登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
PKIにおけるCA(Certificate Authority)の役割に関する記述として、適切なものはどれか。
- アインターネットと内部ネットワークの間にあって、内部ネットワーク上のコンピュータに代わってインターネットにアクセスする。
- イインターネットと内部ネットワークの間にあって、パケットフィルタリング機能などを用いてインターネットから内部ネットワークへの不正アクセスを防ぐ。
- ウ利用者に指定されたドメイン名を基にIPアドレスとドメイン名の対応付けを行い、利用者を目的のサーバにアクセスさせる。
- エ利用者の公開鍵に対する公開鍵証明書の発行や失効を行い、鍵の正当性を保証する。
第1幕:入館審査という関門
拓也の研究室つながりで、大学が連携しているデータセンターの見学会に参加できることになった。10月、二人はスーツ姿の見学者たちに混じって、受付の前に並んでいた。
美咲
なんか、思ったより物々しいのね。空港の保安検査みたい
拓也
身分証の確認、荷物チェック、それに入館バッジの発行。ここを抜けないと、中には入れないんだ
受付では、係員が一人ひとりの身分証を確認し、名前を照合してから、来館者用のICバッジを手渡していた。
拓也
ちょうどいいや。今日の問題、この受付の流れがそのまんまヒントになる
美咲
また、そのパターン?
第2幕:パケットフィルタリングで防ぐやつでしょ
バッジを首から下げ、見学ルートに入ったところで、拓也がノートを取り出す。
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『パケットフィルタリングで、不正アクセスを防ぐ』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"認証局"って名前、なんか怪しいものを弾いてくれる門番って感じがするじゃない。悪いアクセスをブロックしてくれるイメージだったのよね
拓也
発想はすごくわかるんだけど、実は"怪しいものを弾く"のと"本人であることを証明する"のは、全然別の仕事なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。イの説明は、実はCAじゃなくて"ファイアウォール"の役割。今日の問題が聞いてるCA(認証局)は、"公開鍵証明書を発行したり、失効させたりする"役割なんだ
第3幕:バッジを発行して、回収する係
拓也は自分の首から下がっている来館者バッジを指さした。
拓也
さっきの受付、思い出してみて。俺たちの身分証を確認して、このバッジを発行してくれたよね
美咲
うん、名前をチェックしてから渡してくれたわね
拓也
あの受付の係員がやってるのが、まさにCAの仕事。"この人は確かに本人だ"って確認したうえで、証明書(バッジ)を発行する。これが"公開鍵証明書の発行"なんだ
美咲
あ……! じゃあ、帰るときにバッジを回収されるのは?
拓也
そのとおり。それが"失効"。役目を終えた証明書を無効にする作業なんだ。正解はエ。CAは、悪いアクセスを弾く門番じゃなくて、"この鍵は本物です"って保証書を出す役所みたいな存在なんだよ
美咲
なるほどね……。怪しいものを追い返す係じゃなくて、正しいものを保証する係、ってことね
第4幕:はっきりしなさいよ
見学ルートの途中、案内スタッフが世間話のつもりで美咲と拓也に話しかけた。
「お二人、ご夫婦……じゃないですよね。恋人さん、とか?」
拓也は、前回の一件を引きずっていたせいで、今度は逆に何も言えなくなった。
拓也
……あの、その……
固まったまま、視線だけが泳ぐ。案内スタッフは苦笑いして、次の展示へと話題を移した。
美咲
……ちょっと。なんで黙るのよ
拓也
いや、この前、変なこと言って気まずくさせたから、今度は迂闊なこと言わないようにって
美咲
それで、何も言わないのが正解だと思ったわけ?
