登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
有料のメールサービスを提供している企業において、メールサービスに関する開発・設備投資の費用対効果の効率性を対象にしてシステム監査を実施するとき、システム監査人が所属している組織として、最も適切なものはどれか。
- ア社長直轄の品質保証部門
- イメールサービスに必要な機器の調達を行う運用部門
- ウメールサービスの機能の選定や費用対効果の評価を行う企画部門
- エメールシステムの開発部門
第1幕:順番待ちのATMコーナーで
12月、二人は銀行のATMコーナーで順番を待っていた。壁には「システム監査のご案内」というポスターが貼られている。
美咲
銀行にも、こういう監査ってあるのね
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
ポスターからも繋げるの、もう反射ね
拓也
今回は本当に、そのポスターの内容がそのまま答えに繋がるんだって
第2幕:評価してる部門がやればいいんじゃない?
順番が来るまでの間、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『企画部門』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、費用対効果を評価するのが企画部門の仕事なんでしょ? だったら、そのまま監査もその部門がやればいいんじゃないかって
拓也
発想はわかるんだけど、実は"評価する専門知識がある"のと"監査する資格がある"のは、別の話なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。企画部門は、今回の監査対象そのものに関わってる部門。自分たちがやったことを、自分たちで監査したら、都合の悪い部分を見逃しちゃうかもしれないよね
第3幕:自分で自分を採点しない
拓也は、ATMコーナーの隅にある案内板を指さした。
拓也
もし、このATMの故障を、故障を起こした担当部署自身が検査したらどうなると思う?
美咲
うーん、自分たちの落ち度だから、都合悪いところは隠したくなるかもしれないわね
拓也
そのとおり。だからシステム監査人は、監査される部門と利害関係のない、独立した立場にいる必要がある。今回なら、開発部門でも運用部門でも企画部門でもなく、社長直轄の品質保証部門みたいな、独立性が保たれた組織に所属してる必要があるんだ
美咲
あ……! 監査する側とされる側が同じだと、公正な評価にならないってことね
拓也
そのとおり。正解はア。システム監査人には"独立性"が求められる。テストの答案を自分で採点しないのと同じで、利害関係のない第三者がチェックするから、監査に意味があるんだ
美咲
なるほどね……。監査って、誰がやるかもすごく大事なのね
第4幕:……お客様、本日は
説明を終えたところで、拓也が急に居住まいを正した。
拓也
……独立性、大事だからさ。俺も今日は、ちょっと距離を置いて接することにする
美咲
は? 何の話?
拓也
……お客様、本日はどのようなご用件でしょうか
美咲
……気持ち悪いからやめて
拓也
せっかく"独立性"を意識してみたのに
美咲
意味も方向性も間違ってるから。なんでいきなり接客態度になるのよ
拓也
ノリでやってみたくなっただけです、すみません
美咲
もういいから、普通に喋って。調子狂うから
拓也
畏まりました……じゃなくて、了解
第5幕:残りの選択肢を片付ける
順番が回ってきて手続きを終え、二人はベンチに座り直す。
美咲
……気を取り直して。残りのイとエも教えて
拓也
イの『運用部門』は、メールサービスに必要な機器の調達を行う部門。今回の監査対象である"開発・設備投資"に直接関わってるから、独立性がなくて不適切なんだ
美咲
エは?
拓也
エの『開発部門』も同じ理由。メールシステムの開発そのものを行ってる部門だから、自分たちの仕事を自分たちで監査することになっちゃうんだ
美咲
企画部門は評価対象そのもの、運用部門は調達に関わってる、開発部門は開発そのもの。どれも独立性がないのね。社長直轄の品質保証部門だけが、利害関係のない立場ってことね
拓也
完璧な整理。システム監査は、"誰が"やるかで信頼性がまったく変わってくるんだ
問題文(再掲)
有料のメールサービスを提供している企業において、メールサービスに関する開発・設備投資の費用対効果の効率性を対象にしてシステム監査を実施するとき、システム監査人が所属している組織として、最も適切なものはどれか。
- ア社長直轄の品質保証部門
- イメールサービスに必要な機器の調達を行う運用部門
- ウメールサービスの機能の選定や費用対効果の評価を行う企画部門
- エメールシステムの開発部門
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 社長直轄の品質保証部門(独立性がある) | 正解 |
| イ | 運用部門(機器調達に関わり独立性なし) | 不正解 |
| ウ | 企画部門(評価対象そのもの) | 不正解 |
| エ | 開発部門(開発そのものに関わり独立性なし) | 不正解 |
答えア 社長直轄の品質保証部門
覚え方のコツ
自分の答案は、自分で採点しない。
- システム監査人には、監査対象の部門と利害関係のない独立性が求められる
- 監査対象の業務(開発・運用・企画)に関わっている部門は、監査人の所属先として不適切
- 独立性を保つため、システム監査人は経営トップ直轄の組織に所属することが望ましい
エピローグ
用事を終え、二人は銀行を出た。12月の街は、すっかりイルミネーションで彩られている。
美咲
今日は、あんたの謎の接客態度が一番の見どころだったわね
拓也
その話、まだ続く?
美咲
続けるわよ。あんな畏まった喋り方、初めて聞いたし
拓也
もう二度とやりません……
美咲
別に、たまにならいいけど。ノリでやってくるところ、嫌いじゃないし
拓也心の声
……独立性なんて、俺には無縁そうだけどな。美咲に関しては
美咲
なに一人で笑ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。次はどこ行く?
美咲
イルミネーション、ちょっと見ていかない?
拓也
うん、いいね
光に彩られた街を、二人はゆっくりと歩き始めた。
今日のポイントおさらい
- システム監査人には、監査対象の部門と利害関係のない独立性が求められる
- 監査対象の業務(開発・運用・企画)に関わっている部門は、監査人の所属先として不適切
- 独立性を保つため、システム監査人は経営トップ直轄の組織に所属することが望ましい
- 「評価する専門知識がある」ことと「監査する資格がある」ことは別の話
- 自分の仕事を自分で監査しないという原則が、システム監査の信頼性を支えている
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問55(マネジメント系/システム監査)の解説です。