登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
ある商品を5,000個販売したところ、売上げが6,000万円、利益が400万円となった。商品1個当たりの変動費が7,000円であるとき、利益を1,000万円以上にするためには、少なくともあと何個販売されればよいか。
- ア500
- イ1,200
- ウ6,200
- エ7,500
第1幕:模擬店、初日の昼
学園祭初日の昼、たこ焼きの模擬店は盛況だった。売上を集計していた美咲が、ふと会計係のノートを覗き込む。
美咲
このペースだと、目標の利益、届きそうで届かなそうな感じね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ。ちょうど今のうちらの状況に近い数字なんだ
美咲
模擬店の売上表からも繋げるの、もう才能ね
拓也
今回は本当に、この数字の考え方がそのまま使えるんだって
第2幕:目標達成に必要な総数を出せばいいんでしょ
裏方のテーブルで、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『6,200個』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、目標の利益を出すのに必要な総販売数を計算すればいいと思ったのよね。それで出てきたのが6,200個
拓也
発想も計算の道筋もすごく良かったんだけど、実は"目標達成に必要な総数"と"あと何個売ればいいか"は、ちょっとズレてるんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。問題文、よく見て。"あと何個販売されればよいか"って聞いてる。つまり、"すでに売った5,000個からの追加分"が知りたいんだ
第3幕:1個あたりの儲けから逆算する
拓也は、模擬店の売上メモを指さした。
拓也
まず、1個あたりの儲けを出そう。売上6,000万円÷5,000個で、1個の値段は12,000円。そこから変動費7,000円を引くと、1個売るごとの儲けは5,000円になる
美咲
うん、そこまでは私も出せたわ
拓也
次に、あとどれだけ利益を増やしたいかを考える。今400万円の利益があって、1,000万円以上にしたいから、あと600万円必要
美咲
あ……! 600万円を、1個あたりの儲け5,000円で割ればいいのね! 600万円÷5,000円=1,200個
拓也
そのとおり。正解はイ、1,200個。"あと必要な利益"を"1個あたりの儲け"で割ると、"あと何個売ればいいか"が出るんだ。美咲が出した6,200個は、実は"ゼロから1,000万円の利益を出すために必要な総数"。今回はすでに5,000個売ってるから、そこからの"追加分"だけを聞かれてるんだよ
美咲
なるほどね……。"合計で何個"と"あと何個"、聞かれ方一つで答えが全然変わるのね
第4幕:……あ、煙が
計算に夢中になっているうちに、拓也が担当していた鉄板から、うっすらと煙が上がり始めていた。
美咲
……ちょっと、煙出てるけど
拓也
え
拓也
……あ、煙が
慌てて鉄板を見ると、拓也が担当していたたこ焼きが、真っ黒に焦げていた。
美咲
あんた、計算に集中しすぎでしょ! 鉄板、完全に放置されてたじゃない
拓也
面目ない……。数字を追いかけてたら、つい
美咲
焦げたやつは、私たちのまかないにするから。次から、計算と調理は同時にやらないこと
拓也
肝に銘じます
黒焦げのたこ焼きを頬張りながら、拓也が小さく「……ちょっと苦い」とつぶやき、美咲が声を出して笑った。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
新しい生地を焼き始めながら、拓也が続きを説明する。
美咲
……気を取り直して。残りのアとエも教えて
拓也
アの『500個』は、600万円を、変動費7,000円で割ってしまった場合の誤答。1個あたりの"儲け"じゃなくて"コスト"で割ると、この数字になっちゃうんだ
美咲
エは?
拓也
エの『7,500個』は、"あと必要な利益"を正しく計算できていない場合の誤答。たとえば、1,000万円をそのまま1個あたりの儲け5,000円で割ると、2,000個になるはずなんだけど、そこに何らかの計算ミスが重なると、こういう大きすぎる数字が出てきてしまう
美咲
1,200個が"あと何個"の正解、6,200個は"合計で何個"、500個は儲けとコストの取り違え、7,500個は計算ミス。……同じ数字でも、意味が全然違うのね
拓也
完璧な整理。この手の問題は、"何を聞かれてるか"を最初にしっかり確認するのが一番大事なんだ
問題文(再掲)
ある商品を5,000個販売したところ、売上げが6,000万円、利益が400万円となった。商品1個当たりの変動費が7,000円であるとき、利益を1,000万円以上にするためには、少なくともあと何個販売されればよいか。
- ア500
- イ1,200
- ウ6,200
- エ7,500
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 500個(儲けとコストを取り違えた場合の誤答) | 不正解 |
| イ | 1,200個(あと必要な利益÷1個あたりの儲け) | 正解 |
| ウ | 6,200個(ゼロから目標を達成する場合の"合計"数) | 不正解 |
| エ | 7,500個(計算を誤った場合の誤答) | 不正解 |
答えイ 1,200個
覚え方のコツ
「合計で何個」と「あと何個」は別物。あと必要な利益÷1個あたりの儲け=あと何個。
- 1個あたりの儲け(限界利益)=販売単価-1個あたりの変動費
- あと必要な利益=目標の利益-現在の利益
- あと何個売ればいいか=あと必要な利益÷1個あたりの儲け。ここで求めた数は"追加分"であって"合計"ではない
エピローグ
夕方、模擬店の一日目の営業が終わり、二人は後片付けをしながら一息ついた。
美咲
今日は、なんだかんだ黒字は出せそうね
拓也
うん、明日も同じペースでいけば、目標には届きそう
美咲
あんたの焦げたたこ焼き分の赤字も、なんとか吸収できそうだしね
拓也
その節は、本当にすみませんでした……
美咲
まあ、いいのよ。……今日、ずっと一緒に動いてくれて、正直すごく助かった
拓也
それはこっちのセリフ。誘ってくれてありがとう
美咲
誘ったというか、成り行きだけど
拓也心の声
……成り行きでも、今日一日、ずっと隣にいられたのは嬉しかったな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。明日もよろしく
美咲
うん、よろしく
片付けを終えた教室に、夕日が長く差し込んでいた。
今日のポイントおさらい
- 1個あたりの儲け(限界利益)=販売単価-1個あたりの変動費
- あと必要な利益=目標の利益-現在の利益
- あと何個売ればいいか=あと必要な利益÷1個あたりの儲け
- 「合計で何個必要か」と「あと何個必要か」は別物。問題文で聞かれているのがどちらかを最初に確認する
- 数字の計算問題は、"何を聞かれているか"を先に確認するのが誤答を防ぐコツ
この記事はITパスポート試験 令和7年度 問34(ストラテジ系/企業活動)の解説です。