登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
需要量が年間を通じて安定している場合において、定量発注方式に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア最適な発注量は、発注費用と在庫維持費用の総額が最小となる場合である。
- イ発注回数の多寡で比較したとき、発注回数の多い方が商品を保管するスペースを広くする必要がある。
- ウ発注は毎週金曜日、毎月末など、決められた同じサイクルで行われる。
- エ毎回需要予測に基づき発注が行われる。
第1幕:材料補充の相談
学園祭2日目の朝、たこの在庫が予想より早く減っていた。美咲がメモを片手に、追加の買い出しをどうするか相談する。
美咲
昨日のペースだと、午後にはたこ、足りなくなりそうなのよね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ。ちょうど"発注のタイミング"の話だから
美咲
在庫の心配してるだけなのに、また繋げるの
拓也
今回は本当に、今のこの状況がそのまま答えに繋がるんだって
第2幕:毎回そのとき次第で発注するんでしょ
裏方のテーブルで、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『毎回需要予測に基づき発注が行われる』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、今日みたいに、売れ行きを見て"今日は多めに買っておこう"って判断するものだと思ったのよね
拓也
発想はわかるんだけど、実は"そのつど需要を予測して発注する"のと"決まった量に達したら発注する"のは、別の方式なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。エの説明は、実は定量発注方式の話じゃないんだ。今日の問題が聞いてる定量発注方式は、"在庫が決められた量まで減ったら、決まった量を発注する"仕組み。じゃあ、何を基準に"発注する量"を決めるかって話になるよね
第3幕:買いに行く手間と、余らせるリスク
拓也は、裏方に積まれたたこの箱を指さした。
拓也
もし、たこを1回でたくさん買いすぎたらどうなる?
美咲
うーん、保管に困りそうだし、傷んじゃったら困るわね
拓也
それが"在庫維持費用"。逆に、少しずつ何度も買いに行ったら?
美咲
そのたびに、誰かがお店を空けて買いに行かなきゃいけないから、それはそれで大変ね
拓也
それが"発注費用"。買いすぎれば在庫維持費用がかさむし、こまめに買いすぎれば発注費用がかさむ。この2つの費用の合計が、一番少なくなる量を狙って発注する。これが最適発注量の考え方なんだ
美咲
あ……! "ちょうどいい量"って、なんとなくじゃなくて、ちゃんと理屈があるのね
拓也
そのとおり。正解はア。発注費用と在庫維持費用の総額が最小になる量が、定量発注方式の最適発注量。多すぎても少なすぎても、どこかに無駄が出るんだ
美咲
なるほどね……。今日のたこの発注も、この考え方が使えそうね
第4幕:……あ、たこがない
理論を説明し終えた拓也が、電卓片手に唸り始めた。
拓也
うーん、発注費用と在庫維持費用のバランスを考えると、追加は……ちょうどこのくらいが最適な気がするな……
拓也
いや待って、もう少し細かく計算したほうが
美咲
……ちょっと、いつまで計算してるのよ
拓也
あと少しで最適な数字が
美咲
……あ、たこがない
売り場から聞こえた声に、拓也が振り返る。すでに数組のお客さんが、たこ焼きが品切れで残念そうに列を離れていくところだった。
拓也
……最適化してる場合じゃなかった
美咲
理屈はいいから、まず動きなさいよ! 完璧な発注量より、売り切れないことのほうが大事でしょ
拓也
面目ない……。すぐ買いに行ってきます
美咲
私も行く。急いで
二人は財布を掴んで、慌てて店を飛び出した。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
追加のたこを買い、無事に補充を終えたあと、拓也が続きを説明する。
美咲
……気を取り直して。残りのイとウも教えて
拓也
イの『発注回数の多い方が保管スペースを広く必要とする』は、逆の説明。発注回数が多いほど、1回あたりの発注量は少なくなるから、実際は保管スペースが狭くて済むんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『毎週金曜日、毎月末など決まったサイクルで発注する』は、定期発注方式の説明。定量発注方式は"量"で発注のタイミングを決めるけど、定期発注方式は"時期"で決めるんだ。似てるようで、判断基準が違う
美咲
最適発注量は費用最小化、発注回数が多いと保管スペースは狭くて済む、決まったサイクルは定期発注方式、需要予測ベースはどちらとも違う考え方。……発注の仕方にも、いろんな理屈があるのね
拓也
完璧な整理。定量発注方式と定期発注方式、どっちも"いつ・どれだけ発注するか"を決める仕組みだけど、基準にしてるものが違うんだ
問題文(再掲)
需要量が年間を通じて安定している場合において、定量発注方式に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア最適な発注量は、発注費用と在庫維持費用の総額が最小となる場合である。
- イ発注回数の多寡で比較したとき、発注回数の多い方が商品を保管するスペースを広くする必要がある。
- ウ発注は毎週金曜日、毎月末など、決められた同じサイクルで行われる。
- エ毎回需要予測に基づき発注が行われる。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 発注費用と在庫維持費用の総額が最小になる量が最適発注量 | 正解 |
| イ | 発注回数が多いほど保管スペースが広く必要(実際は逆) | 不正解 |
| ウ | 決まったサイクルで発注する(定期発注方式の説明) | 不正解 |
| エ | 毎回需要予測に基づき発注する | 不正解 |
答えア 最適な発注量は、発注費用と在庫維持費用の総額が最小となる場合である
覚え方のコツ
買いに行く手間と、余らせるリスク。ちょうどいいバランスを狙うのが最適発注量。
- 定量発注方式の最適発注量=発注費用と在庫維持費用の総額が最小になる量
- 発注回数が多いほど、1回あたりの発注量は少なくなり、保管スペースは狭くて済む
- 定期発注方式は"決まった時期"に発注する方式。定量発注方式(決まった"量"で発注のタイミングを決める)とは基準が異なる
エピローグ
閉店作業を終え、二人は片付けをしながら一息ついた。
美咲
今日は、危うく理論倒れになるところだったわね
拓也
返す言葉もございません……。完璧な数字を求めすぎた
美咲
まあ、間に合ったからよしとしましょう。……次からは、ちょっとくらい雑でも、早く動くこと
拓也
肝に銘じます
美咲
あんたのそういう几帳面なところ、嫌いじゃないけどね。今日みたいに、たまに空回りするけど
拓也
それ、褒められてる?
美咲
さあ、どうかしらね
拓也心の声
……空回りしても、隣で一緒に走ってくれるんだよな、美咲は
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。明日、最終日だね
美咲
うん。ラストスパート、頑張りましょう
売り切れ間近の看板を片付けながら、二人は明日の準備に取り掛かった。
今日のポイントおさらい
- 定量発注方式の最適発注量=発注費用と在庫維持費用の総額が最小になる量
- 発注回数が多いほど、1回あたりの発注量は少なくなり、保管スペースは狭くて済む
- 定期発注方式は、決まった時期(サイクル)に発注する方式
- 定量発注方式は、需要予測ではなく在庫量を基準に発注のタイミングを判断する
- 定量発注方式と定期発注方式は、「量で決めるか、時期で決めるか」で区別すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和5年度 問24(ストラテジ系/企業活動)の解説です。