登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
文書作成ソフトがもつ機能である禁則処理が行われた例はどれか。
- ア改行後の先頭文字が、指定した文字数分だけ右へ移動した。
- イ行頭に置こうとした句読点や閉じ括弧が、前の行の行末に移動した。
- ウ行頭の英字が、小文字から大文字に変換された。
- エ文字列の文字が、指定した幅の中に等間隔に配置された。
第1幕:レポート提出前の学食で
11月、提出間近のレポートを抱えて、美咲は学食の隅でノートパソコンに向かっていた。拓也が向かいの席に座る。
美咲
あ、見て。この句読点、行の最初に来ないように、勝手に前の行に押し込まれてる
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
レポート書いてるだけなのに、また繋げるのね
拓也
今回は本当に、今画面で見てるものそのものが答えなんだって
第2幕:文字が右にずれるやつでしょ
レポートを保存し、美咲がノートを取り出す。
美咲
じゃあ答えるわね。これアでしょ。『改行後の文字が、右へ移動する』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"決まりを守るために文字を動かす"処理でしょ? だったら、改行したときに文字がずれるのも、そういう類の話なのかなって
拓也
発想はわかるんだけど、実はアの説明は、"インデント"、つまり字下げの機能なんだ。今日の問題が聞いてる禁則処理は、もっと具体的に"句読点や閉じ括弧が行頭に来る"のを避ける処理なんだよ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。"文字を右にずらす"のと"特定の記号が行頭に来ないようにする"のは、全然別の機能なんだ
第3幕:原稿用紙にも、同じルールがある
拓也は、美咲のレポートの原稿用紙形式のテンプレートを指さした。
拓也
これ、原稿用紙でレポート書くときのルール、覚えてる? 句読点は、行の最初のマスに書いちゃダメで、前の行の最後のマスに、文字と一緒に詰め込むんだ
美咲
あ、それ聞いたことある。マス目からはみ出してでも、前の行に押し込むってやつよね
拓也
そのとおり。それを自動でやってくれるのが禁則処理。行頭に句読点や閉じ括弧が来そうになったら、前の行の行末に移動させる。今、美咲のレポートで見てたのが、まさにこれなんだ
美咲
あ……! さっき私が見てたやつ、まさにそれじゃない!
拓也
そのとおり。正解はイ。日本語は、句読点が行頭に来ると読みにくいから、こうやって自動で調整してくれる。ワープロソフトが当たり前にやってる機能なんだ
美咲
なるほどね……。原稿用紙のルールが、そのままソフトの機能になってるのね
第4幕:勝手に書き直してごめん
説明の途中、拓也がふと美咲のレポートの文面に目を留めた。
拓也
あ、ここの言い回し、こうしたほうが伝わりやすいと思う
そう言うと、拓也は美咲の許可も取らずに、キーボードを借りて数行を書き直し始めた。
美咲
……ちょっと、何してるの
拓也
あ、いや、もっと簡潔にできそうだったから
美咲
頼んでないんだけど。これ、私のレポートなんだけど
拓也
ごめん、良かれと思って
美咲
私の言葉で書きたいの。間違いを教えてもらうのはいいけど、勝手に書き直されるのは違う
拓也は、はっとした顔で手を止めた。
拓也
……勝手に書き直してごめん。元に戻す
美咲
わかればいいのよ。……アドバイスは、ちゃんと聞くから。次からは、言ってからにして
拓也
肝に銘じます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
書き直した部分を元に戻し、二人は仕切り直す。
美咲
……気を取り直して。残りのウとエも教えて
拓也
ウの『行頭の英字が小文字から大文字に変換される』は、オートコレクト機能の一種。文頭は大文字にする、っていう英語の文章のルールを自動で反映してくれるんだ
美咲
エは?
拓也
エの『文字列を指定した幅の中に等間隔に配置する』は、均等割り付け。見出しなんかで、文字数が違っても幅を揃えて綺麗に見せたいときに使う機能なんだ
美咲
禁則処理は句読点を行頭に置かない、インデントは字下げ、オートコレクトは自動修正、均等割り付けは幅を揃える。……全部、地味だけど、文章を読みやすくするための機能なのね
拓也
完璧な整理。普段意識しないけど、こういう機能のおかげで、文章がちゃんと読みやすくなってるんだ
問題文(再掲)
文書作成ソフトがもつ機能である禁則処理が行われた例はどれか。
- ア改行後の先頭文字が、指定した文字数分だけ右へ移動した。
- イ行頭に置こうとした句読点や閉じ括弧が、前の行の行末に移動した。
- ウ行頭の英字が、小文字から大文字に変換された。
- エ文字列の文字が、指定した幅の中に等間隔に配置された。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 改行後の文字が右へ移動する(インデント) | 不正解 |
| イ | 句読点や閉じ括弧が行頭に来る前に前の行末へ移動する(禁則処理) | 正解 |
| ウ | 行頭の英字が大文字に変換される(オートコレクト) | 不正解 |
| エ | 文字列が指定幅の中に等間隔に配置される(均等割り付け) | 不正解 |
答えイ 行頭に置こうとした句読点や閉じ括弧が、前の行の行末に移動した
覚え方のコツ
原稿用紙のマス目のルールを、自動でやってくれるのが禁則処理。
- 禁則処理=句読点や閉じ括弧が行頭に来ないよう、前の行の行末に移動させる機能
- インデントは字下げ、オートコレクトは文頭の自動大文字変換、均等割り付けは文字幅を揃える機能。それぞれ別の機能
- 日本語の禁則処理は、原稿用紙の書き方ルールと同じ考え方をワープロソフトが自動化したもの
エピローグ
学食の窓の外は、もう夕方の気配が漂い始めていた。
美咲
さっきは、ちょっと言い過ぎたかも
拓也
いや、俺が勝手にやりすぎた。ごめん
美咲
わかってくれたなら、いいのよ。……私、まだ全然うまく書けないけど、自分の言葉で書きたいの
拓也
うん。それでいいと思う。……手伝ってほしいときは、ちゃんと言って
美咲
そのときは、頼るから
拓也心の声
……美咲が、ちゃんと自分の言葉にこだわってるの、なんかいいな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。レポート、頑張って
美咲
うん。ありがと
窓の外の銀杏が色づき始めていた。美咲は、拓也の視線を気にしながらも、また画面に向き直った。
今日のポイントおさらい
- 禁則処理=句読点や閉じ括弧が行頭に来ないよう、前の行の行末に移動させる機能
- インデントは、改行後の先頭文字を指定した文字数分右へ移動させる機能(字下げ)
- オートコレクトは、行頭の英字を自動で大文字に変換するなどの自動修正機能
- 均等割り付けは、文字列を指定した幅の中に等間隔に配置する機能
- 日本語の禁則処理は、原稿用紙の書き方ルールと同じ考え方をワープロソフトが自動化したもの
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問71(テクノロジ系/ソフトウェア)の解説です。