拓也
……違う、と思う
美咲
はっきりしなさいよ、いい加減。黙られるほうが、よっぽど気まずいんだけど
拓也
面目ない……
美咲
別に、今すぐ答え出せって言ってるわけじゃないけど。……黙るくらいなら、なんか言いなさいよ
拓也
肝に銘じます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気まずい空気を仕事に逃がすように、拓也はノートに向き直った。
美咲
……気を取り直して。残りのアとウも教えて
拓也
アの『内部ネットワークの代わりにインターネットにアクセスする』は、プロキシサーバの役割。内部の機器を直接インターネットにさらさずに、代理でアクセスしてくれる仕組みなんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『ドメイン名とIPアドレスを対応付ける』は、DNSの役割。"このドメイン名は、このIPアドレスです"っていう、いわば住所録の役目をしてる
美咲
イはファイアウォールで門番、アはプロキシで代理人、ウはDNSで住所録、エはCAで保証書の発行元。……似たような場所にいる係が、それぞれ全然違う仕事してるのね
拓也
完璧な整理。この4つ、名前だけ見ると混同しやすいんだけど、"誰が何のためにいるか"で分けて覚えると、もう迷わなくなるよ
問題文(再掲)
PKIにおけるCA(Certificate Authority)の役割に関する記述として、適切なものはどれか。
- アインターネットと内部ネットワークの間にあって、内部ネットワーク上のコンピュータに代わってインターネットにアクセスする。
- イインターネットと内部ネットワークの間にあって、パケットフィルタリング機能などを用いてインターネットから内部ネットワークへの不正アクセスを防ぐ。
- ウ利用者に指定されたドメイン名を基にIPアドレスとドメイン名の対応付けを行い、利用者を目的のサーバにアクセスさせる。
- エ利用者の公開鍵に対する公開鍵証明書の発行や失効を行い、鍵の正当性を保証する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 実際の役割 | 正誤 |
|---|---|---|---|
| ア | 内部の代わりにインターネットへアクセス | プロキシサーバ | 不正解 |
| イ | パケットフィルタリングで不正アクセスを防ぐ | ファイアウォール | 不正解 |
| ウ | ドメイン名とIPアドレスを対応付ける | DNS | 不正解 |
| エ | 公開鍵証明書の発行・失効、鍵の正当性を保証する | CA(認証局) | 正解 |
答えエ 公開鍵証明書の発行や失効を行い、鍵の正当性を保証する
覚え方のコツ
受付でバッジを発行して、帰りに回収する係。それがCA。
- CA(認証局)=公開鍵証明書を発行・失効させ、鍵の正当性を保証する役割。怪しいアクセスを弾く係ではない
- ファイアウォールは「防ぐ」、プロキシは「代理でアクセスする」、DNSは「名前と住所を対応付ける」。それぞれ別の役割
- 名前が似た用語ほど、「誰が何のためにいるか」で分けて覚えると混同しにくい
エピローグ
見学ツアーが終わり、二人は入館バッジを受付に返却して外に出た。
美咲
今日は、バッジ回収されるとき、なんか名残惜しかったわね。ちゃんと"証明"されてた感じがして
拓也
それ、"失効"されるのが名残惜しいって、なかなか珍しい感想だと思う
美咲
別に、深い意味はないから
拓也
……さっきは、ごめん。黙り込んで、変な空気にして
美咲
もういいわよ、それは。……ただ、次に同じこと聞かれたら
拓也
うん
美咲
……別に。ちゃんと、なんか言えばいいと思う。それだけ
拓也心の声
……なんか、か。それが一番、難しいんだけど
拓也
……努力する
美咲
それでいいのよ、最初は
データセンターを出ると、10月の夕方の風が冷たくなり始めていた。二人は駅までの道を、いつもより少しだけ間を詰めて歩いた。
今日のポイントおさらい
- CA(認証局)=公開鍵証明書の発行・失効を行い、鍵の正当性を保証する役割
- ファイアウォールは、パケットフィルタリングなどで不正アクセスを防ぐ役割
- プロキシサーバは、内部ネットワークの代わりにインターネットへアクセスする役割
- DNSは、ドメイン名とIPアドレスを対応付ける役割
- 名前が似た用語ほど、「誰が何のためにいる仕組みか」を分けて覚えると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問66(テクノロジ系/セキュリティ)の解説です。