登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
不正競争防止法で規定されている限定提供データに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア特定の第三者に対し、1回に限定して提供する前提で保管されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- イ特定の第三者に提供する情報として電磁的の方法によって相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)は限定提供データである。
- ウ特定の第三者に提供するために、金庫などで物理的に管理されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- エ不正競争防止法に定めのある営業秘密は限定提供データである。
第1幕:契約データベースの前で
11月、レポートの資料集めに、二人は大学図書館に来ていた。美咲が、新聞記事の検索データベースの画面を開く。
美咲
これ、大学が契約してるやつだから、学生証がないとログインできないのよね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
資料探してるだけなのに、また繋げるのね
拓也
今回は本当に、今開いてる画面そのものが答えなんだって
第2幕:営業秘密のことでしょ
閲覧席に座り、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『営業秘密のことである』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、不正競争防止法で保護される情報って言われたら、"秘密"のイメージが強かったから。営業秘密とほぼ同じ意味なのかなって
拓也
発想はわかるんだけど、実は限定提供データと営業秘密は、不正競争防止法の中でも別のカテゴリなんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。限定提供データの定義には、"秘密として管理されているものを除く"ってはっきり書かれてる。つまり、秘密にしてる情報は営業秘密のほうで守られるもので、限定提供データは"秘密ではないけど、特定の相手にだけ提供してる情報"を指すんだ
第3幕:秘密じゃないけど、誰にでも見せるわけでもない
拓也は、目の前のデータベースの画面を指さした。
拓也
このデータベース、大学が契約料を払って、学生なら誰でも使えるようにしてるよね。これ、秘密にしてる情報だと思う?
美咲
うーん、秘密ってわけじゃなさそうね。お金さえ払えば、他の大学も同じように使えるわけだし
拓也
そのとおり。秘密じゃないけど、"お金を払って契約した人にだけ"提供してる。この"特定の相手にだけ提供するために、電磁的な方法で大量に蓄積・管理されてる情報"が、まさに限定提供データなんだ
美咲
あ……! 秘密にしてるわけじゃないけど、契約してない人には見せない、っていう、この微妙な立ち位置が"限定提供"ってことね
拓也
そのとおり。正解はイ。"秘密として管理されているものを除く"って条件があるから、営業秘密とは別物として保護されるんだ。この会員制データベースや、位置情報の蓄積データなんかが、代表的な限定提供データの例なんだよ
美咲
なるほどね……。"秘密"と"限定提供"、似てるようで法律上はちゃんと別のカテゴリなのね
第4幕:……あ、それはまずいか
説明を聞き終えた拓也が、ふと思いついたように言った。
拓也
そういえば、このデータベース便利だから、サークルの友達にもログイン情報教えてあげようかな
美咲
ちょっと待って
拓也
え?
美咲
それ、契約違反でしょ。今、自分で説明してたじゃない。"特定の第三者に提供するために管理されてる"データなんだから、契約者以外に勝手に教えたら駄目なやつでしょ
拓也
……あ、それはまずいか
美咲
今日習ったばっかりのこと、自分でやらかしかけてどうするのよ
拓也
面目ない……。危なかった、教える前に気づいてくれて
美咲
まったくもう。頭ではわかってても、実際に行動するときは別、ってことね
拓也
肝に銘じます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
苦笑しながら、美咲がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとウも教えて
拓也
アの『1回に限定して提供する前提で保管』は、限定提供データの定義とは違う。限定提供データは"1回限り"じゃなくて、"継続的に特定の相手に提供される、蓄積されたデータ"を指すんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『金庫などで物理的に管理されている情報』も、限定提供データの要件とは違う。限定提供データは"電磁的方法"で管理されてるものが対象。紙の書類を金庫で守ってるだけだと、この定義には当てはまらないんだ
美咲
限定提供データは、秘密じゃないけど特定の相手に電磁的に提供・蓄積されてる情報。営業秘密は秘密として管理されてる情報。1回限定や物理管理は、そもそも定義から外れる。……条文の言葉、一つ一つに意味があるのね
拓也
完璧な整理。法律の問題は、条文の"除く""限る"みたいな言葉を丁寧に読むのがコツなんだ
問題文(再掲)
不正競争防止法で規定されている限定提供データに関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア特定の第三者に対し、1回に限定して提供する前提で保管されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- イ特定の第三者に提供する情報として電磁的の方法によって相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)は限定提供データである。
- ウ特定の第三者に提供するために、金庫などで物理的に管理されている技術上又は営業上の情報は限定提供データである。
- エ不正競争防止法に定めのある営業秘密は限定提供データである。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 1回限定で提供する前提の情報 | 不正解 |
| イ | 電磁的方法で蓄積・管理され、秘密管理はされていない情報 | 正解 |
| ウ | 金庫などで物理的に管理されている情報 | 不正解 |
| エ | 不正競争防止法上の営業秘密 | 不正解 |
答えイ 特定の第三者に提供する情報として電磁的の方法によって相当量蓄積され管理されている技術上又は営業上の情報(秘密として管理されているものを除く)
覚え方のコツ
秘密じゃないけど、誰にでも見せるわけでもない。それが限定提供データ。
- 限定提供データ=電磁的方法で蓄積・管理され、特定の第三者に提供される情報(秘密として管理されているものは除く)
- 営業秘密は「秘密として管理されている情報」で、限定提供データとは定義上、明確に区別される
- 「1回限定の提供」や「金庫などでの物理的な管理」は、限定提供データの要件には当てはまらない
エピローグ
図書館を出ると、11月の夕方はもう肌寒かった。
美咲
今日は、私があんたを止める側になったわね
拓也
返す言葉もございません……。教えてもらったこと、ちゃんと身につけないとな
美咲
まあ、気づいてすぐ引き返せたんだから、よしとしましょう
拓也
うん。……ありがとう、止めてくれて
美咲
別に、大したことじゃないけど
拓也心の声
……美咲が、俺の説明をちゃんと自分のものにしてる。それが、なんかすごく嬉しいな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。今日もいい勉強になった
美咲
それ、私のセリフのつもりだったんだけど
図書館前の並木道を、二人は肩を並べて歩いていった。
今日のポイントおさらい
- 限定提供データ=電磁的方法で蓄積・管理され、特定の第三者に提供される情報(秘密として管理されているものは除く)
- 営業秘密は「秘密として管理されている情報」で、限定提供データとは不正競争防止法上、区別される
- 「1回限定の提供」を前提とした情報は、限定提供データの定義には当てはまらない
- 「金庫などでの物理的な管理」も、限定提供データの要件(電磁的方法による管理)には当てはまらない
- 法律の問題は、条文の「除く」「限る」といった言葉を丁寧に読むことが理解のコツ
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問10(ストラテジ系/法務)の解説です。