登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
BYODの事例として、適切なものはどれか。
- ア会社から貸与されたスマートフォンを業務中に私的に使用する。
- イ会社から貸与されたスマートフォンを業務で使用する。
- ウ会社が利用を許可した私物のスマートフォンを業務で使用する。
- エ私物のスマートフォンを業務中に私的に使用する。
第1幕:模試の結果
3月、二人はいつものファミレスにいた。美咲が、少し緊張した顔で一枚の紙を取り出す。
美咲
……模試の結果、返ってきたの。見る?
拓也
うん、見せて
紙を受け取った拓也が、点数の欄に目を落とす。前回よりも大きく伸びた数字が、そこにはあった。
拓也
……すごいじゃん。全分野、余裕で基準点超えてる
美咲
でしょ! 私、伸びてるでしょ!
拓也
うん。……本当に、伸びたんだな
第2幕:貸与スマホを業務で使うことでしょ
喜びも落ち着いた頃、美咲が就活情報誌の記事に目を留める。「BYODを導入する企業が増加」という見出しだった。
美咲
じゃあ、今日はこの問題ね。これイでしょ。『会社から貸与されたスマホを業務で使う』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、"スマホを仕事で使う"って言われたら、それが普通のイメージだったのよね
拓也
発想はわかるんだけど、実は"会社のスマホを仕事で使う"のは、当たり前のことだから、わざわざBYODって呼ぶ必要がないんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。BYODは、Bring Your Own Deviceの略。"自分の持ち物を持ち込む"っていう発想の転換がポイントなんだ
第3幕:会社の持ち物じゃなくて、自分の持ち物
拓也は、情報誌の記事を指さした。
拓也
これまでは、会社が用意した機器を使うのが当たり前だったよね。でもBYODは、"私物のスマホを、会社が許可したうえで、業務に使わせてもらう"仕組みなんだ
美咲
あ……! 会社が用意するんじゃなくて、自分の持ち物を使わせてもらう、っていう逆の発想なのね
拓也
そのとおり。正解はウ。会社が利用を許可した私物のスマートフォンを、業務で使用する。これがBYODの事例なんだ。使い慣れた自分の端末を仕事にも使えるから、効率が上がるっていうメリットがある一方で、セキュリティ管理が難しくなるっていう課題もあるんだよ
美咲
なるほどね……。就職したら、こういう制度にも出会うのかもね
第4幕:本当に、伸びたんだな
説明を終えた拓也は、さっきの模試の結果をもう一度眺めていた。
美咲
ねえ、聞いてる?
拓也
あ、ごめん。……本当に、よく頑張ったなと思って
美咲
なによ、急にしみじみして
拓也
いや……。最初の頃、全然わからないって半泣きだったのに、ここまで来たんだなって
美咲
あんたが根気よく教えてくれたからでしょ
拓也
……うん
拓也は笑ってそう答えたが、その笑顔の端に、ほんの少しだけ、寂しさのようなものが滲んでいた。美咲はそれに気づかないまま、結果を鞄にしまい直す。
拓也心の声
……このペースなら、本当に、もうすぐ受かる。それは、嬉しいことのはずなんだけどな
美咲
なに黙ってるのよ
拓也
いや、なんでもない。……次の模試も、この調子で頑張ろう
美咲
うん! 次はもっと伸ばす
第5幕:残りの選択肢を片付ける
気を取り直して、拓也がノートに向き直る。
美咲
……気を取り直して。残りのアとエも教えて
拓也
アの『貸与されたスマホを業務中に私的に使用する』は、会社の持ち物を私用で使ってるだけだから、BYODとは関係ないんだ
美咲
エは?
拓也
エの『私物のスマホを業務中に私的に使用する』も、そもそも業務に関係なく私用してるだけ。BYODの"業務で使う"という条件を満たしてないんだ
美咲
私物端末を許可のもとで業務利用するのがBYOD、貸与端末の私的利用も、貸与端末の業務利用も、私物端末の私的利用も、全部条件を満たしてないのね
拓也
完璧な整理。"誰の持ち物か"と"何に使ってるか"、この2つの組み合わせを意識すると、BYODの事例も迷わなくなるよ
問題文(再掲)
BYODの事例として、適切なものはどれか。
- ア会社から貸与されたスマートフォンを業務中に私的に使用する。
- イ会社から貸与されたスマートフォンを業務で使用する。
- ウ会社が利用を許可した私物のスマートフォンを業務で使用する。
- エ私物のスマートフォンを業務中に私的に使用する。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 貸与端末を私的に使用する | 不正解 |
| イ | 貸与端末を業務で使用する(通常利用) | 不正解 |
| ウ | 私物端末を許可のもとで業務利用する(BYOD) | 正解 |
| エ | 私物端末を私的に使用する | 不正解 |
答えウ 会社が利用を許可した私物のスマートフォンを業務で使用する
覚え方のコツ
会社の持ち物じゃなくて、自分の持ち物。それがBYODの発想。
- BYOD(Bring Your Own Device)=会社が許可した私物の端末を、業務で使用すること
- 会社から貸与された端末を業務で使うのは、BYODとは呼ばない当たり前の利用
- 「誰の持ち物か」と「何に使っているか」の組み合わせで事例を整理すると混同しにくい
エピローグ
ドリンクバーのグラスを片付けながら、拓也は静かに窓の外を見ていた。
美咲
今日は、なんだかんだ幸先いい日だったわね
拓也
うん、本当に
美咲
あんたのおかげよ。ちゃんとお礼、言っておく
拓也
そんな、改まって言わなくていいのに
美咲
たまにはいいでしょ、こういうの
拓也心の声
……美咲がどんどん一人で歩いていけるようになってる。それが誇らしくて、少しだけ寂しい。……変な感情だな
美咲
なに黙ってるのよ、さっきから
拓也
いや、なんでもない。……この調子で、最後まで一緒に頑張ろう
美咲
うん、もちろん
窓の外では、3月の夜がゆっくりと更けていった。
今日のポイントおさらい
- BYOD(Bring Your Own Device)=会社が許可した私物の端末を、業務で使用すること
- 会社から貸与された端末を業務で使うのは、BYODとは呼ばない当たり前の利用
- 貸与端末・私物端末を私的に使用するケースは、いずれもBYODの事例に当てはまらない
- BYODは、使い慣れた端末で効率が上がる一方、セキュリティ管理の課題もある
- 「誰の持ち物か」と「何に使っているか」を組み合わせて整理すると、事例を混同しにくい
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問17(ストラテジ系/システム戦略)の解説です。