登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
SCMシステムを構築する目的はどれか。
- ア企業のもっている現在の強み、弱みを評価し、その弱みを補完するために、どの企業と提携されればよいかを決定する。
- イ商品の生産から消費に関係する部門や企業の間で、商品の生産、在庫、販売などの情報を相互に共有して管理することによって、商品の流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る。
- ウ顧客に提供する価値が調達、開発、製造、販売、サービスといった一連の企業活動のどこで生み出されているのかを明確化する。
- エ多種類の製品を生産及び販売している企業が、利益を最大化するために、最も効率的・効果的となる製品の製造・販売の組合せを決定する。
第1幕:久しぶりのファミレスで
11月、二人は久しぶりに、あの見慣れたファミレスに来ていた。注文を済ませ、料理が来るまでの間にノートを広げる。
美咲
なんか、ここで勉強するの、ちょっと懐かしい感じね
拓也
最初の頃、よくここで教えてたもんね。……あ、そうだ、今日の問題、ちょうどいいのがあるんだ
美咲
まだ料理も来てないのに、気が早いわね
拓也
待ち時間、有効活用しよう
第2幕:どこで価値が生まれるか明確にするやつでしょ
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『どこで価値が生まれるか明確化する』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、商品がどうやって作られてお店に来るか、その流れを明確にする話なんでしょ? だったら"どこで価値が生まれてるか"を整理するのと同じことだと思ったんだけど
拓也
発想は近いんだけど、実は"流れを可視化して、どこに価値があるか整理する"のと、"情報を共有して、在庫や流通を効率化する"のは、目的が違うんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。ウの説明は"バリューチェーン分析"。企業活動のどの工程で価値が生まれてるかを明確にする手法。今日の問題が聞いてるSCMは、"情報を共有して、在庫の無駄や機会損失を減らす"仕組みなんだ
第3幕:厨房と仕入れ先が繋がってる
拓也は、テーブルに置かれたメニュー表を指さした。
拓也
このお店、たとえば今日の来客予測を、厨房の仕入れ担当と本部が共有してたらどうなると思う?
美咲
うーん、要るものだけ、要る分だけ仕入れられそう
拓也
そのとおり。生産・在庫・販売の情報を、関係する部門や企業の間で共有して管理する。それによって、食材を余らせたり、逆に足りなくなったりするのを防げる。これがSCM、サプライチェーンマネジメントなんだ
美咲
あ……! 厨房だけじゃなくて、仕入れ先の農家とか卸業者まで、情報がちゃんと繋がってる感じね
拓也
そのとおり。正解はイ。商品が"作られてから消費者に届くまで"の一連の流れ全体で情報を共有して、無駄な在庫を減らしたり、欠品を防いだりして、顧客満足を高める。それがSCMシステムを構築する目的なんだ
美咲
なるほどね……。バリューチェーンは"どこで価値が生まれるか"、SCMは"情報を繋げて無駄をなくす"。似てるようで、見てるところが違うのね
第4幕:あ、冷めてる
説明に夢中になっているうちに、料理が運ばれてきていた。湯気を立てていたはずのグラタンは、いつの間にか湯気が消えている。
美咲
……ちょっと、料理、冷めてるけど
拓也
え、いつの間に
拓也
……あ、冷めてる
湯気の消えたグラタンをスプーンでつつき、拓也が固まる。
美咲
話に夢中になりすぎでしょ。せっかく熱々で来たのに、もったいない
拓也
面目ない……。SCMの話をしといて、目の前の在庫(料理)を無駄にするとは
美咲
その自虐、地味に上手いのがムカつくわ
拓也
すみません、以後気をつけます
美咲
まあ、冷めても美味しいから食べなさい。次からはちゃんと食べながら話して
拓也
肝に銘じます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
冷めたグラタンをつつきながら、拓也がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとエも教えて
拓也
アの『強み・弱みを評価して提携先を決定する』は、アライアンス(業務提携)先を選ぶための考え方。自社に足りないものを、他社との協力で補うための判断材料なんだ
美咲
エは?
拓也
エの『効率的・効果的な製品の組合せを決定する』は、プロダクトミックスの最適化。複数の商品を扱う企業が、どの商品をどれだけ作って売るかのバランスを考えて、利益を最大化する考え方なんだ
美咲
SCMは情報共有で無駄をなくす、バリューチェーンは価値の発生源を明確化、提携先選定は強み弱みの補完、プロダクトミックスは商品の組合せ最適化。……全部『効率よくやる』話だけど、視点が違うのね
拓也
完璧な整理。"どこを見て効率化してるか"に注目すると、この4つも迷わなくなるよ
問題文(再掲)
SCMシステムを構築する目的はどれか。
- ア企業のもっている現在の強み、弱みを評価し、その弱みを補完するために、どの企業と提携されればよいかを決定する。
- イ商品の生産から消費に関係する部門や企業の間で、商品の生産、在庫、販売などの情報を相互に共有して管理することによって、商品の流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る。
- ウ顧客に提供する価値が調達、開発、製造、販売、サービスといった一連の企業活動のどこで生み出されているのかを明確化する。
- エ多種類の製品を生産及び販売している企業が、利益を最大化するために、最も効率的・効果的となる製品の製造・販売の組合せを決定する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 強み・弱みを評価し提携先を決定する(アライアンス選定) | 不正解 |
| イ | 情報を共有し流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る(SCM) | 正解 |
| ウ | 価値がどこで生み出されているか明確化する(バリューチェーン分析) | 不正解 |
| エ | 効率的な製品の製造・販売の組合せを決定する(プロダクトミックス最適化) | 不正解 |
答えイ 商品の生産、在庫、販売などの情報を相互に共有し、流通在庫の削減や顧客満足の向上を図る
覚え方のコツ
厨房から仕入れ先まで、情報を繋げて無駄をなくす。それがSCM。
- SCM=生産から消費までの情報を関係部門・企業間で共有し、流通在庫の削減と顧客満足の向上を図る仕組み
- バリューチェーン分析は、企業活動のどこで価値が生まれているかを明確化する手法。SCMとは目的が異なる
- アライアンス選定は提携先を決めるための評価、プロダクトミックス最適化は複数商品の製造・販売バランスの最適化
エピローグ
冷めたグラタンを食べ終え、二人は追加でドリンクバーに向かった。
美咲
今日は、ここで勉強するの、なんか新鮮だったわね
拓也
たしかに。最初の頃を思い出した
美咲
あの頃のあんた、教えるのだけは必死だったわよね
拓也
それ、今もそうだと思うけど
美咲
まあ、否定はしないけど。……最初の頃より、ちょっとは私も進歩したと思わない?
拓也
うん、間違いなく
拓也心の声
……最初の頃から今まで、ずっとここに一緒にいるんだよな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……ドリンクバー、俺も何か持ってくる
美咲
いってらっしゃい
見慣れた店内の照明の下、二人はいつもと同じように、少しだけ長居をしていた。
今日のポイントおさらい
- SCM=生産から消費までの情報を関係部門・企業間で共有し、流通在庫の削減と顧客満足の向上を図る仕組み
- バリューチェーン分析は、企業活動のどこで価値が生み出されているかを明確化する手法
- アライアンス選定は、強み・弱みを評価して提携先を決めるための考え方
- プロダクトミックスの最適化は、複数商品の製造・販売バランスを調整し利益を最大化する考え方
- SCM・バリューチェーン・アライアンス・プロダクトミックスは、「どこを見て効率化しているか」で区別すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問22(ストラテジ系/経営戦略マネジメント)の解説です。