きや回転を検出するセンサー。スマホの画面が向きに合わせて回転したりするのに使われてる。GPSの電波の届きにくさを補う話とは、また別の仕組みなんだ
美咲
エは?
拓也
エのプローブカーは、走行中の車が位置情報や速度データを収集し、それを渋滞情報などに活用する仕組み。カーナビの渋滞情報なんかで使われてる。これも、測位精度そのものを上げる話ではないんだ
美咲
アシストGPSは測位を速くする、ジャイロセンサーは傾きの検出、プローブカーは走行データの活用、準天頂衛星は電波の死角を補う。……全部"位置情報"に関わる言葉だけど、役割はバラバラなのね
拓也
完璧な整理。"位置がわかる"系の技術は種類が多いから、"何のためにある技術か"を一つずつ分けて覚えると、迷わなくなるよ
問題文(再掲)
GPSの電波を捕捉しにくいビルの谷間や狭い路地などでも位置を計測することができるように、特定の地域の上空に比較的長く留まる軌道をとり、GPSと併用することによって、より高い測位精度を実現するものはどれか。
- アアシスト GPS
- イジャイロセンサー
- ウ準天頂衛星
- エプローブカー
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | アシストGPS(測位までの時間短縮) | 不正解 |
| イ | ジャイロセンサー(傾き・回転の検出) | 不正解 |
| ウ | 準天頂衛星(特定地域の上空に長く留まり、電波の死角を補う) | 正解 |
| エ | プローブカー(走行データの収集・活用) | 不正解 |
答えウ 準天頂衛星
覚え方のコツ
ビルの谷間に差し込む太陽と同じ。真上近くに長く留まれば、電波も届きやすい。
- 準天頂衛星=特定の地域の上空に比較的長く留まる軌道をとり、GPSと併用して測位精度を高める衛星
- アシストGPSは測位までの時間短縮、ジャイロセンサーは傾き検出、プローブカーは走行データ活用。それぞれ別の技術
- "位置がわかる"系の技術は、それぞれ何を解決するための仕組みかで区別する
エピローグ
山頂に近づくころには、再び電波が戻り、美咲のスマホに通知がまとめて届いた。
美咲
圏外って、たまにはいいものね。誰にも連絡取れないって思うと、逆に落ち着く時間があったっていうか
拓也
わかる。俺も、電波なくても位置だけは把握できてる、っていうの、なんか安心感あった
美咲
まあ、道に迷いかけた人が言っても、説得力ないけどね
拓也
それを言われると、返す言葉もない
美咲が、くすっと笑う。
美咲
でも、まあ……ちゃんと隣に居てくれれば、多少道に迷っても、なんとかなる気はするけどね
拓也
それ、信頼されてるってこと?
美咲
さあ、どうかしら
山頂からの景色を背に、二人はしばらく並んで立っていた。
今日のポイントおさらい
- 準天頂衛星=特定地域の上空に長く留まる軌道をとり、GPSと併用して測位精度を高める衛星
- アシストGPSは、ネットワークを使って測位までの時間を短くする技術
- ジャイロセンサーは傾き・回転の検出、プローブカーは走行データの収集・活用を行う技術
- 携帯電話の電波(通信)とGPS・準天頂衛星の電波(測位)は、別の仕組みで動いている
- "位置がわかる"系の技術は、それぞれが解決する課題で区別すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問99(テクノロジ系/コンピュータ構成要素)の解説です。