登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
マーチャンダイジングの説明として、適切なものはどれか。
- ア消費者のニーズや欲求、購買動機などの基準によって全体市場を幾つかの小さな市場に区分し、標的とする市場を絞り込むこと
- イ製品の出庫から販売に至るまでの物の流れを統合的に捉え、物流チャネル全体を効果的に管理すること
- ウ店舗などにおいて、商品やサービスを購入者のニーズに合致するような形態で提供するために行う一連の活動のこと
- エ配送コストの削減と、消費者への接触頻度増加によるエリア密着性向上を狙って、同一エリア内に密度の高い店舗展開を行うこと
第1幕:秋の味覚フェアの入り口で
10月、二人は買い出しがてら、商店街のスーパーに来ていた。入り口には「秋の味覚フェア」と書かれた大きなのぼりが立ち、きのこや栗、さつまいもが山のように積まれている。
美咲
なんか、季節ごとにコーナーの中身が丸ごと変わるのよね、ここ
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
はいはい、また繋げるのね
拓也
今回は本当に、この売り場の作り方そのものが答えなんだって
第2幕:それ、この前のSTPでしょ
野菜売り場の脇のベンチで、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これアでしょ。『市場を細かく区分して、標的を絞り込む』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、この売り場も"秋の味覚が欲しい人"って客層を絞って作られてるわけでしょ? この前教わった、STPってやつと同じ発想じゃないの
拓也
発想はすごく鋭いんだけど、実はアの説明は、まさにその"STP"(Segmentation・Targeting・Positioningの頭文字)、正確にはその中の"セグメンテーションとターゲティング"の部分の説明なんだ。今日の問題が聞いてるマーチャンダイジングは、STPの"あと"の話なんだよ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。STPが"どの客層を狙うか"を決める話だとしたら、マーチャンダイジングは"その客層に、どう商品を並べて、どう買ってもらうか"を決める話なんだ
第3幕:陳列・POP・試食、全部まとめて
拓也は、山積みのさつまいもと、隣に貼られた手書きのPOPを指さした。
拓也
見て、この売り場。さつまいもの山、"ホクホク甘い、今が旬!"って手書きのPOP、それに試食コーナーまである
美咲
うん、たしかに、ついつい足を止めちゃう作りよね
拓也
この"商品をどう並べるか""どんなPOPをつけるか""試食させるか"っていう、購入者のニーズに合わせて売り方そのものを組み立てる一連の活動が、マーチャンダイジングなんだ
美咲
あ……! STPで"秋の味覚が欲しい人たち"を狙うって決めたあと、実際にこうやって陳列とPOPで"買いたくなる形"に仕上げてるのが、マーチャンダイジングってことね
拓也
そのとおり。正解はウ。STPが"戦略の的を絞る"段階だとしたら、マーチャンダイジングは"売り場で実行する"段階。順番も役割も、はっきり違うんだ
美咲
なるほどね……。同じ"戦略っぽい単語"でも、段階が全然違うのね
第4幕:両手、山盛りだ
説明を終えたところで、店員が「本日限定、さつまいも3袋で500円!」と威勢よく声を上げた。試食コーナーでは、湯気の立つふかし芋が振る舞われている。
拓也
……あ、これ、うまい
美咲
ちょっと、さっきまでマーチャンダイジングの話してたのに、素直に乗せられてるじゃない
拓也
いや、これは味が本当に
気づけば、拓也の両手にはさつまいもの袋、きのこのパック、栗の甘露煮まで抱えられていた。
美咲
……両手、山盛りだ
拓也
あ
美咲
解説してた本人が、一番まんまと引っかかってるじゃない
拓也
面目ない……。理論と実践は、別ということで
美咲
その言い訳、苦しすぎるでしょ
拓也
以後、気をつけます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
苦笑しながら、美咲がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのイとエも教えて
拓也
イの『物の流れを統合的に管理する』は、ロジスティクス。工場から店頭まで、商品がどう運ばれて届くかを効率的に管理する考え方なんだ
美咲
エは?
拓也
エの『同一エリアに密度高く店舗展開する』は、ドミナント戦略。同じ地域に集中的に出店することで、配送コストを抑えたり、地元での存在感を高めたりする狙いがあるんだ
美咲
STPは客層を絞る、マーチャンダイジングは売り場を作る、ロジスティクスは物を運ぶ、ドミナント戦略は同じ地域に固めて出す。……全部繋がってるようで、担当してる場所が違うのね
拓也
完璧な整理。"誰を狙うか""どう売るか""どう届けるか""どこに店を出すか"って、フェーズで分けて覚えると、もう混同しなくなるよ
問題文(再掲)
マーチャンダイジングの説明として、適切なものはどれか。
- ア消費者のニーズや欲求、購買動機などの基準によって全体市場を幾つかの小さな市場に区分し、標的とする市場を絞り込むこと
- イ製品の出庫から販売に至るまでの物の流れを統合的に捉え、物流チャネル全体を効果的に管理すること
- ウ店舗などにおいて、商品やサービスを購入者のニーズに合致するような形態で提供するために行う一連の活動のこと
- エ配送コストの削減と、消費者への接触頻度増加によるエリア密着性向上を狙って、同一エリア内に密度の高い店舗展開を行うこと
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 市場を細分化し標的を絞り込む(STP) | 不正解 |
| イ | 物の流れを統合的に管理する(ロジスティクス) | 不正解 |
| ウ | 商品を購入者のニーズに合う形で提供する一連の活動(マーチャンダイジング) | 正解 |
| エ | 同一エリアに密度高く店舗展開する(ドミナント戦略) | 不正解 |
答えウ マーチャンダイジング
覚え方のコツ
STPで狙いを絞り、マーチャンダイジングで売り場を作る。
- マーチャンダイジング=店舗で、商品を購入者のニーズに合う形で提供するための一連の活動(陳列・POP・品揃えなど)
- STP(セグメンテーション・ターゲティング)は、"どの客層を狙うか"を決める前段階の話で、マーチャンダイジングとは段階が異なる
- ロジスティクスは物流の管理、ドミナント戦略は同一エリアへの集中出店。どちらもマーチャンダイジングとは別の概念
エピローグ
両手いっぱいの秋の味覚を提げて、二人は商店街を歩いていた。
美咲
今日は結局、あんたの戦利品を運ぶ会になったわね
拓也
否定できない……。でも、これはこれで、いい買い物だったと思う
美咲
まあ、美味しそうではあるけど
拓也
今度、これでなんか作ろうか。栗ご飯とか
美咲
え、あんた、料理もするの?
拓也
簡単なやつなら。……よかったら、味見しに来る?
美咲
……別に、断る理由もないけど
拓也心の声
……マーチャンダイジングどころか、俺が一番わかりやすく誘導されてるな。でも、悪くない
美咲
なに一人で納得してるのよ
拓也
いや、なんでもない。今度の日程、また連絡する
商店街の街灯が、少しずつ灯り始めていた。二人は、重い荷物を分け合いながら、駅への道を歩いていった。
今日のポイントおさらい
- マーチャンダイジング=店舗で、商品を購入者のニーズに合う形で提供するための一連の活動
- STP(セグメンテーション・ターゲティング)は、標的とする市場を絞り込む前段階の話で、マーチャンダイジングとは段階が異なる
- ロジスティクスは、製品の出庫から販売までの物の流れを統合的に管理すること
- ドミナント戦略は、同一エリアに密度高く店舗展開すること
- 「誰を狙うか」「どう売るか」「どう届けるか」「どこに店を出すか」で分けて覚えると、似た戦略用語も混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問16(ストラテジ系/経営戦略マネジメント)の解説です。