登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
CPU のクロックに関する説明のうち、適切なものはどれか。
- アUSB 接続された周辺機器と CPU の間のデータ転送速度は、クロックの周波数によって決まる。
- イクロックの間隔が短いほど命令実行に時間が掛かる。
- ウクロックは、次に実行すべき命令の格納位置を記録する。
- エクロックは、命令実行のタイミングを調整する。
第1幕:分解中のデスクトップPC
2月、試験まで残り1か月を切った。拓也の部屋で、二人は久しぶりに顔を合わせていた。机の上には、分解中のデスクトップPCが広げられている。
美咲
また分解してるの? 懲りないわね
拓也
新しいCPU届いたから、換装しようと思って。……あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
CPUからも繋げるの、もう職業病ね
拓也
今回は本当に、この基板そのものが手がかりなんだって
第2幕:間隔が短いほど時間かかるんでしょ
作業台の隣に座り、拓也がノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これイでしょ。『間隔が短いほど、命令実行に時間が掛かる』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、間隔が短いと、せかされてる感じで、逆に時間かかりそうなイメージだったのよね
拓也
発想は面白いんだけど、実は"間隔が短い"のは、"せかされる"んじゃなくて"テンポが速い"ってことなんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。クロックの間隔が短いほど、1秒間に刻めるタイミングの回数が増える。つまり、命令をより速く実行できるようになるんだ。間隔が短い=遅くなる、じゃなくて、間隔が短い=速くなる、が正しいんだよ
第3幕:指揮者のタクト
拓也は、分解中のCPUを指さした。
拓也
オーケストラの指揮者、想像してみて。指揮棒を振るテンポに合わせて、みんなが音を出すタイミングを揃えるよね
美咲
うん、指揮者がいないと、バラバラになっちゃいそうね
拓也
それが、まさにクロックの役割。一定のリズムを刻んで、CPUの中の色んな部品が、そのタイミングに合わせて動くように調整してるんだ
美咲
あ……! 指揮のテンポが速いほど、演奏全体も速く進むってことね
拓也
そのとおり。正解はエ。クロックは、命令実行のタイミングを調整する役割。このテンポが速い(クロック周波数が高い)ほど、CPUはたくさんの命令を短時間でこなせるんだ
美咲
なるほどね……。パソコンの中にも、指揮者がいたのね
第4幕:……あ、今の危なかった
説明をしながら、拓也がふとCPUを素手で持ち上げようとした。
美咲
ちょっと、それ危ないって
拓也
え?
拓也
……あ、今の危なかった
静電気防止のリストバンドをつけ忘れたまま、基板に触れかけていたことに、拓也が今更気づく。
美咲
上の空すぎでしょ。静電気でパーツ壊れたら、目も当てられないじゃない
拓也
面目ない……。説明に集中しすぎてた
美咲
集中するのはいいけど、まず手元、ちゃんと見なさいよね
拓也
以後、気をつけます
美咲
私が気づかなかったら、今頃どうなってたことか
第5幕:残りの選択肢を片付ける
リストバンドをつけ直し、拓也が改めて作業を再開する。
美咲
……気を取り直して。残りのアとウも教えて
拓也
アの『USB接続機器とのデータ転送速度は、クロックの周波数で決まる』は、不適切。USBの転送速度は、USB自体の規格(USB2.0とか3.0とか)で決まるもので、CPUのクロックとは別の話なんだ
美咲
ウは?
拓也
ウの『次に実行すべき命令の格納位置を記録する』は、不適切。それは"プログラムカウンタ"っていう別の仕組みの役割。クロックは、あくまでタイミングを調整するだけなんだ
美咲
クロックはタイミング調整、USB転送速度は規格で決まる、命令の位置記録はプログラムカウンタの役割。……名前は聞いたことあっても、役割はそれぞれ全然違うのね
拓也
完璧な整理。"何を"担当してるパーツなのかを意識すると、こういう問題も迷わなくなるよ
問題文(再掲)
CPU のクロックに関する説明のうち、適切なものはどれか。
- アUSB 接続された周辺機器と CPU の間のデータ転送速度は、クロックの周波数によって決まる。
- イクロックの間隔が短いほど命令実行に時間が掛かる。
- ウクロックは、次に実行すべき命令の格納位置を記録する。
- エクロックは、命令実行のタイミングを調整する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | USB転送速度はクロック周波数で決まる | 不正解 |
| イ | クロックの間隔が短いほど時間が掛かる | 不正解 |
| ウ | 次に実行すべき命令の格納位置を記録する | 不正解 |
| エ | 命令実行のタイミングを調整する | 正解 |
答えエ クロックは、命令実行のタイミングを調整する
覚え方のコツ
指揮者のテンポが速いほど、演奏も速く進む。
- クロック=命令実行のタイミングを調整する役割。間隔が短いほど、処理は速くなる
- USBのデータ転送速度は、USB自体の規格で決まる。クロック周波数とは別
- 次に実行すべき命令の格納位置を記録するのは、プログラムカウンタの役割
エピローグ
作業を終え、二人は組み立て直したPCの電源を入れた。無事に起動し、ファンの音が静かに響く。
美咲
ちゃんと動いたわね
拓也
うん、よかった。……今日は、危ないところ助けてくれてありがとう
美咲
別に、大したことじゃないけど
拓也
本番まで、あと少しだね
美咲
うん。……今度こそ、ちゃんと受かりたい
拓也
大丈夫。ここまでのペース見てたら、いける
拓也心の声
……このパソコンみたいに、美咲もちゃんと"タイミング"を合わせて、着実に進んでる
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……最後まで、一緒に頑張ろう
美咲
うん
窓の外はもう暗くなっていた。二人は、静かに動き続けるPCのファンの音を聞きながら、しばらくそこに座っていた。
今日のポイントおさらい
- クロック=命令実行のタイミングを調整する役割
- クロックの間隔が短いほど、1秒間に刻めるタイミングの回数が増え、処理は速くなる
- USB接続機器とのデータ転送速度は、USB自体の規格によって決まる
- 次に実行すべき命令の格納位置を記録するのは、プログラムカウンタの役割
- CPU内の各パーツは、「何を担当しているか」で役割が明確に分かれている
この記事はITパスポート試験 令和3年度 問90(テクノロジ系/コンピュータ構成要素)の解説です。