登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
暗号資産に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア暗号資産交換業の登録業者であっても、利用者の情報管理が不適切なケースがあるので、登録が無くても信頼できる業者を選ぶ。
- イ暗号資産の価格変動には制限が設けられているので、価格が急落したり、突然無価値になるリスクは考えなくてよい。
- ウ暗号資産の利用者は、暗号資産交換業者から契約の内容などの説明を受け、取引内容やリスク、手数料などについて把握しておくとよい。
- エ金融庁や財務局などの官公署は、安全性が優れた暗号資産の情報提供を行っているので、官公署の職員から勧められた暗号資産を主に取引する。
第1幕:祖母からの電話
久しぶりに、二人で祖父母の家を訪れていた。縁側でお茶を飲んでいると、祖母がふと思い出したように「そういえば、こないだ変な電話がかかってきたのよ。『財務局の者ですが』って名乗って、『安全な暗号資産があるので、ぜひ』って」と切り出した。
美咲
え、それ、絶対怪しいやつじゃない
祖母は「怪しいと思ったから、話は聞かずに切ったんだけどね。念のため、あんたたちにも聞いておこうと思って」と、少し笑いながら言う。
拓也
それ、今日勉強しようと思ってた問題と、まさに同じ話です
第2幕:値動きに制限があるから平気でしょ
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『価格変動には制限があるから、暴落のリスクは考えなくていい』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
株とかって、1日の値動きに制限があるって聞いたことあるから、暗号資産も同じようなルールがあるのかなって
拓也
その発想、株式市場のイメージが混じってるんだと思う。でも実は"暗号資産には、そういう価格変動の制限は基本的にない"んだ
美咲
え、そうなの?
拓也
うん。暗号資産は、株のような値幅制限がなく、短期間で価格が急落したり、最悪の場合は無価値になるリスクもある。"制限があるから安心"どころか、むしろリスクをちゃんと理解しておく必要がある金融商品なんだ
第3幕:契約の説明を受けてから、印鑑を押す
拓也は、縁側に置かれた祖父母の家の権利書らしき書類の入った箱を、ちらりと見た。
拓也
たとえば、家や土地の契約を結ぶときって、いきなり印鑑を押したりしないよね。ちゃんと契約内容の説明を受けて、リスクとか費用を理解してから、判子を押す
祖母が「そうねえ、若い頃、よく言われたわ。"説明されてないことには印鑑を押すな"って」と相槌を打つ。
拓也
暗号資産の取引も、それと同じ考え方が大事なんだ。利用者は、暗号資産交換業者から契約内容の説明を受けて、取引内容やリスク、手数料などをちゃんと把握しておくべき
美咲
あ……! "制限があるから安心"じゃなくて、"リスクを理解した上で取引する"のが正しい心構えなのね
拓也
そのとおり。正解はウ。暗号資産に限らず、金融商品全般に言えることだけど、"よくわからないまま契約しない"のが基本なんだ
第4幕:高齢者扱いしすぎて
拓也は、祖母に向き直り、ゆっくりと大きな声で話し始めた。
拓也
おばあちゃーん、あのですね、暗号資産っていうのはですねー、インターネットの中だけにあるお金みたいなものでですね……
祖母が、少し苦笑しながら「……拓也くん、そんなにゆっくり話さなくても、聞こえてるし、わかるわよ」と返す。
美咲
ちょっと、あんた、なんでそんな子供に言い聞かせるみたいな喋り方してるのよ
拓也
あ……いえ、その、わかりやすく伝えようと思って
祖母は「気持ちはありがたいけど、ちょっと失礼よ、それ」と、やんわり窘めた。
美咲
おばあちゃん、普通にしっかりしてるんだから、変に子ども扱いしないでよね
拓也
……すみません、配慮が的外れでした
祖母は「ふふ、いいのよ。若い人がそうやって気にかけてくれるだけで、十分ありがたいわ」と笑って許してくれた。拓也は、恐縮しながら、いつもの調子で話し方を戻した。
第5幕:官公署を名乗る勧誘には、要注意
気を取り直して、拓也は残りの選択肢を説明する。
拓也
アは、"登録業者でも情報管理が不適切なことがあるから、登録が無くても信頼できる業者を選ぶ"としてるけど、これは危険な考え方。登録の有無は、最低限のチェックポイント。登録が無い業者を選ぶ積極的な理由にはならないんだ
美咲
じゃあ、エは?
