登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
NDA に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア企業などにおいて、情報システムへの脅威の監視や分析を行う専門組織
- イ契約担当者がもつ営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約
- ウ提供するサービス内容に関して、サービスの提供者と利用者が合意した、客観的な品質基準の取決め
- エプロジェクトにおいて実施する作業を細分化し、階層構造で整理したもの
第1幕:インターンシップ資料の中で
3月、就活準備を進める美咲が、図書館でインターンシップの案内資料を読んでいた。「NDAへの同意が必要です」という一文に目が留まる。
美咲
これ、NDAって書いてあるけど、何の略? 正直、意味わかんないんだけど
拓也
NDAは、Non-Disclosure Agreement。日本語だと"秘密保持契約"のことだよ
美咲
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話?
拓也
うん。今回は本当に、その"NDA"がそのまま答えなんだって
美咲
資料からも繋げるの、もう職業病ね
第2幕:品質基準の取り決めのことでしょ
閲覧席で、拓也が小声でノートを広げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これウでしょ。『品質基準の取決め』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"契約"って言われたら、前に習ったSLAみたいな、条件を決める話かなって
拓也
SLAは、Service Level Agreement、"サービスレベル合意書"のことだったね。前にコンビニで話したSLMの回で少し出てきた言葉だ
美咲
あ、それは覚えてる
拓也
発想はわかるんだけど、実はウの説明は、まさにSLAのこと。今日の問題が聞いてるNDAは、また別の種類の契約なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。SLAは"サービスの品質基準"を決める契約。NDAは、"秘密情報を、お互いに外に漏らさないと約束する"契約なんだ
第3幕:古文書を見せてもらう条件
拓也は、資料の隣にあった古い文献のコーナーを指さした。
拓也
あそこにある貴重な古文書、研究者が閲覧するときって、そのまま自由に見られると思う?
美咲
うーん、なんか許可とか必要そうね
拓也
そのとおり。"見た内容を無断で公開しない"っていう誓約書を交わしてから、初めて見せてもらえる。これが、まさにNDAの考え方なんだ
美咲
あ……! インターンシップのNDAも、"会社の中で見聞きした秘密を、外に漏らしません"って約束するものってことね
拓也
そのとおり。正解はイ。NDAは、営業秘密などを特定して、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約。日本語では"秘密保持契約"とも呼ばれるんだ
美咲
なるほどね……。インターン先の情報、うっかり漏らさないように気をつけないとね
第4幕:……あ、これは言っちゃダメなやつ
説明を聞きながら、拓也がふと思い出し笑いをした。
拓也
そういえば、美咲の高校時代の、あの――
美咲
……ちょっと。それ以上言ったら承知しないから
拓也
……あ、これは言っちゃダメなやつ
美咲
今の、まさに"秘密保持契約"の話をしといて、自分から破ろうとしてたじゃない
拓也
面目ない……。つい、口が滑りかけた
美咲
私との間にも、ちゃんとNDA結んでるつもりでいなさいよね
拓也
はい、肝に銘じます
美咲
……で、結局何を言おうとしたのよ
拓也
それはもう、墓場まで持っていきます
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気を取り直して、拓也がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとエも教えて
拓也
アの『情報システムへの脅威の監視や分析を行う専門組織』は、CSIRT(シーサート)と呼ばれる組織の説明。セキュリティインシデントに対応する専門チームのことなんだ
美咲
エは?
拓也
エの『作業を細分化し、階層構造で整理したもの』は、以前も出てきたWBS。プロジェクトの作業を分解して整理する図のことだったね
美咲
NDAは秘密保持契約、CSIRTは監視の専門組織、SLAは品質基準の取決め、WBSは作業の階層整理。……全部アルファベットだけど、意味は全然バラバラなのね
拓也
完璧な整理。この手のアルファベット3〜4文字の用語は、"何のための契約・組織・図か"を意識すると、混同しなくなるよ
問題文(再掲)
NDA に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア企業などにおいて、情報システムへの脅威の監視や分析を行う専門組織
- イ契約担当者がもつ営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約
- ウ提供するサービス内容に関して、サービスの提供者と利用者が合意した、客観的な品質基準の取決め
- エプロジェクトにおいて実施する作業を細分化し、階層構造で整理したもの
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 情報システムへの脅威監視組織(CSIRT) | 不正解 |
| イ | 秘密情報を管理する意思を合意する契約(NDA) | 正解 |
| ウ | サービス品質基準の取決め(SLA) | 不正解 |
| エ | 作業を階層構造で整理したもの(WBS) | 不正解 |
答えイ 契約担当者がもつ営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約
覚え方のコツ
古文書を見せてもらう前の誓約書、それがNDA。
- NDA(秘密保持契約)=営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約
- SLAは品質基準の取決め、CSIRTは脅威監視の専門組織、WBSは作業の階層整理。それぞれ別物
- 「秘密を守る契約」と「品質を約束する契約」は、混同しやすいが目的が異なる
エピローグ
図書館を出ると、3月の風はまだ少し冷たかった。
美咲
今日は、あんたの墓場行きの秘密が気になって仕方ないんだけど
拓也
それは、NDA案件なので
美咲
都合よく使うのやめなさいよね
拓也
善処します
美咲
……まあ、いいけど。私にもいくつか、言えない過去くらいあるし
拓也心の声
……美咲の秘密、ちょっとだけ気になるけど、無理には聞かないでおこう
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……お互い、墓場まで持っていく話があってもいいよね
美咲
……そうね
夕暮れの図書館前を、二人はゆっくりと歩いて後にした。
今日のポイントおさらい
- NDA(秘密保持契約)=営業秘密などを特定し、相手の秘密情報を管理する意思を合意する契約
- SLAは、サービスの品質基準を客観的に取り決める契約
- CSIRTは、情報システムへの脅威の監視・分析を行う専門組織
- WBSは、プロジェクトの作業を細分化して階層構造で整理したもの
- アルファベットの略語は、「何のための契約・組織・図か」を意識すると混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問5(ストラテジ系/法務)の解説です。