登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
未来のある時点に目標を設定し、そこを起点に現在を振り返り、目標実現のために現在すべきことを考える方法を表す用語として、最も適切なものはどれか。
- アPoC(Proof of Concept)
- イPoV(Proof of Value)
- ウバックキャスティング
- エフォアキャスティング
第1幕:逆算のスケジュール表
12月、二人は拓也の研究室に来ていた。壁には、来年の学会発表の日付を起点に、今週・今月やるべきことを逆算して並べたスケジュール表が貼られている。
美咲
これ、未来の日付から逆算して、今何やるか決めてるのね
拓也
お、いいところに気づいたね。……あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
研究室の壁からも繋げるの、もう職業病ね
拓也
今回は本当に、このスケジュール表そのものが答えなんだって
第2幕:今から未来を予想する話でしょ
実験机の隅で、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『フォアキャスティング』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"未来のことを考える"話でしょ? だったら、今の状況から、この先どうなるかを予想していく話なのかなって
拓也
発想はわかるんだけど、実は"今から未来を予想する"のと"未来から現在を逆算する"のは、向きが逆なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。フォアキャスティングは、"現在の延長線上で、この先どうなるかを予測する"考え方。今日の問題が聞いてるのは、"未来のある時点に目標を置いて、そこから今すべきことを逆算する"考え方なんだ
第3幕:ゴールから逆算する
拓也は、壁のスケジュール表を指さした。
拓也
このスケジュール、まず"来年の学会発表"っていうゴールの日付を決めて、そこから逆算して"今月は実験、来月はデータ整理"って割り振ってるんだ
美咲
うん、たしかに。今の延長で考えてるんじゃなくて、ゴールから逆に辿ってるのね
拓也
そのとおり。未来のある時点に目標を設定して、そこを起点に現在を振り返り、"目標を実現するために、今何をすべきか"を考える。これがバックキャスティングなんだ
美咲
あ……! "今できることの延長"じゃなくて、"未来から逆算して今やること"を決めるってことね
拓也
そのとおり。正解はウ。フォアキャスティングは"今の延長線上"で考えるから、大きな変化を想定しにくい。バックキャスティングは"理想の未来"を先に決めるから、今のやり方にとらわれない目標設定ができるんだ
美咲
なるほどね……。研究のスケジュールにも、こんな考え方があったのね
第4幕:……あ、いや、その
説明の流れで、拓也がふと自分の将来の話を始めた。
拓也
俺も、10年後にこういう研究してたら、って考えることあってさ。そこから逆算すると、今のうちにやっとくべきことが結構見えてくるんだよね。その頃も、美咲に――
拓也
……あ、いや、その
言いかけて、拓也が急に言葉を切った。
美咲
……今、なんて言った?
拓也
い、いや、なんでもない。研究の話
美咲
絶対なんでもなくないでしょ、今の間
拓也
気のせいです
美咲
ふーん。……まあ、いいけど。気になるけど、今日は見逃してあげる
拓也
ありがとうございます……
美咲心の声
……10年後、か。まあ、それはそれで、悪くないかもね
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気まずさを引きずりつつ、拓也はノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとイも教えて
拓也
アのPoC(Proof of Concept)は、新しいアイデアや技術が、実現可能かどうかを検証する、概念実証のこと。本格的に作り込む前に、小規模に試してみる段階だね
美咲
イは?
拓也
イのPoV(Proof of Value)は、その技術やアイデアが、実際にどれくらいの価値を生み出すかを検証すること。PoCが"できるかどうか"なら、PoVは"やる価値があるかどうか"を確かめる段階なんだ
美咲
バックキャスティングは未来から逆算、フォアキャスティングは今から予測、PoCは実現可能性の検証、PoVは価値の検証。……全部、未来に向けた考え方だけど、見てる角度が違うのね
拓也
完璧な整理。新しいことを始めるときは、この4つを意識すると、計画がぐっと立てやすくなるよ
問題文(再掲)
未来のある時点に目標を設定し、そこを起点に現在を振り返り、目標実現のために現在すべきことを考える方法を表す用語として、最も適切なものはどれか。
- アPoC(Proof of Concept)
- イPoV(Proof of Value)
- ウバックキャスティング
- エフォアキャスティング
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | PoC(実現可能性の検証) | 不正解 |
| イ | PoV(価値の検証) | 不正解 |
| ウ | バックキャスティング(未来の目標から現在を逆算する) | 正解 |
| エ | フォアキャスティング(現在の延長線上で未来を予測する) | 不正解 |
答えウ バックキャスティング
覚え方のコツ
未来のゴールを先に決めて、そこから逆算する。それがバックキャスティング。
- バックキャスティング=未来のある時点に目標を設定し、そこから現在を振り返って、今すべきことを考える方法
- フォアキャスティングは、現在の延長線上でこの先を予測する方法。考える向きが逆
- PoCは実現可能性の検証、PoVは価値の検証。どちらも計画段階で使われる考え方
エピローグ
研究室を出ると、12月の冷たい空気が二人を包んだ。
美咲
今日は、なんか意味深なこと言いかけてたわよね
拓也
まだ根に持ってる?
美咲
持ってないけど、覚えてはいるわよ
拓也
……厳しい
美咲
まあ、そのうち、ちゃんと最後まで言えるようになったら、聞いてあげる
拓也
……それ、いつか本当に言う日が来たら、覚悟しといて
美咲
上等じゃない
拓也心の声
……10年後の目標、か。俺の場合、逆算しなくても、答えはもう決まってるんだけどな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。寒いし、そろそろ行こう
白い息を吐きながら、二人は駅までの道を並んで歩いていった。
今日のポイントおさらい
- バックキャスティング=未来のある時点に目標を設定し、そこから現在を振り返って今すべきことを考える方法
- フォアキャスティングは、現在の延長線上でこの先どうなるかを予測する方法
- PoC(Proof of Concept)は、アイデアや技術が実現可能かどうかを検証すること
- PoV(Proof of Value)は、そのアイデアや技術がどれだけの価値を生み出すかを検証すること
- 未来に向けた計画づくりは、「逆算するか、延長で考えるか」を意識すると整理しやすい
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問3(ストラテジ系/技術戦略マネジメント)の解説です。