拓也
エが、まさにおばあちゃんにかかってきた電話と同じパターン。"官公署が特定の暗号資産を勧めている"という触れ込みは、典型的な詐欺の手口。金融庁や財務局が、特定の商品を"これがおすすめです"と勧めることは、基本的にないんだ
祖母が「あら、やっぱりそうだったのね」と、納得したようにうなずく。
拓也
はい。官公署の名前を使って信用させようとする勧誘は、まず疑ったほうがいいです
美咲
未登録業者でもいいわけじゃない、価格変動に制限はない、官公署は特定の商品を勧めない、そして契約内容をちゃんと理解してから取引する。……全部、"うまい話には裏がある"ってことね
拓也
そのとおり。今日の問題、単なる試験知識じゃなくて、実生活でも本当に役立つ話なんだ
問題文(再掲)
暗号資産に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア暗号資産交換業の登録業者であっても、利用者の情報管理が不適切なケースがあるので、登録が無くても信頼できる業者を選ぶ。
- イ暗号資産の価格変動には制限が設けられているので、価格が急落したり、突然無価値になるリスクは考えなくてよい。
- ウ暗号資産の利用者は、暗号資産交換業者から契約の内容などの説明を受け、取引内容やリスク、手数料などについて把握しておくとよい。
- エ金融庁や財務局などの官公署は、安全性が優れた暗号資産の情報提供を行っているので、官公署の職員から勧められた暗号資産を主に取引する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 登録が無くても信頼できる業者を選ぶ | 不正解(登録の有無は重要な判断材料) |
| イ | 価格変動に制限があるので暴落リスクを考えなくてよい | 不正解(制限はなく暴落リスクがある) |
| ウ | 契約内容の説明を受け、リスクや手数料を把握しておく | 正解 |
| エ | 官公署から勧められた暗号資産を主に取引する | 不正解(官公署が特定商品を勧めることはない・詐欺の典型パターン) |
答えウ 暗号資産の利用者は、暗号資産交換業者から契約の内容などの説明を受け、取引内容やリスク、手数料などについて把握しておくとよい
覚え方のコツ
説明されてないことには、印鑑を押さない。
- 暗号資産の利用者は、契約内容の説明を受け、リスクや手数料を把握してから取引するのが基本
- 暗号資産に株のような価格変動の制限はなく、暴落や無価値化のリスクがある
- 「官公署が勧めている」という勧誘は、典型的な詐欺の手口。官公署が特定の金融商品を推奨することは基本的にない
エピローグ
夕方、庭先で祖母を交えて三人でお茶を飲んでいた。
祖母が「今日は、いい話が聞けたわ。ありがとうね、拓也くん」と、しみじみと言う。
拓也
いえ、こちらこそ、いい実例をいただきました
祖母は美咲のほうを見て、「美咲も、ちゃんと拓也くんに教わって、頼りにしてるのね」と、いたずらっぽく笑った。
美咲
な、なによ、急に
祖母が「いい人を見つけたじゃない」と続けると、美咲は真っ赤になって声を上げた。
美咲
べ、別に、そういうんじゃないから!
拓也(……おばあちゃん、鋭いな)
美咲
な、なに一人でにやにやしてるのよ
拓也
いや、なんでもない
秋の気配が少しずつ濃くなる庭先で、三人の笑い声が、しばらく響いていた。
今日のポイントおさらい
- 暗号資産の利用者は、契約内容の説明を受け、リスクや手数料を把握しておくことが大切
- 暗号資産に株のような値幅制限はなく、価格急落や無価値化のリスクがある
- 業者の登録の有無は重要な判断材料であり、無登録業者を積極的に選ぶ理由にはならない
- 「官公署が勧めている」という勧誘文句は、典型的な詐欺の手口。実際に官公署が特定商品を推奨することはない
- 「うまい話」に出会ったときほど、契約内容とリスクを冷静に確認することが自分を守る第一歩になる
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問25(ストラテジ系/産業と業種)の解説です。