登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
ITサービスマネジメントにおいて、サービスデスクが受けけた難度の高いインシデントを解決するために、サービスデスクの担当者が専門技術をもつ二次サポートに解決を委ねることはどれか。
- アFAQ的な文書
- イSLA
- ウエスカレーション
- エワークアラウンド
第1幕:注文タブレットの不調
いつものファミレス。席に着いてすぐ、注文用のタブレットの反応がおかしいことに気づく。
美咲
あれ、これ画面固まってない?
拓也
あ、ほんとだ。……ちょっと待って、俺が直してみる
美咲
店員さん呼べばいいんじゃないの?
拓也
いや、これくらい、自分でなんとかなる気がする
美咲は、少し呆れた顔でその様子を眺めていた。
第2幕:とりあえずの対処をすることでしょ
タブレットをつつきながら、拓也は今日の問題をノートに広げた。
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『ワークアラウンド』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"難しい問題を、専門の人に任せる"って、結局は"その場をしのぐための対処"って感じがするから、ワークアラウンドっぽいなって
拓也
発想は近いんだけど、実は"誰かに任せること"と"とりあえずの対処をすること"は、別の行動なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。ワークアラウンドは、根本的な原因を解決しないまま、"とりあえず動くようにする一時しのぎの対処"のこと。今日の問題が聞いてるのは、"自分の手に負えない問題を、専門知識を持つ人に引き継ぐこと"なんだ
第3幕:店長に取り次ぐのと同じ
拓也は、ようやくタブレットをテーブルに置いて、店内を見回した。
拓也
たとえば、このお店で、フロアのスタッフさんじゃ対応できないような複雑なクレームが来たとするよね
美咲
うん
拓也
そういうとき、フロアの人はどうすると思う?
美咲
店長とか、責任者を呼んでくるんじゃない?
拓也
まさにそれ。自分の手に負えない問題を、より専門知識を持つ人に引き継ぐこと。これがエスカレーションなんだ。サービスデスクの担当者が、難しいインシデントを二次サポートに委ねるのも、同じ考え方
美咲
あ……! "とりあえず自分でなんとかする"んじゃなくて、"できる人にちゃんと繋ぐ"のがエスカレーションなのね
拓也
そのとおり。正解はウ。ワークアラウンドが"一時しのぎの対処"なのに対して、エスカレーションは"適切な人に引き継ぐこと"なんだ
第4幕:意地になって、直らない
美咲
……で、結局、タブレットは直ったの?
拓也
いや、まだ
拓也
……いや、自分で直せる。もうちょっとだから
美咲
さっきから同じところ何度も触ってるじゃない。それ、店員さん呼びなさいよ
拓也
いや、あと少しで再起動できそうな……
美咲
意地張ってないで、さっさとエスカレーションしなさいよ、自分の話じゃない
拓也は、思わず手を止めた。
拓也
……それ、今の状況にちょうどいい言葉のチョイスだな
美咲
でしょ。自分で言ってて気づかなかったの?
拓也
面目ない……。すみません、お店の人呼びます
結局、店員を呼ぶと、裏でシステムを再起動してもらい、ものの1分でタブレットは元通りになった。
美咲
ほら、最初からそうすればよかったのよ
第5幕:残りの選択肢を片付ける
タブレットが直ったところで、気を取り直して美咲がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとイも教えて
拓也
アは、よくある質問と回答をまとめた文書のこと。利用者が自分で調べて解決するための資料であって、"誰かに委ねる"話とは違うんだ
美咲
イの『SLA』は?
拓也
SLAは、以前も出てきたサービスレベル合意書。提供するサービスの品質水準を取り決めた文書のことで、これも"引き継ぎ先"の話ではないんだ
美咲
FAQ的な文書は自分で調べる資料、SLAは品質の合意書、ワークアラウンドは一時しのぎ、エスカレーションは適切な人への引き継ぎ。……全部別の行動なのね
拓也
完璧な整理。今日みたいに、"自分で頑張りすぎず、任せるべき人に任せる"のも、立派なスキルの一つなんだよ
美咲
それ、さっきの自分に言い聞かせなさいよね
問題文(再掲)
ITサービスマネジメントにおいて、サービスデスクが受けけた難度の高いインシデントを解決するために、サービスデスクの担当者が専門技術をもつ二次サポートに解決を委ねることはどれか。
- アFAQ的な文書
- イSLA
- ウエスカレーション
- エワークアラウンド
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | よくある質問と回答をまとめた文書 | 不正解 |
| イ | サービスレベル合意書(SLA) | 不正解 |
| ウ | 専門技術をもつ二次サポートに解決を委ねる(エスカレーション) | 正解 |
| エ | 一時しのぎの対処(ワークアラウンド) | 不正解 |
答えウ エスカレーション
覚え方のコツ
一人で抱えず、できる人に繋ぐ。それがエスカレーション。
- エスカレーション=自分の手に負えない問題を、専門知識を持つ二次サポートに引き継ぐこと
- ワークアラウンドは、根本解決せずにとりあえず動くようにする一時しのぎの対処
- FAQ的な文書は自己解決用の資料、SLAは品質の合意書。どちらも"引き継ぎ"とは別の概念
エピローグ
食事を終え、店を出る頃には、日もすっかり暮れていた。
美咲
あんた、頭はいいのに、たまにそういう意地の張り方するわよね
拓也
返す言葉もございません
美咲
まあ、自分でなんとかしようとするの、悪いことじゃないけどね。ただ、それで余計に時間かかるなら、本末転倒よ
拓也
肝に銘じます
美咲
……私にも、たまにはエスカレーションしていいのよ。一人で抱え込まないで
拓也
それ、勉強の話?
美咲
さあ、どういう意味かしらね
夜のファミレスの明かりが、少しずつ遠くなっていく。二人は、いつもの帰り道を並んで歩いた。
今日のポイントおさらい
- エスカレーション=自分の手に負えない問題を、専門知識を持つ二次サポートに引き継ぐこと
- ワークアラウンドは、根本解決をせずに一時しのぎで対処すること
- FAQ的な文書は自己解決のための資料、SLAはサービス品質の合意書で、どちらも別の概念
- 「一人で抱え込む」より「できる人に任せる」ほうが適切な場面がある
- IT用語は、それぞれが指す"行動の中身"で区別すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問44(マネジメント系/サービスマネジメント)の解説です。