登場人物
美咲(みさき)
女子大生。就活のエントリーシートの資格欄が真っ白なことに気づき、慌ててITパスポートの勉強を開始。ITは完全に素人。高校時代は可愛くて人気者だったので、ちょっとプライドが高い。素直じゃない。
拓也(たくや)
美咲の高校時代の同級生。東京大学工学部。子どもの頃からパソコンばかりいじってきた生粋のオタク。実は美咲のことが好きだが、10年近く言い出せていない。教えるのは得意だが、口が悪いのが玉に瑕。
今日の問題
今日の問題
システム開発プロジェクトの品質マネジメントにおいて、品質上の問題と原因との関連付けを行って根本原因を追究する方法の説明として、適切なものはどれか。
- ア管理限界を設定し、上限と下限を逸脱する事象から根本原因を推定する。
- イ原因の候補リストから原因に該当しないものを削除し、残った項目から根本原因を絞り込む。
- ウ候補となる原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する。
- エ複数の原因を分類し、件数が多かった原因の順に対処すべき根本原因の優先度を決めていく。
第1幕:試験前夜、それぞれの部屋で
3月某日の夜。明日はいよいよ2回目の受験日。美咲は自室で、焼き魚の夕食を済ませながら最後の見直しをしていた。スマホが鳴る。拓也からのLINE通話だった。
美咲
もしもし。……なに、今日に限って電話なんて
拓也
最後だから、直接声で確認しとこうと思って。ノート、開いてる?
美咲
開いてるわよ。ちょうど焼き魚食べながら見てたところ
拓也
あ、それ、今日の問題にちょうどいい話だ
美咲
魚とプロジェクト管理、まさか繋がるの? この期に及んで
拓也
今回は本当に、その魚がそのままヒントなんだって
第2幕:件数が多い原因からでしょ
美咲は皿の上の焼き魚を箸でつつきながら、ノートの問題文を読み上げる。
美咲
じゃあ答えるわね。これエでしょ。『件数が多かった原因の順に優先度を決める』
拓也
お、なんでそう思った?
美咲
だって、原因を追いかけるなら、まず数が多いやつから潰していくのが効率的かなって
拓也
発想はわかるんだけど、実はエの説明は"パレート図"を使った優先順位付けの考え方。今日聞かれてるのは、"原因と結果の関連付け"を整理するための、また別の手法なんだ
美咲
え、違うの?
拓也
うん。パレート図は"どれから対処すべきか"を決めるための図。今回の問題が求めてるのは、"何が根本原因か"を体系的に洗い出すための図なんだよ
第3幕:魚の骨みたいだ
拓也は、電話の向こうで美咲の皿の音を聞きながら言った。
拓也
ちょうどいいや。その焼き魚、骨ってどうなってる?
美咲
え? 真ん中に太い骨があって、そこから細い骨がいっぱい枝分かれしてるけど
拓也
そのとおり。それとまったく同じ形で原因を整理するのが、今日の問題の答え。真ん中の背骨に"結果"を置いて、そこから太い骨で"大きな原因のカテゴリ"、さらに細い骨で"具体的な原因"を枝分かれさせていくんだ
美咲
あ……! この骨の形、まさに問題文の『魚の骨の形で整理』ってやつじゃない
拓也
そのとおり。正解はウ。候補となる原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する。これは"特性要因図"って呼ばれる図で、品質管理の現場でよく使われるんだ
美咲
なるほどね……。今、目の前の魚がまさにその図だったなんて
第4幕:それぞれの静けさ
説明を終えても、二人はすぐには電話を切らなかった。美咲は箸を置き、窓の外を見ていた。
美咲
……ねえ
拓也
ん?
美咲
明日、終わったらさ。……ううん、なんでもない
拓也
え、何
美咲
なんでもないったら。……早く寝なさいよ、あんたも
拓也
うん。……美咲も、ちゃんと寝ろよ
電話の向こうで、美咲が小さく笑う気配がした。拓也は、その続きを聞きたい気持ちを、静かに飲み込んだ。
拓也心の声
……"明日、終わったら"の続き、気になるけど。今、聞くことじゃない気がする
第5幕:残りの選択肢を片付ける
沈黙が少し気まずくなったのか、美咲がノートに向き直る音がした。
美咲
……気を取り直して。残りのアとイも教えて
拓也
アの『管理限界の上限と下限を逸脱する事象から推定する』は、"管理図"の考え方。品質のばらつきを時系列で監視して、異常が起きたタイミングを見つけるための図なんだ
美咲
イは?
拓也
イの『候補リストから該当しないものを削除して絞り込む』は、いわば消去法的なやり方。特性要因図みたいに、原因同士の繋がりを体系立てて整理するのとは、アプローチがちょっと違うんだ
美咲
特性要因図は魚の骨で体系的に整理、管理図は時系列の異常検知、パレート図は優先順位付け、消去法は候補を削っていくやり方。……全部"原因を追う"って点は同じでも、やり方が全然違うのね
拓也
完璧な整理。品質管理の手法は、"何のために使うか"を意識すると迷わなくなるよ
問題文(再掲)
システム開発プロジェクトの品質マネジメントにおいて、品質上の問題と原因との関連付けを行って根本原因を追究する方法の説明として、適切なものはどれか。
- ア管理限界を設定し、上限と下限を逸脱する事象から根本原因を推定する。
- イ原因の候補リストから原因に該当しないものを削除し、残った項目から根本原因を絞り込む。
- ウ候補となる原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する。
- エ複数の原因を分類し、件数が多かった原因の順に対処すべき根本原因の優先度を決めていく。
まとめ:選択肢ごとの答え合わせ
| 選択肢 | 内容 | 正誤 |
|---|---|---|
| ア | 管理限界の逸脱から推定する(管理図) | 不正解 |
| イ | 候補を削除して絞り込む(消去法的アプローチ) | 不正解 |
| ウ | 魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する(特性要因図) | 正解 |
| エ | 件数が多い順に優先度を決める(パレート図) | 不正解 |
答えウ 候補となる原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する
覚え方のコツ
背骨に結果、太い骨に大分類、細い骨に具体的な原因。それが特性要因図。
- 特性要因図(フィッシュボーン図)=原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する図
- 管理図は時系列の異常検知、パレート図は件数による優先順位付け、それぞれ目的が異なる
- 「原因を追う」手法は複数あるので、"体系的に整理する"のか"絞り込む"のか"優先度をつける"のかで区別する
エピローグ
通話を切ったあと、美咲は皿を片付け、机に向き直った。ノートの最後のページには、これまでの見直しの跡がびっしり残っている。
拓也もまた、自分の部屋で静かに教科書を閉じた。
拓也心の声
……明日で、一区切りつくのか
窓の外を見ながら、拓也はさっきの美咲の「なんでもない」を、もう一度思い返していた。
拓也心の声
……聞かなかったこと、後悔するかもな。でも今は、それでいい
スマホの画面には、さっきの通話履歴だけが残っていた。時計の針は、日付が変わる少し前を指していた。
今日のポイントおさらい
- 特性要因図(フィッシュボーン図)=原因を魚の骨の形で整理し、根本原因を検討する図
- 管理図は、管理限界の上限・下限からの逸脱で異常を検知するための図
- パレート図は、件数の多い原因から優先的に対処するための図
- 消去法的な絞り込みは、特性要因図のような体系的な整理とはアプローチが異なる
- 品質管理の手法は、「何のために、どう原因を整理するか」で使い分ける
この記事はITパスポート試験 令和4年度 問48(マネジメント系/プロジェクトマネジメント)の解説です。