登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
システム開発プロジェクトを終結する時に、プロジェクト統合マネジメントで実施する活動として、最も適切なものはどれか。
- ア工程の進捗の予定と実績の差異を分析する。
- イ作成した全ての成果物の一覧を確認する。
- ウ総費用の予算と実績の差異を分析する。
- エ知識や教訓を組織の資産として登録する。
第1幕:学園祭最終日、撤収作業
学園祭最終日の夕方、模擬店の撤収作業が終わり、サークルのメンバーが片付けをしながら、今年の反省会を始めていた。
美咲
3日間、なんだかんだ黒字で終われそうね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ。ちょうど"締めくくり"の話だから
美咲
片付けの最中まで繋げるの、もう病気ね
拓也
今回は本当に、この反省会そのものが答えなんだって
第2幕:予算と実績の差異を分析するんでしょ
空き教室の隅で、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『総費用の予算と実績の差異を分析する』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、終わったんだから、まずは予算どおりだったか、実際いくらかかったかを確認するものだと思ったのよね
拓也
発想はわかるんだけど、実は"予算と実績を比べる"のは、プロジェクトが終わってからじゃなくて、進行中にずっとやってることなんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。進捗の差異分析も、費用の差異分析も、"実行中"に繰り返しチェックすること。今日の問題が聞いてるのは、"終結"のとき、つまり全部終わったあとに特有の活動なんだ
第3幕:来年のためのノート
拓也は、美咲が持っていた反省会用のノートを指さした。
拓也
そのノート、何を書くつもりだったの?
美咲
今年やってよかったこととか、失敗したこととか。来年の後輩が同じ模擬店やるときのために、残しておこうと思って
拓也
それ、まさに今日の問題の答えそのものだよ。プロジェクトが終わったときに、"得られた知識や教訓を、組織の資産として登録する"。これが終結段階に特有の活動なんだ
美咲
あ……! "今回だけで終わらせない"ための記録ってことね
拓也
そのとおり。正解はエ。進捗管理や費用管理は、プロジェクトの"最中"にやること。でも"次に活かす"ための記録は、"終わったあと"にしかできない。美咲がやろうとしてたこと、まさにそれなんだ
美咲
なるほどね……。私、無意識にちゃんとしたことやってたのね
第4幕:……あ、待って、それ消して
美咲がノートに、今年の出来事を書き出し始めた。
美咲
えーと、看板の字が壊滅的だったこと、計算に夢中でたこ焼き焦がしたこと、最適発注量にこだわりすぎて売り切れかけたこと……
拓也
……あ、待って、それ消して
美咲
え、これ全部、来年のための貴重な教訓じゃない
拓也
俺個人の黒歴史集になってるんだけど
美咲
事実を書いてるだけよ。むしろ"理論に詳しい人ほど、たまに実践でやらかす"って、来年の後輩への良い教訓になると思うけど
拓也
その理屈、地味に俺へのダメージが大きいんだけど……
美咲
まあまあ、いいから。これも立派な"知識の資産化"でしょ?
拓也
……否定できないのが、余計につらい
結局、拓也のやらかし集は、名前を伏せたまま「反省点」の欄にまとめて記録されることになった。
第5幕:残りの選択肢を片付ける
ノートを書き終え、拓也が続きを説明する。
美咲
……気を取り直して。残りのアとイも教えて
拓也
アの『工程の進捗の予定と実績の差異を分析する』は、プロジェクト実行中の監視・制御活動。予定どおり進んでるか、遅れてないかを、ずっとチェックし続けることなんだ
美咲
イは?
拓也
イの『作成した全ての成果物の一覧を確認する』も、実行中や終結の前段階で行う確認作業。今日の問題が聞いてる"終結段階に特有の活動"とは、また少し違うタイミングのことなんだ
美咲
進捗と費用の差異分析は実行中にずっとやること、成果物の確認も実行段階の作業、知識や教訓の資産化だけが終結段階特有。……"終わったからこそできること"があるのね
拓也
完璧な整理。プロジェクトは、終わった瞬間が一番大事な場面でもあるんだ。ちゃんと締めくくることで、次に繋がる
問題文(再掲)
システム開発プロジェクトを終結する時に、プロジェクト統合マネジメントで実施する活動として、最も適切なものはどれか。
- ア工程の進捗の予定と実績の差異を分析する。
- イ作成した全ての成果物の一覧を確認する。
- ウ総費用の予算と実績の差異を分析する。
- エ知識や教訓を組織の資産として登録する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 工程の進捗の予定と実績の差異を分析する(実行中の活動) | 不正解 |
| イ | 作成した全ての成果物の一覧を確認する(実行段階の活動) | 不正解 |
| ウ | 総費用の予算と実績の差異を分析する(実行中の活動) | 不正解 |
| エ | 知識や教訓を組織の資産として登録する | 正解 |
答えエ 知識や教訓を組織の資産として登録する
覚え方のコツ
実行中はずっと監視、終結でしかできないのは"次に活かす記録"。
- プロジェクト終結段階に特有の活動=知識や教訓を組織の資産として登録すること
- 進捗の差異分析、費用の差異分析、成果物の確認は、いずれもプロジェクト実行中に行う監視・制御活動
- 終結段階は、"次のプロジェクトに活かす"ための振り返りが最も重要な役割になる
エピローグ
片付けを終え、二人は誰もいなくなった構内をゆっくり歩いていた。
美咲
この3日間、本当にあっという間だったわね
拓也
うん。……最初は手伝うだけのつもりだったけど、思ったよりずっと楽しかった
美咲
私も。……あんたがいてくれて、正直すごく助かった
拓也
それ、素直に言われると調子狂うんだけど
美咲
べ、別に、いつもは言わないから、貴重だと思いなさいよ
拓也心の声
……この3日間のこと、俺もちゃんと"資産"として、覚えておこう
美咲
なに一人で頷いてるのよ
拓也
いや、来年もまた手伝いたいなって思って
美咲
……そのときは、また誘うから
夜の学園祭跡地、ライトアップの片付けが進む中、二人は静かな構内を後にした。
今日のポイントおさらい
- プロジェクト終結段階に特有の活動=知識や教訓を組織の資産として登録すること
- 工程の進捗の差異分析、総費用の差異分析は、プロジェクト実行中に行う監視・制御活動
- 作成した成果物の一覧確認も、実行段階で行われる活動
- 終結段階は、"次に活かす"ための振り返りが特に重要になるタイミング
- プロジェクトは、終わった瞬間の振り返りが、次の成功につながる
この記事はITパスポート試験 令和6年度 問37(マネジメント系/プロジェクトマネジメント)の解説です。